シルバーストン・サーキットでウィリアムズFW47をドライブするカルロス・サインツとアレックス・アルボン、2025年7月5日(土) F1イギリスGP FP3
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“真夏の落とし穴”に苦しむウィリアムズ―応急処置がもたらした新たな課題、解決を阻む2つの制約

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昨季コンストラクターズ選手権では9位と低迷したウィリアムズだが、今季はシーズン折り返し地点を終えて、レッドブルに次ぐ選手権5位と躍進を遂げている。だが、夏の到来とともに突如発生した厄介なトラブルによって、その勢いに急ブレーキがかかった。

開幕8戦で2度の5位フィニッシュを含む7度の入賞を記録してきたアレックス・アルボンは、カナダGPとオーストリアGPの2戦連続で、突如として戦列を離脱した。エンジンを含む幾つかのコンポーネントの温度が危険領域にまで達したことで、やむなくリタイアを余儀なくされたのだ。

応急処置が生んだパフォーマンス低下

ジェームズ・ヴァウルズ代表によれば、この問題はエンジニアリング部門にとって極めて厄介な課題だった。というのも、「非常に限られた条件下でのレース中にしか発生しない」性質のトラブルだったためだ。

そこでチームは、高温に見舞われたモントリオールやシュピールベルクと対照的な気候の下で行われたイギリスGPのフリー走行を活用し、この問題の再現と解決策の検証に取り組んだ。

導き出された暫定的な解決策は、エンジンカバーに設けられた排熱用スリットの拡張だった。これにより過熱した空気の排出効率は改善されたものの、その代償は空力性能の低下という形で現れた。

「この措置によってパフォーマンスを失った。だからこそ今度は、他の方法でその損失を補わなければならない」とヴァウルズは語る。

ジル・ビルヌーブ・サーキットを走行するウィリアムズのアレックス・アルボンとカルロス・サインツ、2025年6月15日(日) F1カナダGP決勝レースCourtesy Of Williams

ジル・ビルヌーブ・サーキットを走行するウィリアムズのアレックス・アルボンとカルロス・サインツ、2025年6月15日(日) F1カナダGP決勝レース

開発リソースの制約が足かせに

FW47の空力効率は、拡張されたカウルの開口部により大きく損なわれた。もしこれが2024年中のトラブルであれば、柔軟な対応も可能だったかもしれない。だが2025年は特異なシーズンであり、問題の解決は一筋縄ではいかない。

というのも、ウィリアムズはすでに4月の時点で、開発リソースの多くを新技術規則に準拠した2026年の次世代マシンに振り向けており、風洞やシミュレーション施設といった設備も、現行型ではなく来季のマシンに優先的に割り当てられているためだ。

さらに、6月末時点でのコンストラクターズ選手権5位という好成績により、制限付き風洞試験(RWTT)規定のもと、シーズン後半の風洞使用上限は標準の90パーセントに引き下げられる。従来は110パーセントだっただけに、この大幅な減少は、現行マシンの改良作業にいっそうの制約をもたらすだろう。

基本性能への評価と現実のギャップ

ガレージを歩くカルロス・サインツ(ウィリアムズ)、2025年7月4日(金) F1イギリスGPフリー走行(シルバーストン・サーキット)Courtesy Of Williams

ガレージを歩くカルロス・サインツ(ウィリアムズ)、2025年7月4日(金) F1イギリスGPフリー走行(シルバーストン・サーキット)

オーバーヒートが足かせとなり、FW47の真のポテンシャルを発揮できない現状に対し、カルロス・サインツは忸怩たる思いを口にする。

「このクルマは、あらゆる面で僕の期待を上回っている。順調な週末を送れれば、5位から8位争いに加われるはずだ。それだけに、本来得られたはずのポイントを逃している現状は大きな痛手だ」

鈴鹿での大型アップグレード、そしてバルセロナやシルバーストンでの追加改良を経て、ウィリアムズは確かに競争力のあるベースマシンを作り上げた。だが、ライバル勢も手をこまねいてはいない。

着実に迫るライバルチーム

ザウバーC45は開幕時から大幅なアップデートを重ね、今やウィリアムズを脅かす存在となりつつある。アストンマーチンも継続的な開発で着実に前進しており、レーシング・ブルズは今後2段階にわたるアップグレードを予定している。

また、ハースも最新の改良パッケージによってマシン性能の大幅な向上を実現しており、ドライバーのミスさえなければ、戦果として表れるのは時間の問題だ。

表彰台に上がるマクラーレンの空力担当テクニカル・ディレクター、ピーター・プロドロモウと2位オスカー・ピアストリ、優勝したランド・ノリス、初の表彰台に上がった3位ニコ・ヒュルケンベルグ(ザウバー)、2025年7月6日F1イギリスGP(シルバーストン・サーキット)Courtesy Of McLaren

表彰台に上がるマクラーレンの空力担当テクニカル・ディレクター、ピーター・プロドロモウと2位オスカー・ピアストリ、優勝したランド・ノリス、初の表彰台に上がった3位ニコ・ヒュルケンベルグ(ザウバー)、2025年7月6日F1イギリスGP(シルバーストン・サーキット)

このように競争が激化する中にあって、アルボンが前戦イギリスGPで獲得した4ポイントは、極めて貴重な成果となった。だがヴァウルズは、運に左右されることなく、確かな競争力を自らの手で再構築することをチームに求めている。

一方で、サインツは前向きな姿勢を崩さない。

「唯一の懸念は信頼性。それさえ確保できれば、スピードは十分にある。このマシンと僕らドライバーの可能性は、数字が示す以上のものだ。必要なのはただ、クリーンな週末を積み重ねること。それだけなんだ」