
史上最大級の年150億円規模か「マクラーレン・マスターカードF1チーム」爆誕、13年ぶり冠契約の理由とは?
マクラーレンは第15戦オランダGPを週末に控えた2025年8月27日、世界的決済大手マスターカードをタイトルスポンサーに迎え、2026年シーズンから「マクラーレン・マスターカードF1チーム(McLaren Mastercard Formula 1 Team)」として参戦すると発表した。
詳細は非公開ながら関係筋によると、契約は年間約1億ドル(約147億円)規模で、2030年代半ばまで続く長期契約とされる。これはマクラーレン史上最大であり、F1全体でも最大級の商業契約となる見通しだ。
マスターカードは今回の契約の一環として「Team Priceless」を始動する。これはグローバル規模の新プロジェクトで、ファンがシーズンを通じてチームやレースに近づき、特別なプログラムを体験できる取り組みだ。サーキットでのホットラップやドライバーとの交流、開催都市の文化に触れる「Priceless Experiences」といった企画が予定されており、詳細は近日中に発表される。
マスターカードのF1再挑戦
マスターカードがF1と関わりを持つのは今回が初めてではない。1997年には「マスターカード・ローラ」として参戦を試みたが、開幕戦オーストラリアGPで予選落ちを喫し、計画は頓挫。その後は4シーズンにわたりジョーダン(現アストンマーチン)をスポンサーしていた。
2024年7月にはマクラーレンと複数年に渡る「メジャースポンサー」契約を締結。今回、その枠組みを拡大させ、正式に「公式ネーミングパートナー」となった。
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Mastercardと紙幣、2011年10月25日
満を持して…10年ぶり冠契約の理由
マクラーレンがタイトルスポンサーを持つのは、2013年のボーダフォン以来、実に13年ぶりとなる。マクラーレンはこれまで、タイトルスポンサーを持たない唯一のチームだった。
近年のF1人気の高まりを受け、他の9チームは既に有力ブランドを取り込んでいる。フェラーリはHP、レッドブルはオラクル、メルセデスはペトロナス、アストンマーチンはアラムコと提携。レーシング・ブルズはVisaとCash Appのダブルネームを採用している。
マクラーレンのザク・ブラウンCEOは「マクラーレンと同じ価値観を持ち、長期的にコミットしてくれる適切なパートナーを探していた。マスターカードは他のスポーツでも多大な実績があり、グローバルな影響力を持つ完璧なパートナーだ。我々はこれまで9年間にわたり多くのオファーを受けてきたが、このパートナーシップは即決だった」と語った。
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ボーダフォン・マクラーレン・メルセデスのF1ホスピタリティ、2013年7月26日F1ハンガリーGPにて
リバリーへの影響は?
タイトルスポンサー契約はマシンのカラーリングに大きな影響を与えるのが通例だが、ブラウンはチームの象徴である”パパイヤ・オレンジ”を基調とする現行リバリーの大幅な変更は予定していないと明言した。
「我々は今のデザインに満足している。もちろん幾つかの修正はあるだろうし、2026年に向けてマシン自体が変更されるわけだが、来年も今年のマシンと非常によく似たものになるだろう」と述べた。
Courtesy Of McLaren
P1ボードの前にクルマを停めるオスカー・ピアストリ(マクラーレン)、2025年7月25日F1ベルギーGPスプリント予選(スパ・フランコルシャン)
絶好のタイミングでの契約
景気の波や為替変動、コンプライアンスに関わる問題など、市場環境の影響からチームとブランドを守ることを最優先してきたマクラーレンは、これまでタイトルスポンサー契約には慎重な姿勢を貫いてきた。タイトルスポンサー契約は額が大きい分、マクロ環境の悪化によるリスクも高い。
今回の決定は、競技面・商業面の双方でチームの価値がピークに達したタイミングで下されたものと言える。2026年以降は技術レギュレーションが刷新されるため、マクラーレンが来季以降も現在のパフォーマンスを維持できるかは不透明だ。直近の躍進は、マクラーレン側に有利な条件で契約を締結することを可能にした。
マクラーレンは2023年中盤以降に急速な復調を遂げ、2024年には26年ぶりとなるコンストラクターズタイトルを獲得。2025年は2年連続のタイトル獲得がほぼ確実視され、ドライバーズタイトルはランド・ノリスとオスカー・ピアストリのチーム内対決に注目が集まっている。
商業面でもGoogleやOKXを含む50以上のスポンサーを抱えており、マクラーレンはマスターカードとの契約拡大によって、その地位をさらに強固なものとした。