メルセデスAMGパワーユニット2017copyright mercedesamgf1.com

パワーユニット

  • 最終更新:

パワーユニットとは、エンジン、ターボチャージャー、エネルギー回生システム、バッテリー等からなる総合的エネルギー供給システムのこと。文字数の関係上”PU”と略記される場合がある。

F1とて世界的なエコ化の波には抗えず、2014年に2.4リッターV8自然吸気エンジンに代わって1.6リッターV6ハイブリッド・ターボエンジンが導入。もはやエンジンとは呼び難い高度な動力装置となってしまったため、パワーユニットと呼ばれるようになった。

2014年に「ホンダ2015年からF1エンジン供給」のような見出しが新聞各紙を賑わしたが、これは正確ではない。ホンダが提供するのはエンジンではなく「パワーユニット」である。

パワーユニットの構成要素

パワーユニットは以下のコンポーネントから構成されており、ECU(エンジンコンピューター)がこれら全てを統合的に制御している。

  • エンジン(ICE)
  • ターボチャージャー
  • エネルギー回生システム(ERS)
    • 運動エネルギー回生システム(MGU-K)
    • 熱エネルギー回生システム(MGU-H)
  • バッテリー(ES)
  • コントロール・エレクトロニクス(CE)

PUを特徴づけるのは、エネルギー回生システム全体を指す「ERS」だ。ハイブリッド・ターボ初年度の試算ではERS単体でミニマム161馬力の出力があるとされ、ICE合わせてPU全体で計761馬力以上を発揮すると考えられていた。なお、2017年末にメルセデスPUは1000馬力に到達したとされる。

MGU-Hには回生エネルギー量に上限が課せられていないため、年々ERSの出力は上昇。重要性が高まっていった。回生されたエネルギーを実際に使用することを、デプロイメントと呼ぶ。

上記の各コンポーネントについて、以下簡単に紹介していこう。

エンジン(ICE)

パワーユニットを構成するICE
©mercedesamgf1.com

所謂旧来のエンジン=内燃機関であり、パワーユニット中核を成す動力機関である。燃料をシリンダー内で燃焼させて動力を得る。2014年初年度の時点では、ICE単体で600馬力程度の出力があると考えられていた。容量は1.6リットル、回転数は15,000回転/分に制限されている。

ICEについて詳しく知る

運動エネルギー回生システム(MGU-K)

mgu-k
©mercedesamgf1.com

ブレーキング時に発生する運動エネルギーを電気エネルギーに変換して再利用するための装置。回収したエネルギーはバッテリーに送って一時的に保管しておくか、すぐに使用するかを選ぶことができる。MGU-KのKKineticのKで運動を意味する。

MGU-Kには運動エネルギーの回生以外に、蓄えたエネルギーを使って実際に車軸を駆動させる役割を担っている。

MGU-Kについて詳しく知る

熱エネルギー回生システム(MGU-H)

mgu-h
©mercedesamgf1.com

排気ガスの熱エネルギーを電気エネルギーに変換して再利用するための装置。ターボチャージャーに代わってターボラグを解消させる役割も担う。回生エネルギーには上限が設けられていないため、PU開発の肝はMGU-Hにあると言っても過言ではない。MGU-HのHHeatのHで熱を意味する。

MGU-Hについて詳しく知る

バッテリー(ES)

バッテリー
creativeCommonsFilmstalker

MGU-HとMGU-Kで作られた電気エネルギーを一時的に保管しておくためのバッテリー。コスト削減策の一環としてESの重量は20~25kgと規定されている。ESはエネルギー・ストアの略である。

ESについて詳しく知る

コントロール・エレクトロニクス(CE)

パワーユニット全体を制御するための電子デバイス。燃料流量や点火タイミング、デプロイメントのタイミングや量など、あらゆる動作を管理・コントロールする。

CEは全チーム共通パーツであり、レギュレーションによってマクラーレン製のCEを使うことが義務付けられている。

エネルギーマネジメント時代の到来

パワーユニット新時代のF1での成功の鍵は、”エネルギーマネジメント”にあると言われるが、それは一体何故だろうか?その理由は大きく次の2つに集約される。

  • 5つの要素から構成されるパワーユニット
  • 大幅な燃料制限

まず1点目。動力装置が内燃エンジン1つのみであった時代とは異なり、現代のF1マシンにはICE、MGU-H、MGU-Kの3つの動力装置とこれを補助するES及びターボチャージャーの計5つのコンポーネントが備わっている。そのため、各動力装置からどの程度のエネルギーを発生させ、それらをどのように組み合わせ、どのような状況でどのような方法で使用するか、という総合的な視点が求められている。このような考え方は今までのF1には存在しなかった。

各コンポーネント自体の性能ももちろん重要だが、それと同じくらいに、各コンポーネント間の関係性や制御といったものがマシンパフォーマンスに大きな影響を及ぼすのである。実際のレースにおいても、開発においてもこの視点は欠かすことが出来ない。

2点目。パワーユニット時代のF1では、燃料の最大流量が100kg/hに制限されているのに加えて、燃料タンクの容量も100kgに制限されている。2012年シーズンでは1レース当たり155~160kgの燃料を消費していたことを考えると、14年からは35%も少ない燃料で同じ距離を同じ位のスピードで走ることが要求されていると言える。

燃費の悪いマシンは、レースを全力で走行することが出来ずに敗者となるだろう。燃費が良い=速い、という今までにはない構図が生まれている。よもやエンジンパワーを競う時代ではない。エネルギーマネジメントが問われる時代となったのだ。パワーユニットの重要性が叫ばれるのはここに理由がある。
 

メーカー別パワーユニット供給先リスト

2014年

パワーユニット導入初年度となる2014年には、メルセデス、ルノー、フェラーリの3メーカーがPUを供給。仏大手自動車メーカーは独メルセデスと並ぶ最多4チームへ供給し、伊の名門フェラーリは3チームにパワーユニットを供給した。

エンジン チーム
フェラーリ
059/3
フェラーリ
ザウバー
マルシア
メルセデス
PU106A Hybrid
メルセデス
マクラーレン
ウィリアムズ
フォース・インディア
ルノー
Energy F1-2014
レッドブル
ロータス
トロ・ロッソ
ケータハム

2015年

一年遅れでホンダが参戦。第4期HONDAがスタート、マクラーレンとのワークス体制を築いた。フェラーリ陣営は、財政難のためにマルシャが投資家資本を受け入れマノーと名称を変更。予算の都合上、マルシャのみ昨季型059/3を使用した。ルノーは、ケータハムの撤退とロータスのメルセデス移行に伴い、レッドブル系チームのみへの供給となった。

エンジン チーム
フェラーリ
059/4
フェラーリ
ザウバー
マノー
メルセデス
PU106A Hybrid
メルセデス
ウィリアムズ
フォース・インディア
ロータス
ルノー
Energy F1-2015
レッドブル
トロ・ロッソ
ホンダ
RA615H
マクラーレン

2016年

フェラーリ陣営に新チームのハースが加入。トロ・ロッソは一年落ちの2015年型フェラーリPUを搭載、ハンデを抱えた。ロータスを買収し、ルノーがワークスとして復活。パワーユニット型番も「ルノー R.E.16」と一新されたが、関係悪化に伴いレッドブルはバッジネームを採用し「タグ・ホイヤー」名義のPUを搭載した。メルセデス陣営には、昨年フェラーリPUを搭載していたマノーが加入した。

ホンダ陣営は、トロ・ロッソ等のプライベーターからの引き合いはあったが、ロン・デニス総裁が意を唱えたため実現ならず。16年もマクラーレンへの単独供給となった。

エンジン チーム
フェラーリ
061
フェラーリ
ザウバー
ハース
トロ・ロッソ
メルセデス
PU106C Hybrid
メルセデス
ウィリアムズ
フォース・インディア
マノー
ルノー
R.E.16
レッドブル
ルノー
ホンダ
RA616H
マクラーレン

2017年

ホンダは復帰3シーズン目もマクラーレンのみに供給。今季限りで両者の関係は幕を下ろした。マノーが撤退した事で、メルセデス陣営は4チームから3チームに減少。トロ・ロッソがルノーに復活、スポンサーシップの兼ね合いからパワーユニットは「トロ・ロッソ」名義となった。ザウバーのみ、一年落ちのフェラーリ製2016年型PU「061」を使用した。

独Auto Motor und Sportの推計によれば、17年シーズン末の時点で、メルセデスは949馬力、フェラーリは934馬力、ルノーが907馬力、ホンダは860馬力の出力を誇るとされる。

エンジン チーム
フェラーリ
062
フェラーリ
ザウバー
ハース
メルセデス
M08 EQ Power+
メルセデス
ウィリアムズ
フォース・インディア
ルノー
R.E.17
レッドブル
ルノー
トロ・ロッソ
ホンダ
RA617H
マクラーレン

2018年

マクラーレンとの関係を終わらせたホンダは、トロ・ロッソと提携。新たなスタートを切った。マクラーレンはルノー陣営に移動。この年、フェラーリ製PUはメルセデスに匹敵するパフォーマンスを発揮。ギャップを大幅に縮めた。

エンジン チーム
フェラーリ
062 EVO
フェラーリ
ザウバー
ハース
メルセデス
M09 EQ Power+
メルセデス
ウィリアムズ
フォース・インディア
ルノー
R.E.18
レッドブル
ルノー
マクラーレン
ホンダ
RA618H
トロ・ロッソ

2019年

遂に強豪レッドブル・レーシングがホンダ陣営に加入。ザウバーがアルファロメオ・レーシングに、フォース・インディアがレーシングポイントにチーム名称を変更した事を除けば、メルセデス、フェラーリ陣営の顔ぶれに変化はない。

エンジン チーム
フェラーリ
064
フェラーリ
アルファロメオ
ハース
メルセデス
M10 EQ Power+
メルセデス
ウィリアムズ
レーシングポイント
ルノー
E-TECH 19
ルノー
マクラーレン
ホンダ
RA619H
トロ・ロッソ
レッドブル