
2025年F1レギュレーション改定一覧:抑えておきたい10個の変更点
2025年シーズンのFIA-F1世界選手権は、現行のグランドエフェクトカー規則の最終年を迎える。車体、エンジン、タイヤを含む技術規定に大きな変更はないが、競技規則の一部に重大な変更があった。ここでは、10の主要な変更点を紹介する。
- 最速ラップポイントの廃止
- グリッド決定ルールの明確化
- ルーキードライバーの起用枠拡大
- 重大損傷車両の即時停止規定
- ヒートハザード規定の導入
- モナコGPの2ストップ義務化
- ギアボックスの年間使用制限の撤廃
- TPC(旧型車テスト)規定の変更
- レーススチュワードの増員
- ミュールカーの許可
最速ラップポイントの廃止
2019年に導入されたファステストラップ・ポイントが撤廃された。これは決勝レース中にファステストラップを記録した者に1点のボーナスを与えるというものだった。
この変更により、一つの週末に獲得可能な最大ポイントは、優勝25点 + スプリント8点 = 33点に減少した。
ダニエル・リカルドの引退レースで物議を醸したように、この制度はしばしば批判の的となってきた経緯がある。
グリッド決定ルールの明確化
2024年サンパウロGPでは、悪天候による予選中止の可能性が浮上した。これを受け、予選が実施できなかった場合のグリッド決定ルールが明文化された。
予選が実施不能な場合、スターティンググリッドはドライバーズ選手権の順位に基づいて決定される。スプリント予選に関しても同様のルールが適用される。開幕戦など、選手権順位がまだ存在しない場合、スチュワードの裁量でグリッドを決定する。
Q2/Q3(スプリント予選含む)でタイム未計測者が複数出た場合のグリッド決定方法も以下のように細則化された。
- 計測ラップを先に開始したドライバーが上位に
- ピットアウトしたものの、計測ラップを開始できなかったドライバーが次点に
- 上記の基準で決まらない場合、前のセッション(Q2やSQ2など)での順位が適用される
ルーキードライバーの起用枠拡大
若手育成強化を目的に、FP1でのルーキードライバー起用義務回数が倍増した。
従来は1台のマシンにつき、年間に少なくとも1回、グランプリ参戦経験が2戦以下のドライバーを起用しなければならなかったが、これが2回に引き上げられた。つまりチームとしては年間に最低4回、ルーキーを起用することになる。
重大損傷車両の即時停止規定
2024年カナダGPでは、セルジオ・ペレスのクラッシュ後にリアウイングが損傷したままピットに戻るという事例が発生。これが原因でコース上にデブリが散乱し、危険な状況となった。
この事態を受け、レースディレクターが重大損傷車両の即時停止を指示できる規定が新たに追加された。
ヒートハザード規定の導入
近年、酷暑の中でのレースが増えていることを考慮し、新たに「ヒートハザード」規定が追加された。
気温31℃以上が予測される場合、またはレースディレクターが「ヒートハザード」を宣言した場合、全チームにドライバー冷却システムの搭載が義務化される。
これに伴い、マシンの最低重量がフリー走行・予選では+2kg、決勝やスプリントでは+5kg引き上げられる。
モナコGPの2ストップ義務化
オーバーテイク促進とレースのエンターテイメント性向上を目的に、モナコGP特別ルールとして最低2回のピットストップが義務化された。違反した場合は失格処分となる。
ギアボックスの年間使用制限の撤廃
コスト削減と耐久性向上を目的として2000年代に導入されたギアボックスの年間使用制限が撤廃された。
2021年以前は、6戦連続での使用が義務付けられていたが、2022年以降は「ギアボックス・ケースおよびカセット」と「駆動部品、ギアチェンジ、補助部品」の2種類に細分化され、それぞれに年間上限基数が設定された。
違反した場合、5グリッド降格ペナルティが科されるが、近年の技術進歩によりギアボックスの信頼性が向上したことから、この制限はもはや不要と判断された。
TPC(旧型車テスト)規定の変更
旧車を使ったテスト走行、通称TPCのドライバー走行に関して新たな制限が追加された。各チームの年間TPC日数(最大20日)は維持されるが、現役ドライバー1人につき最大4日・1000kmまでに制限される。
レーススチュワードの増員
各イベントのスチュワードの人数が「最低3名、最大4名」へと変更され、一部のグランプリで4名体制を採用することが可能となった。従来は3名だった。
ミュールカーの許可
アブダビで開催される2025年のポストシーズンテストにおいて、2026年の技術規則変更に備えた「ミュールカー」(テスト用改造車)の走行が特別に許可された。