
レッドブルF1、角田裕毅に代えてアレックス・パロウ起用を検討か
レッドブル・レーシングが2026年に向け、角田裕毅に代えて4度のインディカー王者、アレックス・パロウの起用を検討している可能性が浮上した。米紙『インディアナポリス・スター』が現地時間8月25日に報じた。
パロウ本人は、自身またはマネージャーがレッドブルと交渉しているとされる件について「関与も承知もしていない」と語ったとされる。だが、交渉に詳しい情報筋によれば、レッドブルはパロウの獲得に「関心を示している」という。
パロウの発言は、交渉の存在を全面的に否定するものではなく、可能性を残すものと受け止められる。
現時点で具体的な交渉には至っていないようだが、マックス・フェルスタッペンの新たなチームメイト探しに苦戦するレッドブルにとって、パロウが魅力的な選択肢となり得るドライバーであることは否定できない。
レッドブルの「相棒探し」の苦難
レッドブルは2018年のダニエル・リカルド離脱以降、ピエール・ガスリー、アレックス・アルボン、セルジオ・ペレス、リアム・ローソンと次々にセカンドドライバーを交代させてきたが、いずれも長期的な安定には結び付いていない。
角田裕毅も現状ではチャンピオンシップ争いにおいて十分な貢献ができておらず、フェルスタッペンと対等に渡り合えるドライバーを確保することは、依然としてレッドブルにとって大きな課題となっている。
Courtesy Of Red Bull Content Pool
ドライバーズパレードに参加する角田裕毅(レッドブル)、2025年8月3日(日) F1ハンガリーGP決勝(ハンガロリンク)
インディカーでの圧倒的実績
パロウは2020年にインディカーでデビューを果たし、翌2021年に名門チップ・ガナッシ・レーシングに移籍すると、その初年度に初のシリーズタイトルを獲得。さらに、2023年からは3年連続でシリーズ制覇を達成した。シャシーがワンメイクで競争が極めて拮抗するインディカーにおいて、この実績はまさに快挙といえる。
特に2025年シーズンのパフォーマンスは圧倒的だった。開幕6戦で5勝を挙げ、残り2戦を残してタイトルを確定させた。チーム代表のチップ・ガナッシは「アレックスはここで楽しんでいる。長期契約もあり、家族と共に幸せそうだ」と語り、チームとの強固な関係を強調している。
パロウはガナッシと2026年までの契約を結んでいるが、その契約にはF1への移籍を可能とする解除条項が存在すると見られている。したがって、レッドブルが来季に向けてパロウを獲得するためには、多額の違約金を支払う必要がある。
Courtesy Of Penske Entertainment
3位フィニッシュを経て自身4度目のシリーズチャンピオンを獲得したアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)、2025年インディカー・シリーズ第15戦ポートランド・インターナショナル・レースウェイ
過去に何度も浮上したF1転向話
パロウのF1転向説は今に始まったことではない。ここ数年は毎年のように、アルファタウリやザウバー、ウィリアムズなど、複数チームとの接触が報じられてきた。
中でも注目を集めたのがマクラーレンだ。2022年には旧型マシンでのテスト走行を経てアメリカGPのフリー走行に出走。さらに2024年からアロー・マクラーレンに移籍する契約を結んでいたが、一連の訴訟問題により実現には至らなかった。この契約はF1転向を視野に入れたものだった。
訴訟の一つは現在も継続中で、パロウはマクラーレンから約3,100万ドル(約46億円)の損害賠償を請求されている。裁判は2025年10月に英国で行われる予定で、この法的リスクはレッドブルにとって起用をためらわせる要因となる一方、逆にパロウが巨額の負担を回避するためにF1転向を模索するきっかけになる可能性もある。
Courtesy Of McLaren
報道陣からの質問に答えるアレックス・パロウ、2022年10月22日F1アメリカGP
本人は「未練なし」と強調
ただしパロウ本人は昨年以降、一貫してインディカーへの満足感を強調している。今季のインディ500を制した直後にも「ここは僕にとって完璧な環境だ。家族と共に過ごし、勝ち続けられる場所がここにはある」とコメントしており、少なくとも公の場ではF1転向への意欲を見せていない。
仮に移籍が実現すれば、パロウは2026年に母国スペインで開催されるバルセロナとマドリード、2つのグランプリに挑む機会を得ることになる。パロウは輝かしいインディカーでのキャリアに区切りをつけ、F1という新たな挑戦に踏み出すのか。それともアメリカに留まり、さらなる伝説を積み重ねるのか。
レッドブルのドライバー選定とあわせて、今後の動向に大きな注目が集まりそうだ。
Courtesy Of Honda Motor Co., Ltd
念願のインディ500初制覇を経てミルクを飲むアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ)、2025年5月25日第109回インディ500(インディアナポリス・モーター・スピードウェイ)