F1レギュレーション完全網羅版 – ルールを知ってF1を更に楽しもう
世界の4輪オープンホイールの頂点に君臨するF1では、国際自動車連盟(FIA)が発行する”レギュレーション”と呼ばれる規定によって様々なルールが定められている。F1を120%楽しむためには、レギュレーションの理解が欠かせない。
本ページでは膨大な規定を25のカテゴリに分類し、各カテゴリ毎に知っておくべきルールを2、3厳選し紹介する。詳しく知りたい場合は、詳細ページへのリンクを貼っておいたのでそちらを参照されたい。
2022年シーズンの変更点のみをまとめた「2021年 F1レギュレーションの主な変更点 ~これだけ抑えておけばOKな10個の競技&技術ルール」も合わせてご覧頂きたい。
- レギュレーション概要
- 決勝レースに関するルール
- フリー走行&予選に関するルール
- テストに関するルール
- ピットに関するルール
- ポイント制度と選手権に関するルール
- ペナルティーに関するルール
- ライセンスに関するルール
- オフィシャルに関するルール
- セーフティーカーに関するルール
- パルクフェルメに関するルール
- パワーユニット&ERSに関するルール
- タイヤ&ホイールに関するルール
- ボディーワークに関するルール
- ギアボックスに関するルール
- ブレーキに関するルール
- 電子制御に関するルール
- サスペンション&ステアリングに関するルール
- DRSに関するルール
- 燃料&給油に関するルール
- 安全装置に関するルール
- TVカメラ&タイム計測機器に関するルール
- スペアカーに関するルール
- クラッシュテストに関するルール
- 車検&計量に関するルール
- 識別に関するルール
レギュレーション概要
まず初めに、レギュレーションそのものについて簡単に説明する。F1世界選手権で用いられているルールはレース競技一般の規定を定めた「FIA国際モータースポーツ競技規則」とF1独自の規定からの2つから成る。
独自規定は競技に関する「F1スポーティング・レギュレーション」と、マシン製造等に関する「F1テクニカルレギュレーション」、そして2021年以降は財務ルールを定めた「F1ファイナンシャル・レギュレーション」を合わせた計3篇から成っており、メインの技術および競技規定だけでA4サイズにして約220ページ程もある。更にこれらを補足するための関連規定もある。
- 国際モータースポーツ競技規則
- FIAフォーミュラ1世界選手権規定
- 競技規定
- 技術規定
- 財務規定
- 関連規定
FIAによって管理・監修・規定されており、制定から施行までには数年に渡る準備期間が設けられるのが一般的。重要な変更に関しては全チームの同意が必要となるが、安全性に関わるものについては、FIAが独断で改定する事ができ、即時有効となる。
決勝レースに関するルール
© Pirelli & C. S.p.A.
- 決勝スタート30分前からレコノサンスラップ開始
- レコノサンスラップ走行ができなければピットレーンスタート
- ピットレーンスタートの場合は、全車両がピットレーン終点を通過した後にスタート
- フォーメーションラップでのスタート練習は禁止
レコノサンスラップやフォーメーションラップなど、よく耳にはするが意味はイマイチ分からないという方は多いのではないだろうか。以下の詳細ページでは、レーススタートまでの手順や決まり事、トラブルが発生した場合の対応方法などについてまとめた。ファンは要必読。
フリー走行&予選に関するルール
- 決勝出場には最低1度のフリー走行出走が必要
- 予選はノックダウン方式の3ラウンド制
- 予選中断の場合、中断した分セッションを延長
- 予選中にコース上で停止した場合、以降出走禁止
レース週末は3日制で、初日金曜は2回のフリー走行、土曜は最終プラクティスと予選、日曜に決勝レースが行われる。
スプリントフォーマットが適用される週末は、初日金曜にFP1と予選が、2日目土曜にFP2とスプリントが、そして日曜に決勝レースが行われる。
予選は1周のベストタイムを競う3ノックダウン制で、Q1、Q2、Q3の3ラウンドに渡って行われる。最終Q3に進出できるのは全体の半分となる10名だ。予選順位がレースのスタート順となる。
レギュレーション詳細ページでは、予選とフリー走行の定義、予選中にトラブルで停止した場合の措置などについて確認できる。
テストに関するルール
- 現行車両でのテスト走行は、デモストまたはプロモーション目的に限り制限付きで許可
インシーズンテストは、連続2日未満を計2回までインシーズンテストの2日間は若手ドライバーに割り当てる- 夏は連続14日間の工場閉鎖期間を設ける義務
テストにはF1が公式に行うものと、タイヤ開発のためにタイヤサプライヤーが行うもの、そしてチームが独自に行うものの3種類が存在する。2022年のF1では3日間のプレシーズンテストが2回に分けて開催される。
ピットに関するルール
- ピットストップポジションのグリップを改善してはならない
- 電動装置でマシンを持ち上げてはならない
- ピットレーンの速度制限は80km/h
- 不要な時にガレージエリアにいる事は禁止
ピットレーンの制限速度は80kmだが、レーンが狭いモナコGPなどは例外的に60km/hに制限される。上記の他には、ピットレーンの構成要素やピットレーン速度違反の場合の罰金算出方法などについて定義されている。
ポイント制度と選手権に関するルール
© Pirelli
F1はドライバー選手権とコンストラクター選手権の2つで構成されている。
決勝レースでポイントが与えられるのは上位10台で、優勝から順に25-18-15-12-10-8-6-4-2-1。また入賞者を対象に、ファステストラップを刻んだ者に追加で1点が付与される。
スプリントでのポイント配分は上位8名が対象で、優勝から順に8-7-6-5-4-3-2-1となる。
- 決勝走行距離は最低限305km以上(モナコを除く)
- 決勝は合計2時間以内であること
- 途中終了の場合は消化周回数によってポイント配分が変化
- タイトルはエンジン製造者ではなく車両の製造者に与えられる
- 参戦は最大13チームまで、各チーム毎に2台をエントリー
- チャンピオンシップ成立には最低8戦を実施
順位に応じたポイント配分、ポイントでタイトルが決しない場合の採点制度、レースが途中で中断しそのまま再開できない場合のポイントの扱い、2021年に試験導入されたスプリント予選など、詳細は以下のレギュレーションページを確認してほしい。
ペナルティーに関するルール
- タイムペナルティーは全部で4種類
- 10秒ペナルティの消化方法は2種類
- 2周以内にペナルティーを消化しないと黒旗検討
- ペナルティポイントが12点で1戦出場停止
- 年間5回の戒告処分で10グリッド降格
F1を楽しむために、ペナルティ関連のレギュレーションは詳細を読んでおくのがオススメ。ペナルティーについてきちんと理解できていないと、せっかくの面白さが半減してしまう。なお、ポジションを守るための方向転換禁止ルール(通称フェルスタッペン・ルール)は、3月23日に廃止された。
ライセンスに関するルール
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- ドライバーはFIAスーパーライセンスを所持していること
- ライセンス取得条件は3年間でライセンスポイントを40獲得すること
- 予選開始前であればいつでもドライバー変更OK
レギュレーションには、F1に出走するドライバーの条件を定めた規定群もある。マックス・フェルスタッペンが17歳という若さF1デビューを果たした際に、その是非を巡ってライセンス絡みのルールが改定された。
オフィシャルに関するルール
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- 各グランプリには7名の主要レースオフィシャルを配置
- 役割はスチュワードとマーシャルの監視・管理
- 7名の内2名はFIAスーパーライセンス保持者
レース進行の管理・監督を行っているオフィシャルに関するルール。オフィシャルはさらに3つの役割に分けられるが、その種類や役割、どういった人物がオフィシャルになれるのか等の詳細は以下から。
セーフティーカーに関するルール
© Daimler AG
- VSCはセーフティーカー(SC)は必要ないダブルイエロー級の場合に使用
- VSCの下では速度を”十分”に落とさなければならない
- SC先導でレースが開始され途中中断した場合、再開時はスタンディングスタート
セーフティーカー編と銘打ったが、バーチャルセーフティーカーや、雨天での決勝レーススタート、赤旗が降られた際のルールなども合わせてまとめた。知っておいて損はない規定ばかり。赤旗が出た時にドヤ顔したいあなたは必読である。
パルクフェルメに関するルール
- 予選開始後から決勝フォーメーションラップ開始の5時間前まではパルクフェルメ
- パルクフェルメ下でのマシンへの作業はほぼ禁止
- 決勝レース終了後は遅滞なくパルクフェルメに直行。ただし優勝ドライバーは例外
パルクフェルメというのもよく耳にする言葉であるが、イマイチその実態は良く分からないところがある。というのも、パルクフェルメは”場所”を指す言葉であると同時に、”状況”を指す言葉でもあるからだ。詳しくは以下の詳細編を確認されたい。
パワーユニット&ERSに関するルール
© Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.
F1パワーユニットはICE(内燃エンジン)、ターボチャージャー、MGU-K、MGU-H、ES(バッテリー)、CE(コントロール・エレクトロニクス)、エキゾーストシステムから構成される。
燃料はE10=ガソリンにエタノールを10%混ぜた燃料を使わなければならない。
- 年間上限基数が定められており、違反した場合はグリッド降格
- 内燃機関は1.6リットル、回転数は15,000rpmまで
- 開発は2022年に凍結
- 燃料流量は一時間あたり110キログラム
- ペナルティ逃れのためのPU一気交換はNG
詳細編では、PUの構成要素・構造についてのルール、MGU-KやMGU-Hなどのエネルギー量の規定などについて詳しくまとめた。
タイヤ&ホイールに関するルール
© Pirelli
- サイズは18インチ
- 供給数はドライ13セット、インターミディエイト4セット、ウェット3セット
- コンパウンド毎の供給数はハード2セット、ミディアム3セット、ソフト8セットだが、スプリント週末はハード2セット、ミディアム4セット、ソフト6セットとなる
- レース中に雨用タイヤを使用しない場合、最低2種類のドライタイヤを使用する事
モータースポーツレースにおけるタイヤの役割はとてつもなく大きいだけに、可能な限りチェックしておきたい。何しろタイヤを変えるだけでラップタイムが5秒も向上する程である。詳細編では、供給されるタイヤの種類や本数、タイヤ返却の決まり事、製造方法や取扱についてのルールをまとめた。
ボディーワークに関するルール
© Getty Images / Red Bull Content Pool
- タイヤを除くマシン全幅は2000mm以内
- マシンのどの部分も高さ950mmを超えてはダメ
- リアウィングを除き可動式の車体は使用不可
ボディーワーク編では、主にマシンサイズに関するルールや、可動式パーツについてのルールの他、「ドライバーは、ステアリング以外のマシンパーツを取り外す必要なく、コックピットに出入りすることができなければならない」などの安全性に関するルールを収録した。
ギアボックスに関するルール
- 年間4基まで。違反したら5グリッド降格ペナルティー
- 前進8速および後進1速のギアを備えること
- 自動ギアチェンジとCVTは使用不可
交換によってペナルティが下されるギアボックス。シーズン中に使用できるのは4基(23戦以下の場合)までで、違反した場合は5グリッド降格ペナルティとなる。
ブレーキに関するルール
- アンチロック・ブレーキシステムは禁止
- ブレーキを冷却するための液体の使用は禁止
- 制動システムは前輪用と後輪用の2つの油圧回路で構成すること
ABS(アンチロック・ブレーキング・システム)が禁止されているのは、ドーナツターンができなくなるのを防ぐためだろうか(笑)。ブレーキディスクのサイズや厚み、ピストンの数やパッド等に興味のある方は詳細編を参照されたい。
電子制御に関するルール
- PUやギヤボックス等は共通ECUで制御すること
- レーススタート信号を自動的に検出できる電子システムは禁止
- マシン・ピット間の無線ラジオは公開すること
- コックピットには、トラック信号情報ディスプレイを備えること
複雑化するF1マシンは電子制御なしには成立しない。マーシャルがコース上で黄旗や緑旗を振っているが、規定によればこれを見ずともドライバーはコックピット内のディスプレイでコース状況を確認できるのだそうだ。
サスペンション&ステアリングに関するルール
- 前後のサスペンションが相互接続される様なシステムは禁止
- アクティブサスペンションは禁止
- 電子制御式ステアリングは禁止
パワステはOKだけど、電動パワステは禁止。これは自動運転に類するシステムが導入されるのを防ぎ、ドライビングがドライバーの能力を反映するようにするための規定だろう。
DRSに関するルール
- 天候の悪い状況、またはDRSゾーンにイエローフラッグが出ている場合には、レースディレクターはDRSの使用禁止命令を出すことができる
- 決勝レースにおいて、レーススタート後及びセーフティカー離脱後の最初の2周回はDRSの使用が禁止される。ただしヴァーチャル・セーフティーカー後は直後に有効となる。
オーバーテイク装置であるDRSについての各種規定。数もそんなに多くなく、内容もとても分かりやすいのでぜひ詳細編に目を通しておいて欲しい。
燃料&給油に関するルール
- 決勝レースでは110kg以下の燃料が使用可能
- 燃料流量が110kg/hを超えてはならない
- 燃料は一般商用燃料と同じような化合物で構成されていること
給油システムが廃止された今、燃料と給油に関するルールは非常にシンプルだ。2017年、メルセデス等の一部チームがエンジンオイルを燃料とするトリックによってゲインを得たため、18年はこれが禁止された。知っておく必要性の高い規定は少ないが、見ておいても面白いと思う。
安全装置に関するルール
- コックピットとエンジンルームに消火装置を設置
- マシンは2つのリアビューミラーを設置
- 悪天候時の安全確保のためマシン後部に赤色ライトを装着
- ドライバーは耳没入型の加速度計を装着
ジュール・ビアンキの一件があったとは言え、今のF1の安全性の高さには本当に頭が下がる。それもこのように事細かにルールが定められているからにほかならない。F1が如何に安全性を大事にしているのかがよく分かるので、ぜひ詳細編をご覧いただきたい。興味深く読み進められると思う。
TVカメラ&タイム計測機器に関するルール
- マシンには最低4台のオンボードカメラを設置
- 公式タイムキーパーが供給する2つのタイム計測装置を装着
レース放送をよりエキサイティングなものにしてくれるオンボード映像。規定では最低4台のカメラがマシンに取り付けられているとのこと。そんなに色んな角度からの映像あったかな…。
スペアカーに関するルール
- チームが1イベントで使用できるマシンは2台まで
- スペアカーは禁止、シャーシが修理できないほど損傷した場合は例外
- 3回目のフリー走行終了後以降に別のマシンを使用する場合はピットレーンスタート
何かあった時の予備用のマシンに関するルール。スペアカーはTカーとも呼ばれたりする。詳細編は時間があれば目を通す程度で良いと思う。
クラッシュテストに関するルール
- テストに合格しない限りコース上には出られない
- 砲撃吸収のためステアリングコラムは変形するよう製造すること
- 転倒に備えてマシンには2つのロールを装着
クラッシュテストは主として安全性確保のために実施されるものであり、レギュレーションではマシン製造の方法やその材質、構造などについて詳しく規定されている。
車検&計量に関するルール
- ドライバーを含めた車の最低重量は
752kg795kg - 最小重量要違反の場合はタイムペナルティーか失格
- Q1とQ2に参加しているマシンは無作為に、Q3に参加しているマシンは全て計量
レース終了後にドライバーがピット内で体重計測している様子がしばしば映されるが、ドライバーだけではなくマシン自体の重量も測定されている。
ドライバーを含めた車の最低重量(燃料は含まない)は2019年に733kgから740kgへ、2020年には746kg、2021年には752kg、そして2022年には795kgへ増加された。
規定重量に満たない場合は、バラスト(重り)の設置によって人為的に重量を増やす。
識別に関するルール
- チーム名かエンブレムをフロントノーズに表示
- マシンにはドライバーのカーナンバーを記載
- チームの2台のマシンを区別するために、車載カメラは各々色分けすること
ファンあるいはオフィシャルが容易に各マシン及びドライバーを識別できるように設定されたレギュレーション。昨年はヘルメットの変更が禁止されていたが、今年から年間1イベントに限り変更が許可された。詳細編では、車やヘルメットの仕様の他カーナンバーについてのルールをまとめた。