バーレーン・インターナショナル・サーキットのグリッドに立つ2021年シーズンのF1レギュラードライバー達
Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

スーパーライセンス

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スーパーライセンスとは、国際自動車連盟(FIA)が管理する最上級グレードのラドライバーライセンス(免許証)で、FIA-F1世界選手権に参戦するための要件となっている。

スーパーライセンスに関する規定はFIA国際スポーツ規競技規則付則L項にて定められている。有効期限は取得年の終わりまでとなるため、毎年更新が必要となる。

スーパーライセンスの種類

FIAスーパーライセンスにはドライバー用とは別に、競技参加者、競技役員、オーガナイザー、サーキット用が存在する。本ページではドライバー用のスーパーライセンスについて説明する。

ドライバー用には以下の2種類が用意されている。

  • スーパーライセンス
  • フリー走行限定スーパーライセンス

フリー走行限定スーパーライセンスは将来有望な若手のサポートを目的に設けられたもので、その名の通りF1フリー走行のみを対象としている。

発行要件

要件は毎年見直される。スーパーライセンス及びフリー走行限定ライセンス共に、まずは以下の要件を満たす必要がある。

  • 初出走時に原則、満18歳以上である事
  • FIA発行の国際A級ライセンスを所持している事
  • F1競技規定及びFIA国際競技規定に関する質疑をクリアする事(初回申請時のみ)

スーパーライセンスの場合

グランプリや公式タイヤテストに参加する場合に必要となるスーパーライセンスの場合は上記に加えて、以下のいずれかの要件を満たす必要がある。

  • 過去3年間でライセンスポイントを40点以上獲得するか、過去2シーズンに加えて申請年の見込み獲得ポイントの合算が40点以上となる者
  • 過去3年の間にF1フリー走行で100km以上を走ったスーパーライセンス所持者
  • 過去3年より前にスーパーライセンスを取得していた者で、現在も相応の腕を持っている者
  • ライセンスポイントを30点以上獲得しているものの、不可抗力によって40点を満たせなかったとFIAが判断した者

上記2~4項に関しては別途証明が必要で、申請日の180日以内に現行F1マシン相当のマシンに乗り、レーシング速度において2日間以内に最低300kmを走破した事を、1)テスト実施国のASNによって証明を受ける、あるいは、2)F1グランプリの週末の中で消化する必要がある。

なお新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響を受け、申請日の直近3シーズンの中に2020年、あるいは2021年が含まれる場合は、直前の4シーズンの内の最も獲得ポイントが多い3シーズンの獲得ポイントが考慮されるようになった。

フリー走行限定ライセンスの場合

フリー走行限定ライセンスは、FIA-F2選手権へのフル参戦経験、または過去3年でスーパーライセンスポイントを25点以上を保有するドライバーに申請が限定される。ただし初回申請の場合は前者の要件が「FIA-F2選手権への6戦以上の参戦経験」に緩和される。

またこれに加えて、参加させたいチーム側がFIAに対してドライバーの能力を証明する事が要件とされており、申請の180日以内に少なくとも最低2日以上、F1マシン(一般的には旧車)をドライブし、300kmを超える距離をレーシングスピードで走行する事が必要となる。

なおポストシーズンテストに関しては条件付きながらもFIA国際Aライセンスでの走行が認められている。

18歳の年齢制限と「17歳特例」

2015年に当時、史上最年少でF1デビューする事が決定したマックス・フェルスタッペンの年齢(当時17歳)に対して、各方面から批判的な見解が寄せられたことを受け、FIAは2015年1月、「18歳」という年齢制限をライセンス要件に加えた。ただ、適用は2016年以降であったため、フェルスタッペンは17歳でデビューを果たした。

ただ、FIAは2024年6月11日にスーパーライセンス規定に変更を加え、「FIAの単独の裁量により、最近、かつ一貫してシングルシーター競技で卓越した能力と成熟度を示したと判断されたドライバーは、17歳でスーパーライセンスを付与される可能性がある」との文言を第13条2項に追加した。

アンドレア・キミ・アントネッリ(当時17歳)の早期F1デビューの可能性が取り沙汰される中での変更だった

以前は自国の自動車運転免許を所持していることも要件の一つとなっていたが、17歳特例の追加と合わせて撤廃された。アントネッリの母国イタリアでは、運転免許証の取得要件が18歳以上に定められていた。

スーパーライセンスポイント付与表

スーパーライセンスポイントを稼ぐ事ができるのは以下のシリーズのみ。フルシーズンの80%以上のイベントに出走する事が必要となる。シリーズによって点数配分が異なるために、世界の主要レーシングカテゴリーが、FIAの名のもとに築かれたヒエラルキーに組み込まれている。この点は非常に政治的だ。

当初は、年間に複数のシリーズに参戦しても、その内の一つのシリーズのリザルトしかポイント対象とならなかったが、現在は開催期間が被らない場合にのみ、年間2つまでのシリーズでのリザルトを対象とする事ができる。

下記とは別に、ペナルティポイントシステムが導入されている選手権において、一度もペナルティポイントを科せられずにシーズンを終えた者には、追加でスーパーライセンス2点が加算される。また、FIA-F3ワールドカップ、通称F3マカオGPの勝者には、下記とは別に5点が加算される。

スーパーライセンスポイント配分表
(2024年6月11日発行)
シリーズ 1位 2位 3位 4位 5位 6位 7位 8位 9位 10位
FIA-F2選手権 40 40 40 30 20 10 8 6 4 3
インディカー 40 30 20 10 8 6 4 3 2 1
FIA-F3選手権 30 25 20 15 12 9 7 5 3 2
フォーミュラE 30 25 20 10 8 6 4 3 2 1
WEC(ハイパーカー・クラス) 30 24 20 16 12 10 8 6 4 2
フォーミュラ・リージョナル欧州 25 20 15 10 7 5 3 2 1 0
スーパーフォーミュラ 25 20 15 10 7 5 3 2 1 0
スーパーGT(GT500) 20 16 12 10 7 5 3 2 1 0
IMSA(GTPクラス) 20 16 12 10 7 5 3 2 1 0
フォーミュラ・リージョナル中東 18 14 12 10 6 4 3 2 1 0
フォーミュラ・リージョナル米国 18 14 12 10 6 4 3 2 1 0
フォーミュラ・リージョナル日本 18 14 12 10 6 4 3 2 1 0
フォーミュラ・リージョナル・オセアニア 18 14 12 10 6 4 3 2 1 0
フォーミュラ・リージョナル・インド 18 14 12 10 6 4 3 2 1 0
ドイツ・ツーリングカー選手権 15 12 10 7 5 3 2 1 0 0
スーパーカーズ選手権 15 12 10 7 5 3 2 1 0 0
NASCAR(カップシリーズ) 15 12 10 7 5 3 2 1 0 0
インディNXT 15 12 10 7 5 3 2 1 0 0
ユーロフォーミュラ・オープン 15 12 10 7 5 3 2 1 0 0
スーパーフォーミュラ・ライツ 15 12 10 7 5 3 2 1 0 0
FIA公認F4国内選手権 12 10 7 5 3 2 1 0 0 0
AsLMS / ELMS / IMSA (LMP2クラス) 10 8 6 4 2 0 0 0 0 0
WEC(LMGT3クラス) 12 10 7 5 3 2 1 0 0 0
F1アカデミー 10 7 5 3 1 0 0 0 0 0
インディ・プロ2000選手権 10 7 5 3 1 0 0 0 0 0
GB3チャンピオンシップ 10 7 5 3 1 0 0 0 0 0
NASCAR(ナショナルシリーズ) 10 7 5 3 1 0 0 0 0 0
インターナショナルGT3シリーズ 6 4 2 0 0 0 0 0 0 0
スーパーGT(GT300) 6 4 2 0 0 0 0 0 0 0
カート世界選手権(シニア) 4 3 2 1 0 0 0 0 0 0
カート・コンチネンタル選手権(シニア) 3 2 1 0 0 0 0 0 0 0
カート世界選手権(ジュニア) 3 2 1 0 0 0 0 0 0 0
カート・コンチネンタル選手権(ジュニア) 2 1 0 0 0 0 0 0 0 0

2018年に欧州F3、フォーミュラE、WEC(LMP1クラス)、GP3、フォーミュラ・ルノー3.5、スーパーフォーミュラの6つのカテゴリが格下げ扱いとなり、以降はFIA-F2選手権(2016年までGP2と呼ばれていた)がF1へのルートの最上位に位置づけられた。

2019年は新設の女性限定シリーズ「Wシリーズ」が組み込まれた他、スーパーフォーミュラやSUPER GT、ドイツツーリングカー選手権(DTM)へのポイント割り当てが引き上げられた。

トヨタ・レーシングシリーズやWシリーズが組み込まれていた時期もあったが、対象となるシリーズは定期的に見直されており、2024年6月11日には新たにスーパーGTのGT300クラスが一覧に加わった。

ポイント減算

シーズンの第1レースのスタートドライバーが16名に満たない場合はポイント数が減らされる。

減点されるポイントは16人を下回るドライバー数に比例する。最低人数を下回るドライバー1人につき10%が減点される。

例えば16人以上のドライバーが第1レースに出走した場合は満額の100%のポイントが与えられるが、15人の場合は90%のポイント、14人の場合は80%のポイントと段階的に減っていく。

ペナルティーポイント

一般の免許証が交通違反によって免停となるのと同様に、スーパーライセンスの取消を行う仕組みとして、ペナルティーポイントシステムが存在する。

レース中のインシデント等において、特に悪質と判断された場合、スチュワードによってペナルティーポイントが科せられる。通常は2点~3点の間の違反ポイントが加算される。

スーパーライセンスに対するペナルティポイントは12ヶ月間有効とされ、違反12ヶ月後に削除される。12ヶ月の間に12点に達した場合、1戦の出場停止処分が下される。

なおペナルティーポイントとは別に、初めてスーパーライセンスを取得したシーズン(取得から12ヶ月間)は常に再審査が行われる決まりとなっており、資格がないと判断されれば即時抹消される可能性もある。

プラクティスポイント

2020年よりF1フリー走行に出走することでスーパーライセンスポイントを獲得出来るようになった。

フリープラクティス限定のスーパーライセンス保有者であれば、1回のセッションで100km以上を走行した場合に1点を獲得できる。なお、当該セッション中にペナルティポイントが科された場合は加算の対象とならない。1つの週末で最大1点まで、また、3シーズンで最大10点を獲得できる。

取得の手順と費用

参戦を計画するイベントにおける車両検査の14日前までに申請を完了する必要があるが、やむを得ない事情で急遽、ドライバー交代が行われる場合には48時間以上前に緩和される。

初めてスーパーライセンスを申請する際は、ドライバーの代理としてASN(各国のモータースポーツの管轄団体)が申請を行う。申請には以下の3つの書類が必要となる。

  • ドライバーが持つ国際A級ライセンス
  • FIAへの推薦事項
  • ドライバーのレース成績

ライセンスには年会費が必要となり、FIAに直接これを支払う必要がある。基本料金が1万2800ドル、日本円にして140万円程度で、これにチャンピオンシップポイント1点あたり1,280ドル、日本円で約14万円を支払う。

2009年のF1ワールドチャンピオンであるジェンソン・バトンは当時、128万ドル、1億4000万円の支払いを強いられた。

ライセンスに記載される内容

スーパーライセンスをはじめ、FIAが管轄するドライバーの免許証には主に以下の内容が記されている。

  • ライセンス番号
  • ライセンスのグレード
  • 有効期間の開始日と終了日
  • ドライバーの最近の写真
  • ドライバーのフルネーム
  • ドライバーの生年月日
  • 健康診断の結果
  • 視力矯正の有無
  • 特別な医学的注意事項