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MGU-H(エムジーユー・エイチ)とは、F1マシンから廃棄される熱エネルギーを電気エネルギーに変換し、エンジンパワーに変える装置のこと。2014年にF1に導入されたハイブリッドエンジン”パワーユニット“を構成する6大要素のひとつ。MGU-HのHHeatのHで、熱を意味する。2021年以降は撤廃される見通しとなっている。

運動エネルギーを回生するMGU-KとMGU-Hの2つを合わせてERS=エネルギー回生システムと呼ぶ。回生されたエネルギーはマシンを駆動するパワーとして使われる。

仕組みと原理

ハイブリッドの基本は、これまで利用されることなく無駄に垂れ流されていた何某かの力を使って、発電機を回し電力を得る点にある。F1で使われているMGU-Hは、空気中に排出される排気ガスによって発電機を回しパワーとする。

熱エネルギーを回生する方法は原理的には複数考えられる。しかし、MUG-Hはターボチャージャーと機械的に連結している事と規約上で定められているため、事実上排気ガスを利用する方法に限定されている。パワーユニットにはターボチャージャーの搭載が義務付けられている。

ターボは、排気ガスによってタービン(扇風機の羽根のような形状)を回しコンプレッサー(空気を圧縮させる機械)を稼働、圧縮された空気をエンジン内部に強制的に送り込む役割を担っている。これによって燃焼効率を向上させ、出力をアップさせる。そのため、MGU-Hはターボ同様に排気ガスを利用している。

MGU-Hの役割

MGU-Hは、熱エネルギーの回生と、ターボラグの解消という2つの役割を担っている。それぞれについて詳しく見ていこう。

熱エネルギーの回生

MGU-Hは、大気中に放出された排気ガスの熱を再利用して電気エネルギーに変換する。生成されたエネルギーは、即座に使用するかESと呼ばれるバッテリーに蓄えておき後で使用するかを選択できる。エネルギーを使用する際には、MGU-Kにこれを転送する必要がある。MGU-Kは、運動エネルギーの回生を担当だけでなく車軸を駆動させる役割も兼任している。

ルール上、MGU-Hの回生エネルギー量に制限はないが、バッテリーからMGU-Kへの転送には1周あたり最大2MJという上限が定められている。そのため、MGU-Hで回生したエネルギーを一旦バッテリーに保存してしまうと、事実上制限がかけられる事になる。

MGU-Hと異なり、MGU-Kには回生できるエネルギー量に上限が設けられている。そのため、パワーユニットの出力アップの鍵は「MGU-Hが如何に多くのエネルギーを回生できるか」にかかっていると言っても過言ではない。誤解を恐れずに言えば、パワーユニット開発競争はMGU-H開発そのものである。

レースカーが排出する熱は1,000℃以上に達すると言われている。この膨大なエネルギーを如何に効率よく再利用するかがエンジンサプライヤーの腕の見せどころ。

ターボラグの解消

アクセルを踏み込んでいる時は大量に排気ガスが出るが、コーナーなどで減速している時、あるいはアクセルオフの状態からオンにしたばかりの状態ではあまり排出されない。そのため、コーナーの出口でアクセルオンする際等にはターボが上手く機能せず、間を置いてからターボが起動し始める。これをターボラグと呼ぶ。

このターボラグの解消のためにMGU-Hが使われる。ターボが上手く機能しない状態、つまりICE内に空気を送り込めない状態にある時、HGU-Hがターボに代わって空気を送り込む。具体的には、ターボの代わりにMGU-Hがコンプレッサーを稼働させるのだ。

信頼性を欠いたホンダのMGU-H

2017年シーズン、マクラーレン・ホンダのMGU-Hにはトラブルが頻発した。公表はされていないものの、バーレンやモナコ、アゼルバイジャン等の前半戦の多くで故障が相次いだ理由は、ベアリングの耐久性にあったとされる。同年のメルセデスは、ホンダが不具合に見舞われたベアリング周りのシステムを一新、大幅な耐久性の向上を成し遂げている。