F1パワーユニットの真髄、MGU-Hが遂に市販車に…次期メルセデスAMGに搭載
F1パワーユニット(PU)の真髄とも言うべきMGU-Hのテクノロジーが遂に市販車に転用される。V6ハイブリッド時代の覇者メルセデスAMGは6月17日、PUの中でも最も複雑かつ高価な熱エネルギー回生システムの技術を、次世代のロードカーに搭載する計画を明らかにした。
Motor Generator Unit Heatの略称である「MGU-H」は、燃焼プロセスにおいて動力に変換されずに大気中に破棄されてきた排気ガスを利用して発電を行いエネルギーを回収するもので、世界的なエコ化の流れに沿うように2014年にF1に導入された1.6リッターV6ハイブリッド・ターボエンジンに組み込まれている。
上図のように、MGU-Hはターボチャージャーと同軸に設置されたデバイスだ。ターボチャージャーは排気ガスを使ってタービンを回し、コンプレッサー(空気を圧縮させる機械)を稼働させて圧縮空気をエンジン内部に強制的に送り込み、燃焼効率を向上させて出力アップを狙うが、MGU-Hは排ガスを使ってモーターを回し発電。MGU-Kがこのエネルギーを使ってクルマを駆動する。
メルセデスAMGはこの度、F1で培ったMGU-Hの技術を元にして、乗用車から船舶まで幅広い種類の過給機を手掛けるギャレット・モーションと共同で「エレクトリック・エキゾーストガス・ターボチャージャー」と呼ぶ革新的技術を開発した。
聞き慣れない名前を持つこのターボチャージャーの目玉は、排気側のタービンホイールと吸気側のコンプレッサーホイールとの間にあるシャフトに直接組み込まれた僅か4cmという小型の電動モーターにある。
この小型モーターは、排ガスを使ってタービンを回す事ができずターボチャージャーが機能しないような状況(アクセルを踏み込んだ瞬間など)において電気的にコンプレッサーを駆動させ、圧縮空気をシリンダーに送り込む役割を担う。これによってアイドリング時からの応答性の向上だけでなく、全回転域でのレスポンス改善が期待できる。
いわゆるターボラグを電気モーターで解消した形で、これはF1のMGU-Hも同様の役割を兼任しているが、パフォーマンス追求のためのMGU-Hとは異なり、エレクトリック・エキゾーストガス・ターボチャージャーはドライバビリティの改善を目的とした装置と言えそうだ。
メルセデスAMGの取締役会会長を務めるトビアス・ムアースは「F1のテクノロジーを市販車に転用することで、ターボ付き内燃エンジンの俊敏性レベルを、従来は達成できなかったレベルにまで引き上げることができる」と述べ、当技術の搭載によるドライビングフィールの格段の向上に自信を示した。
すでに開発は最終段階との事で、アッファルターバッハの本社工場で生産される次世代の量産モデルに初採用されることになる。