2021年F1レギュレーションの主な変更点

2021年 F1レギュレーションの主な変更点 ~これだけは抑えておきたい9個の競技&技術ルール

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響で技術規約の歴史的大改訂の導入が2022年に延期された。2トークン制での開発が許可されるものの、2021年シーズンは基本的に前年度のシャシーが持ち越される事となりルール変更点は少ない。だが、パフォーマンスに影響を与える細かな修正が多く盛り込まれている。

ここでは、これだけは抑えておきたい9個の競技&技術ルール変更点を以下にまとめる。

コストキャップの導入

賞金
creativeCommons401(K) 2013

最大の変更点はF1史上初めて導入されるコストキャップ、つまり予算制限だ。2021年シーズンは1億4500万ドル(約149億8,000万円)に設定され、2022年には1億4000万ドル、2023年には1億3500万ドルに引き下げられる予定となっている。

ただしこの上限額にはマーケティング費用やドライバーの給与、チーム内で最も多くの収入を得ている上位3名の給与は含まれない。また、従業員の出産や病気休暇、チームスタッフの医療費、退職金なども含まれない。

例外的に2024年末までに限って、ファクトリーの機械購入など、設備投資に関連するものであれば4500万ドルの追加支出が認められている。

コストキャップの導入は、潤沢な資金で運営されているトップチームと限られた予算しかない独立系チームとの財政的格差の縮小に繋がり、ひいてはパフォーマンスレベルの平準化をもたらすものと期待されている。

新たなコンパウンドの導入

タイヤスモークを上げてブレーキングするアルファタウリ・ホンダのダニール・クビアト
© Red Bull Content Pool

前年のチャンピオンシップではF1史上最大となるコーナリングフォースが記録された。これはイギリスGPでの連続タイヤトラブルの原因の一つと考えられており、ピレリはより強固なコンパウンドの導入を計画している。

2020年のF1第4戦イギリスGP決勝レースでは、最終盤にルイス・ハミルトン、バルテリ・ボッタス、そしてカルロス・サインツの3名が立て続けに左フロントタイヤのパンクに見舞われた。

新たなコンパウンドが導入されるとは言え、基本設計は過去2シーズンと比べて大きな違いはなく、以下に示すように安全性の観点からダウンフォースの低減策が実施される。

ダウンフォースの低減

ダウンフォース

メカニカル関連の開発が制限されているとは言え、チームが開発の手を緩めるわけもなく、何もしなければダウンフォースは更に増大する事となり、安全上のリスクが発生しかねない。そこで国際自動車連盟(FIA)はダウンフォースの低減を目的とした3つのルール変更を行う。

FIAのシングルシーター技術部長を務めるニコラス・トンバジスの推計では、以下の3つの施策により計10%程度のダウンフォース削減が可能だという。

フロア形状の変更

外見上の最も大きな変化はマシンのフロア形状だ。近年のF1においては、車両を真上から見下ろした際のフロア形状は長方形であり、様々なスリットが設けられていた。

これには、フロア下に強力な負圧を発生させる事でダウンフォース量を増やし、フロアのエッジ部分で発生する渦を制御することでグランドエフェクトを高める狙いがあるが、2021年シーズンではスリットが禁止され、フロア後端が切り取られたような形状となる。

マクラーレンやフェラーリ、レッドブル・ホンダなどの一部チームは、昨季終盤ラウンドの週末を使って2021年仕様のフロアをテストしていた。

リアブレーキダクトのウイングレット制限

フロア形状の変更と合わせてリアブレーキダクトのウイングレットにも制限が加えられる。ダクト下半分のウィングレットの長さは40mm短く80mmに制限される。なお上部ウィングレットは120mmのままとなる。

こうしたウイングレットは小さいながらもダウンフォースを発生させ、直接ホイールに伝えることができるため、効率性という点で大きな意味を持っている。

ディフューザー形状の制限

ディフューザー・フェンス、すなわちディフューザーの後方に垂れ下がっている縦方向のストレーキの長さが従来より50mm短くなる。

これはフロアシール効果の低減を狙うもので、ダウンフォースレベルの更なる低下に貢献するものと考えられている。

選手権順位に応じた空力テスト制限

Toyota Motorsport GmbHの風洞
Toyota Motorsport GmbHの風洞

前年のコンストラクター選手権順位に応じた空力テスト制限が実施される。弱小チームほど翌年のマシン開発でより多くの風洞実験CFD(数値流体力学)が許可され、相対的にアドバンテージを得る事が出来るという仕組みだ。これはスライドスケール空力テスト規制(ATR)と呼ばれる。

従来は空力開発に制限はなく、一部のチームはコンマ1秒のゲインのために24時間年中無休で風洞を稼働させ続けていたが、これには莫大な資金が必要で、小規模資本チームとのパフォーマンス格差を生み出す一因となっていた。現在は週65回までに制限されているが、コストキャップの導入に合わせて更に制限が加えられる。

これは翌年の開発に関わるものを対象とするもので、例えば2021年シーズンに関して言えば制限の影響が出るのは2022年となる。

前年順位 2021年
今季比テスト可能量
2022-25年
今季比テスト可能量
1位 90% 70%
2位 92.5% 75%
3位 95% 80%
4位 97.5% 85%
5位 100% 90%
6位 102.5% 95%
7位 105% 100%
8位 107.5% 105%
9位 110% 110%
10位以下 112.5% 115%

マシン及びパワーユニットの最小重量増加

2014年から2018年までF1世界選手権でダブルタイトルを獲得したメルセデスAMGのパワーユニットとF1マシン
© Daimler AG

2020年はマシンの最低乾燥重量(燃料などを除外)が746kgであったが752kgに増加される。またパワーユニットの最低重量は2020年の145kgから150kgに変更される。法外に高価な軽量素材の使用禁止につながると期待されている。

ライバル車のコピー制限

左:メルセデスの2019年型マシン「W10」、最終アブダビGPにて / 右:レーシングポイントの2020年型マシン「RP20」、バルセロナテストにて
左:メルセデスの2019年型マシン「W10」 / 右:レーシングポイントの2020年型マシン「RP20」

2020年シーズンの最大の論争の一つは、前年のチャンピオンマシンであるメルセデスW10のエアロコンセプトを模倣したレーシングポイントRP20であった。

この問題は最終的にFIAがルノーの抗議を認め、レーシングポイントに40万ユーロ(約5000万円)の罰金を科すとともに、コンストラクター選手権での15ポイントの剥奪を行う裁定を下した事で決着をみたわけだが、テクニカルレギュレーションの変更により同様の手法は今後禁止される。

ライバルチームのマシンからデザイン・インスピレーションを得る事は許可されるものの、マシンの設計開発に用いる事が許されるのは「潜在的にあらゆる競合チームが入手可能な情報」のみで、これらは「イベントやテストでのみ入手可能」でなければならないとされる。

レーシングポイントはメルセデスとの契約を利用してブレーキダクトの実物を手に入れ、これをマシン開発に利用したわけだが、こうした行為が禁止されるわけだ。

また、3Dカメラの使用を含めて、ライバルチームのマシンのリバース・エンジニアリング(分解や観察によって対象を解析し、製造方法や動作原理、設計図などの仕様を調査すること)を禁止する方向にルールが修正された。

タイヤアロケーション

2019年のF1ピレリタイヤ
© Pirelli & C. S.p.A.

タイヤ配分は標準化され、「ピレリの同意を得た上でFIAが別段の決定をした場合を除き」、各週末には1台毎にハード2セット、ミディアム3セット、ソフト8セットが供給される。

DASの禁止

レッドブル・リンクのガレージからコースに出るメルセデスW11
© Daimler AG

メルセデスが2020年シーズンのW11に投じた革新的なステアリングシステム「DAS(デュアル・アクシス・ステアリングシステム)」が禁止される。これはステアリングを前後に移動させる事でフロントタイヤのキャンバー角を変化させるもので、主にタイヤの熱入れという点でアドバンテージを得ていたとされる。

天然繊維素材

軽量かつ高強度なカーボンはF1の代名詞とも呼ぶべき素材だが、クラッシュなどにより破損した場合、鋭利な破片が飛散する点が残るという欠点がある。2021年シーズンは竹やヘンプ、リネン、コットンなどの天然繊維の使用が認められる。

強度的には従来のカーボンファイバーと同等レベルの結果が既に得られているが、重量増に繋がるため、すぐさまF1の主役に躍り出る事はないだろうが、将来的にはカーボンにとって代わる新たな複合材料がお目見えする事になるかもしれない。