サバイバル・セル
サバイバル・セルは、F1テクニカルレギュレーションにおいて「燃料タンクやコクピット、ESなどを含む一体型の構造体」として定義されている部分の事。エンジンやサスペンションなどを取り付けるための土台、いわゆるシャシー・車体の事を、F1規定では「サバイバル・セル」と呼んでいる。
サバイバル・セルはモノコック構造で、高い剛性を確保しつつ、事故の衝撃を吸収させるために、カーボンファイバー(炭素繊維)の層の間に、ハニカム形状のアルミニウムを挟み込んだものが素材として用いられており、貫通を防ぐためにケブラーの層が組み込まれる。これは、整形後にオートクレーブ(加圧窯)で加熱され、すべてが一体化される。
© Mercedes-Benz Grand Prix Ltd. / メルセデスAMGの車体製造ファクトリーであるブラックリーのオートクレーブ
重量は50kgに満たないとされるが、クラッシュの際の強大な衝撃や、コーナリングやブレーキング時の強力なGフォースを吸収し、万が一の場合にはドライバーを守る最後の砦となる。完璧な安全というものは存在し得ないが、2007年F1カナダGPの出来事が象徴するように、非常に高い保護性能を備えている。
当時、BMWザウバーに所属していたロバート・クビサは、時速300.13kmでバリアに激突。後に、レコーダーの解析で明らかになったところによれば、瞬間的に75Gを超える衝撃が加わっていたとされるが、クビサは翌アメリカGPを欠場したのみで復帰し、翌年に同じジル・ビルヌーブで開催されたレースでキャリア初優勝を成し遂げた。
サバイバル・セルに複合材料を使った最初のF1マシンは、1965年のマクラーレンM2Aと言われており、また、カーボンファイバーを使ったサバイバル・セルを最初に実戦投入したのもマクラーレンとされており、この分野では英国ウォーキングのチームが時代を牽引してきた。
© McLaren / マクラーレンのロードカーのシャシー