アストンマーチンの2023年型F1マシン「AMR」とフェラーリ「SF-23」アルピーヌ「A523」
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2024年F1レギュレーション、抑えておきたい12個の主要変更点

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2024年シーズンのFIA-F1世界選手権はグランドエフェクトカー規定導入から3年目を迎える。車体やエンジン、タイヤを含む技術規定の大部分に目立った変更点はないが、注目すべき幾つかの調整が行われた。

スプリント形式

導入4シーズン目を迎えるスプリント・フォーマットに通算3回目となる変更が加えられた。

2023年はスプリント及びそのグリッドを争うシュートアウトがイベント2日目に行われる形式であったが、今季はシュートアウトが初日に移動となり、2日目はスプリントと日曜の決勝に向けた予選の2セッションが行われる。

  • 初日(金):FP1 + シュートアウト
  • 2日目(土):スプリント + 予選
  • 3日目(日):決勝レース

開催地は計6会場で2023年と変わらないが、これまでに開催経験のあるオーストリア、アメリカ、サンパウロ、カタールに加えて、コロナ禍を経てカレンダーに復活する中国とマイアミが新たに加わった。

日付 グランプリ 会場
4月19-21日 中国GP 上海
5月3-5日 マイアミGP マイアミ
6月28-30日 オーストリアGP レッドブルリンク
9月18-20日 アメリカGP COTA
11月1-3日 サンパウロGP インテルラゴス
11月29-12月1日 カタールGP ロサイル

パワーユニット割当数の増加

2023年シーズンと同様に、2024年と2025年シーズンに向けてパワーユニットの割り当てを1台あたり年間3基から4基に増やす案が合意された。

PU年間割当数
コンポーネント 使用可能な最大数
ICE 4
ターボ 4
MGU-H 4
MGU-K 4
ES 2
CE 2
エキゾースト 8

DRSの使用可能タイミング

マックス・フェルスタッペン駆るレッドブルRB18のリアウイングとDRSフラップ、2022年5月22日F1スペインGP決勝レースCourtesy Of Red Bull Content Pool

マックス・フェルスタッペン駆るレッドブルRB18のリアウイングとDRSフラップ、2022年5月22日F1スペインGP決勝レース

スプリントおよび決勝レース中のDRS(ドラッグ・リダクション・システム)の使用許可は2周目完了時点ではなく、1周早いオープニングラップ完了時点に変更された。

リアウイングの角度を変更して空力抵抗を低減し、オーバーテイクの促進を目指すDRSは従来、クラッシュなどの事故を防止する観点から、スタートまたは再スタート後の最初の2周は使用できないルールとなっていた。

なお当初はセーフティーカー導入後にレースが再開される場合も同様の扱いとなる事が予想されていたが、この案は採用されなかった。

フィルミングデーの制限緩和

プロモーション目的、つまり俗に”フィルミングデー”と呼ばれ、シェイクダウンの際に頻繁に利用される走行枠に関しては従来、走行距離が100kmに制限されていたが、1チームにつき1日に1回のみという条件はあるものの200kmに倍増した。年に2回という割当に変更はない。

罰金額の大幅な増加

「少なくとも過去12年に渡って、見直しも改定もされておらず、モータースポーツの現状を反映していない」として、FIA-F1世界選手権の罰金最高額が従来の25万ユーロの4倍にあたる100万ユーロ、日本円にして約1億5,830万に引き上げられた。

これはFIA国際競技規定(ISC)において定められているもので、耐久選手権(WEC)やフォーミュラE、ラリー選手権(WRC)など、F1を除くFIA管轄下の各世界選手権は75万ユーロ(従来の3倍)、その他の選手権は50万ユーロ(従来の2倍)に増額された。

F1における罰金の史上最高額は、フェラーリから知的財産を入手したとされる2007年のスパイ行為によりマクラーレンが科された1億ドルだ。

低速走行防止に向けた新ルール

高速で走行する計測ラップ中の車両と、フライング・ラップに向けて低速で走行する車両との危険なニアミスを防止すべく、予選およびレコノサンス・ラップにおける新たなルールが導入された。

ドライバーは、インラップとアウトラップを含む予選セッション中、あるいはスプリントまたは決勝レースに向けてピット出口が開放された後のレコノサンス・ラップにおいて、各マーシャリング・セクターおよび、第1・2セーフティーカー・ラインの各々において、少なくとも1回はFIA標準ECU(電子制御ユニット)が設定した制限タイム以内で走行しなければならない。

従来もラップタイムの制限が設けられていたが、これはピットレーン出口から入口までの間を対象としたものだった。新たな規定の導入により、より多くの箇所でドライバーの速度がチェックされる事となり、各車の間で大きな速度差が発生する可能性を更に低減する効果が期待される。

制限タイムより遅く走行したドライバーは「不必要に低速で走行」したと見なされ、当該セッション後にスチュワードにより調査が行われる事になる。この制限タイムは2回目のフリー走行後にチームおよびドライバーに通達される。

シュートアウトに関する説明はないが、ルールの趣旨を考えると予選と同じように新たな取り締まりが導入されるものと思われる。この場合、制限タイムは1回目のフリー走行後に通達されるものと考えられる。

旧車テスト制限の厳格化

また現行車両ではない旧車でのテストに関しては、テストパーツやセンサー、計測器類、ソフトウェアなど、現行世代のマシンに使われている如何なる要素も取り付けてはならないと明記された。

発煙筒の持ち込み禁止

2022年10月に欧州連合理事会がスポーツイベントにおける発火物の使用防止を勧告した事を受け、競技会におけるこれらの所持及び使用を禁止するISCの改定が承認された。

2022年のF1オランダGP予選では、観客がザントフォールト・サーキットのコース上に発煙筒を投げ込み、6分間に渡って赤旗中断を余儀なくされる事件が発生した。主催者は2023年大会より、発煙筒の取り締まりを独自に強化した。

FIAは「モータースポーツの状況を精査した結果、レース中のあらゆる発火装置の無許可の使用は公衆衛生と安全に重大なリスクをもたらす可能性があるため、予防と対策が必要との結論に達した」と説明した。

代替タイヤ配分方式(ATA)は廃止

2023年のハンガリーGPとイタリアGPでは予選の各ラウンドで使用可能なコンパウンドを制限する試み、ATAが採用された。

これは週末全体で使用されるタイヤの削減を通して持続可能性を高める事を狙ったもので、晴れ用のスリックタイヤは通常よりも2セット少ない11セットに削減されたが、2024年の廃止が決まった。

カーフューの厳格化は見送り

当初はカーフューの厳格化が検討されていた。これはいわゆる夜間作業禁止令に該当するもので、3つの制限期間中にパドックへの立ち入りを禁止するルールだ。

2024年は以下の制限期間の1と2における例外が各々年2回に削減され、制限期間3がFP3開始15~3時間前に変更される見通しであったが、以下の従来どおりのルールが継続される。

  • 制限期間1:FP1開始42~29時間前…年4回まで例外
  • 制限期間2:FP1開始18~4時間前…年3回まで例外
  • 制限期間3:FP3開始14~3時間前…年2回まで例外

ドライバー冷却

2023年のF1カタールGPでの問題を受け、冷却効果の向上を目指す「スクープ」なるもののクルマへの取り付けを認められる事となった。

カタールではランス・ストロールが走行中に意識を失いかけたと主張するなど、高い気温がドライバーの健康を侵害しかねない事態が発生した。

スクープ、おそらくはコックピット内に空気を取り入れるための給気口と想像されるが、これを取り付ける事によって空気循環が改善され、ドライバーの体温調節が容易になるものと思われる。

ドライバーの冷却を助けるという点では、例えばインディカー・シリーズで採用されているようなヘルメット冷却システムや冷却水を使用したクールスーツなど、他にも幾つかのソリューションが考えられる。

F1コミッションは、過酷なコンディションに対応するための更なる「補助的な冷却オプション」についても検討を進めていくとしている。

フロアに使用可能な金属パーツの制限

安全性の向上を理由として技術規定の一部改定が承認された。これはフロアに使用される金属部品が万が一、脱落した際の危険性を減らすことを目的としており、具体的にはこれらの金属部品の重量と数が制限される。