マクラーレン、”5年で6.5倍超”の企業価値7400億円か―中東ファンドが完全所有権…取引完了を発表

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マクラーレンF1チームを傘下に持つマクラーレン・レーシングの企業評価額が、約50億ドル(約7425億円)に達した可能性が浮上した。これは、米投資会社MSPスポーツ・キャピタル(MSP)がマクラーレン・レーシングの株式33%を取得した2020年当時の評価額、5億6000万ポンドの6.5倍以上に相当する。

MSPが株式を売却、中東勢が完全所有権

MSPは米国現地時間2025年9月2日、保有していたマクラーレン・レーシングの株式33%を、バーレーン政府系ファンドのムムタラカットと、アブダビ政府が過半数を所有するCYVNホールディングスに売却したと発表した。これにより、ムムタラカットを筆頭株主として両者がマクラーレン・レーシングの完全所有権を握ることになった。

また、この取引に伴い、MSPのジェフ・ムーラッドCEOとジャーム・ナジャフィ会長がマクラーレン・レーシング取締役会を退任することが明らかにされた。

取引条件は非公開だが、ロイター通信は関係筋の話として、本取引における評価額が50億ドルに達する可能性を伝えた。英衛星テレビ局『Sky News』は「30億ポンド(約5900億円)以上」、英公共放送『BBC』は「約35億ポンド(約6900億円)」と報じている。

F1人気と成績回復が評価を押し上げ

企業価値急上昇の背景には、Netflixの人気ドキュメンタリー『Drive to Survive』やブラッド・ピット主演映画『F1』を追い風とする世界的なF1人気の高まりに加え、「名門マクラーレン復活」と評するに相応しい近年の飛躍がある。

コロナ禍の2020年、財務難に直面したマクラーレンは、MSP主導の投資家グループに33%の株式を売却。評価額は5億6000万ポンド(現行レートで約1,110億円)とされた。

当時のチームは再建途上にあり、ホンダと提携していた2017年にはコンストラクターズランキング9位と低迷。2020年シーズンこそ3位につけたが、タイトル争いには程遠かった。

だが、2023年シーズン中盤以降、急速に競争力を回復。2024年には、1998年以来となるコンストラクターズ選手権制覇を果たし、今季はオスカー・ピアストリとランド・ノリスがドライバーズ選手権で1位と2位を独走。15戦中12勝を挙げ、2位フェラーリに倍以上のポイント差をつけてダブルタイトルに迫っている。

マクラーレン通算200勝目を祝うウィナーのランド・ノリスと2位オスカー・ピアストリ、2025年8月3日(日) F1ハンガリーGP決勝レース(ハンガロリンク)Courtesy Of McLaren

マクラーレン通算200勝目を祝うウィナーのランド・ノリスと2位オスカー・ピアストリ、2025年8月3日(日) F1ハンガリーGP決勝レース(ハンガロリンク)

経営と競技、両輪での成長

マクラーレン・レーシングは、2016年にCEOへ就任したザク・ブラウンの下で商業基盤を再建し、2022年末にチーム代表へ就任したアンドレア・ステラの指揮によって競技面でも飛躍を遂げた。経営の安定と成績改善が相互に作用し、現在の好循環を生み出している。

マクラーレン・レーシングは現在、F1とインディカー・シリーズに参戦しているが、2027年からはFIA世界耐久選手権(WEC)にも参戦する。