
DRS
DRS(Drag Reduction System)とは、マシンの走行中にリアウイングの角度を意図的に変更することで空気抵抗を減らし、トップスピードの向上をめざすアクティブ・エアロデバイスの事を指す。日本語に訳すと「空気抵抗低減システム」といったところだ。
DRS(Drag Reduction System)とは、マシンの走行中にリアウイングの角度を意図的に変更し、空気抵抗を減らしてトップスピードを向上させるアクティブ・エアロデバイスのことを指す。日本語に訳すと「空気抵抗低減システム」といったところだ。
登場初期は可変リアウィングと呼ばれていたが徐々にDRSの呼称に統一されていった。
2010年までフロントウイングに装着されていた可変フラップに代わり、2011年からF1に正式導入。リアウイングのフラップを最大5cm可動させることができ、「オーバーテイクウイング」とも呼ばれる。
ページ冒頭の写真はメルセデスGPのDRS。リアウイングにプリントされた「ペトロナス」の文字の見え方が異なることから、角度が変化しているのが確認できる。
ダウンフォースと走行速度の関係
ダウンフォースはコーナーを高速で通過するために不可欠な一方、ストレートでは空気抵抗となり、最高速を阻害する要因となる。
「コーナリング中には高いダウンフォースを発揮しつつ、直線区間で空気抵抗を低減できる仕組みを作れないだろうか?」 この発想から生まれたひとつのソリューションがDRS、可変式リアウイングである。
何故コーナリング中にダウンフォースが必要なのかについては、ダウンフォースとは?を参照いただきたい。
DRS導入の目的
DRS導入の目的はオーバーテイクチャンスの促進にあった。コースやマシンの特性に左右されるものの、DRS使用時と未使用時では、トップスピードに約10~20km/hの差が生じる。特に向かい風の状況では効果が大きくなる。
DRSの使用ルール
DRSはどこでも自由に使用できるわけではない。導入に際してのテストを経て、FIAは以下のルールを定めた。
各サーキットのメインストレートエンドの600m区間においてのみ可変リアウィングの使用を許可- 各サーキット毎にDRS使用可能区間を定める
- DRS検知地点において先行マシンとのタイム差が1秒以内だった場合に、規定区間内で使用可能
- ウェットコンディションや視界不良時(濃霧など)は使用禁止
DRSの詳細な規定についてはF1レギュレーションDRS編を参照。
DRSの運用トラブル
2019年の最終第21戦アブダビGPでは、データサーバーのクラッシュにより17周目までDRSが使用できないトラブルが発生。これは、2011年の導入以来初めての事態だった。
F1では、コース上の特定地点で前走車とのタイム差が1秒以内であることをリアルタイムで検知するシステムを運用している。このシステムを管理するデータサーバーが、F1とFOMの共同運営下でトラブルを起こしたことが原因だった。
DRSの作動メカニズム(動画解説)
以下の動画では、ケータハムF1チームのチーフエンジニア、ジャンルカ・ピサネッロ氏と空力責任者、ハリ・ロバーツ氏がDRSの仕組みを解説。手動ながらも、フラップがどのように稼働するのかを確認できる。
ミニDRS
2024年のアゼルバイジャンGPでは、マクラーレンのリアウイングのフラップが高速走行時に動き、空気抵抗を減らす仕組みが備わっていることが明らかとなり、一部で「ミニDRS」と呼ばれた。
この技術には2つの手法が考えられる。
一つには、カーボンファイバーのレイヤー構造や素材の組み合わせを工夫することで、パーツの剛性を調整する方法。もう一つは、リアウイングのマウント部分を車体下部と連結させ、走行中の車体の沈み込みを利用してウイングの角度を変化させる方法だ。