1965年ホンダRA272に搭載されたエンジンcopyright honda.co.jp

F1エンジンの歴史 – 馬力・気筒数・排気量の推移を振り返る

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フォーミュラ1世界選手権(F1)は、第二次世界大戦終結後の1950年にイギリスで初めて開催され、65年以上の歴史を持つモータースポーツレースだ。この間、レギュレーションの変更によって様々な排気量・形式のエンジンが用いられてきた。以下の表は馬力、排気量の推移をまとめたものである。

排気量 形式 最大馬力
1950年–
1953年
4.5L
1.5L
自然吸気
過給(スーパーチャージャー)
425馬力
1954年–
1960年
2.5L
0.75L
自然吸気
過給(スーパーチャージャー)
290馬力
1961年–
1965年
1.5L 自然吸気 225馬力
1966年-
1986年
3.0L
1.5L
自然吸気
過給(ターボ)
1,350馬力
1987年-
1988年
3.5L
1.5L
自然吸気
過給(ターボ)
690馬力
1989年-
1994年
3.5L 自然吸気 820馬力
1995年-
2005年
3.0L 自然吸気 930馬力
2006年-
2013年
2.4L 自然吸気 740馬力
2014年-
2020年
1.6L ハイブリッドターボ 1,000馬力
2021年-(見込) 1.6L ハイブリッドターボ 不明

現行のハイブリッド・ターボエンジン時代を含め、大別するとF1はこれまでに9度のエンジン時代を経験している。近年でこそレギュレーションによって気筒数や排気量が厳格に規定されているが、時代によっては必ずしも1種類のエンジンではなく、複数の種類のエンジンが許可されていたことすらあった。各々の時代のエンジンについて詳しく見てみよう。

4.5L/1.5L過給 1950年–1953年

アルファロメオ159直列8気筒F1エンジン
creativeCommonsDarren

F1エンジンの歴史は、4.5リッター自然吸気エンジンと1.5リッタースーパーチャージャーエンジンによって幕を開けた。上記写真はアルファ・ロメオ159に搭載されていた直列8気筒エンジン。425馬力を誇っていたと言われる。

排気量
4.5リットル/1.5リッター(過給)
馬力
425馬力
最大回転数
無制限
バンク角
無制限
気筒数
無制限

2.5L/0.75L過給 1954年–1960年

1954年のランチア・フェラーリD50に搭載されたF1エンジン
creativeCommonsLarryStevens

自然吸気・過給ともにエンジンサイズが縮小された1954年。その影響から馬力は290馬力まで低下した。規約上は0.75リッターの過給エンジンを搭載することも可能であったが、実際にこれを使用したチームはいなかったようである。

排気量
2.5リットル/0.75リッター(過給)
馬力
290馬力
最大回転数
無制限
バンク角
無制限
気筒数
無制限

1.5L 1961年–1965年

1961年のロータス18に搭載された1.5リッターのコスワースF1エンジン
creativeCommonsGiles Williams

過給が禁止され1.5リッター自然吸気エンジンに限定された1961年。これに伴い、各チームはそれまでマシン前方に搭載されていたエンジンをミッドシップに変更。ホンダがF1に初参戦したのもこの時代。ホンダは横置き1.5リッターV12エンジンでF1を戦った。

排気量
1.5リッター
馬力
225馬力
最大回転数
無制限
バンク角
無制限
気筒数
無制限

3.0L/1.5L過給 1966年-1986年

1980年のフォード・コスワースF1エンジン
creativeCommonsMr.choppers

これまでの2倍の排気量となる3リッター自然吸気エンジンと1.5リッター過給エンジンが許可された1966年。この時代までは各チームが開発したエンジンはそのチーム内のみで使用されていたが、1967年にフォードがエンジンメーカーのコスワースに出資して開発させたフォード・コスワース・DFVエンジンは他チームにも販売された。エンジンの市販化である。

これによりエンジン開発障壁がなくなり多くの独立系チームが誕生することになった。マクラーレン、ウィリアムズといったチームはこのエンジンの市販化によって誕生した。

排気量
3.0リットル/1.5リッター(過給)
馬力
1,350馬力
最大回転数
無制限
バンク角
無制限
気筒数
無制限

3.5L/1.5L過給 1987年-1988年

1988年ホンダRA168Eターボエンジン
creativeCommonsMorio

過給エンジンがあまりにも強すぎたため、FIAは1989年以降過給エンジンの禁止を決定。この時代は、このエンジン移行のための猶予期間として設けられた。そのため、89年に完全導入される3.5リッター自然吸気とこれまでの1.5リッター過給が共存していた。1988年に16戦中15勝を記録して圧倒的な強さを見せつけたマクラーレン・ホンダが搭載していたのは、1.5リッターV6ターボエンジン(ホンダRA168-E)であった。

排気量
3.5リットル/1.5リッター(過給)
馬力
690馬力
最大回転数
無制限
バンク角
無制限
気筒数
無制限

3.5L 1989年-1994年

1989年のフェラーリF1エンジン
creativeCommonsstorem

2年の猶予期間を経て、3.5リッター自然吸気エンジンのみとなった1989年。エンジンが大幅に変更されたものの、前年のコンストラクターズ王者のマクラーレン・ホンダが、89年から91年に3連覇を成し遂げ、計4年連続の王者に輝いた。

排気量
3.5リットル
馬力
820馬力
最大回転数
無制限
バンク角
無制限
気筒数
12気筒以下

3.0L+V10/V12 1995年-2005年

1995年の3リッターV12フェラーリエンジン

速度抑制のために排気量が3リッターに制限された。これ以降レギュレーションで速度を抑制するトレンドが生まれた。

エンジンのダウンサイジング化に対して、チームは軽量化と高回転化で出力アップを目指すことになった。1995年当初は気筒数12以下とされていたが、2000年以降はV型10気筒に限定された。一般的にはV10エンジンの方が軽量かつ小型化が可能であり、信頼性にも分がある。2003年のBMW製のP83エンジンはV型10気筒で最高回転数19,200を誇っていた。

排気量
3.0リットル
馬力
930馬力
最大回転数
無制限
バンク角
無制限
気筒数
V型10気筒/12気筒以下

2.4L+V8 2006年-2013年

BAR007に搭載されたホンダRA005Eエンジン
creativeCommonsmachu

スピード抑制とコスト削減を理由に、それまでの3リッターV10エンジンに代わり導入されたのが2.4リッターV8エンジン。導入された2006年はエンジン回転数に制限はなかったものの、段階を経て1万8000回転までに制限された。

排気量
2.4リットル
馬力
740馬力
最大回転数
18,000rpm
バンク角
90度
気筒数
V型8気筒

1.6L+V6過給 2014年-現在

F1ハイブリットターボパワーユニット
©formula1.com

F1とて世界的なエコ化の流れには逆らえず、2014年に1.6リッターV6ハイブリッド・ターボ・エンジンが導入された。この時代のエンジンは、運動エネルギーと熱エネルギーを回生する機構が組み込まれており、旧来型のICE(内燃機関)のみを主動力とするエンジンとは一線を画するものであるため、エンジンとは言わず”パワーユニット“と呼ばれる。

排気量
1.6リットル
馬力
1,000馬力
最大回転数
15,000rpm
バンク角
90度
気筒数
V型6気筒

以上F1エンジンの歴史を見てきたが、1987年以降は排気量の縮小傾向が続いており、これ以降は排気量が再び増やされた例は一度もない。現在F1で採用されているパワーユニットの仕様は2020年まで有効であり、21年以降の詳細については未定となっている。歴史を踏襲するならば、21年以降のF1エンジンの排気量は最大でも1.6リッターということになる。

2017年10月31日、FIA国際自動車連盟は21年以降のF1エンジンレギュレーションのビジョンとして、音量改善とコスト削減、そして小排気量ハイブリッドエンジン継続の3つの柱を示した。MGU-Hは廃止、MGU-Kは継続される見込みであるが、既存のエンジンマニュファクチャラーは反対の異を唱えており、FIAのプラン通りに事が進むかは微妙な情勢となっている。

果たして次世代F1エンジンはどのような仕様になるのだろうか。楽しみである。