FIA、F1オランダGPで規定変更―ピットロス短縮へ…その狙いと予想される影響

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国際自動車連盟(FIA)は、今週末に開催されるF1第15戦オランダGPにおいて、ピットレーンの速度制限を従来の60km/hから80km/hへと引き上げる。

狙いは、単調になりがちなレース展開に変化をもたらし、各チームにより多くの戦略的選択肢を与えることにある。一言で言えば、2ストップ戦略への誘導だ。

ザントフォールト・サーキットのピットレーンはF1カレンダーの中で最も短く(235m)、ピットロスも約21秒と小さい部類だったが、今回の制限緩和によりピットロスは更に短い18〜19秒程度になる見込みだ。

昨年大会では、レース中のピットストップ総数がわずか26回にとどまり、その約4分の3が1ストップ戦略だった。これを踏まえ、今大会では昨季よりも1段階ソフト寄りのタイヤ構成が採用される。マルチストップを促すべく、C2にハード、C3にミディアム、そしてC4にソフトが投入される。

ただし、同サーキットはオーバーテイクが難しいため、実際にマルチストップ戦略を採用するチームは限られる可能性がある。

なお、今回の変更により、ピットレーンの走行速度が60km/hに制限されるのはモナコとシンガポールのみとなった。

ミラーで後方を確認しながらランド・ノリス(マクラーレン)をリードするマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、2024年8月25日(日) F1オランダGP決勝(ザントフォールト・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

ミラーで後方を確認しながらランド・ノリス(マクラーレン)をリードするマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、2024年8月25日(日) F1オランダGP決勝(ザントフォールト・サーキット)

単調化する戦略への対策

今季のF1は、タイヤ性能の安定化によって1ストップ戦略が定番化している。ドライバーやチームにとってはリスクが少ない一方、観客にとっては展開が予想しやすく、順位変動が乏しいレースにつながっている。

こうした状況を打破するため、ピレリとFIAは2つの計画を進めている。ひとつは「コンパウンド飛ばし」によるタイヤ性能差の拡大や、より柔らかいコンパウンドの投入。もうひとつがピットレーン速度制限の引き上げだ。

速度制限引き上げの効果はザントフォールトでは限定的にとどまる可能性が高い。だが、シンガポールのようにピットロスが大きなサーキットでは短縮効果が約5秒に達する予想され、戦略により大きな影響を与える可能性がある。

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