4度目のシリーズチャンピオン獲得を喜ぶチップ・ガナッシとアレックス・パロウ、2025年8月10日インディカー・シリーズ第15戦ポートランド・インターナショナル・レースウェイ
Courtesy Of Penske Entertainment

角田裕毅の”後任パロウ説”「クリックベイト」とガナッシ反論

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米紙『インディアナポリス・スター』が25日に報じたアレックス・パロウのレッドブルF1移籍説を受け、パロウが現在所属するチップ・ガナッシ・レーシング(CGR)のチームオーナー、チップ・ガナッシが報道を否定した。

報道の翌日にガナッシは米ナッシュビルにて取材に応じ、「記事を読んだが、誰の引用もなかった。パロウ本人に確認したが、誰とも話していないと言っていた。彼のマネジメントも何も知らないという。私も知らない。これはクリックベイトだろう。これを書いた記者は調査報道の腕を磨く必要があるだろうね」と笑いながら一蹴した。

『インディアナポリス・スター』によると、パロウ本人は、自身またはマネージャーがレッドブルと交渉しているとされる件について「関与も承知もしていない」と語ったとされる。だが、交渉に詳しい情報筋によれば、レッドブルは角田裕毅の後任としてのパロウの獲得に「関心を示している」という。

絶対王者としての実績、引き抜き恐れぬガナッシ

3位フィニッシュを経て自身4度目のシリーズチャンピオンを獲得したアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)、2025年インディカー・シリーズ第15戦ポートランド・インターナショナル・レースウェイCourtesy Of Penske Entertainment

3位フィニッシュを経て自身4度目のシリーズチャンピオンを獲得したアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)、2025年インディカー・シリーズ第15戦ポートランド・インターナショナル・レースウェイ

28歳のパロウは、この5年間でインディカーにおける絶対的地位を築いた。2021年、2023年、2024年にシリーズ王者となり、2025年はインディ500初制覇を含め、ここまでの16戦で8勝を獲得。最終2戦を残して4度目のタイトルを決めており、その実績がF1チームの注目を集めていたとしても何ら不思議はない。

だがガナッシはF1を脅威とは見ていない。「誰が良いものを手放したいと思うか?」と問いかけ、パロウを失う意思がないことを強調。さらに「誰もが欲しがるドライバーを抱えているということは、そのドライバーが価値ある存在だということだ。F1が最大の脅威かと聞かれれば、そうは思わない。最大の脅威は自分たち自身だ」と述べた。

また「私は自分のチームに最良の環境を提供することに努めている。それはドライバーに対しても同じだ。それが私のやり方であり、うまくいっている。アレックスには去る機会(マクラーレンとの契約)があったが、去らなかった」とも語った。

インタビューに応じるチップ・ガナッシ、2025年8月23日インディカー・シリーズ第16戦・ミルウォーキー・マイルCourtesy Of Penske Entertainment

インタビューに応じるチップ・ガナッシ、2025年8月23日インディカー・シリーズ第16戦・ミルウォーキー・マイル

訴訟沙汰とレッドブルの前例

2022年、パロウはマクラーレンでのF1参戦を目指し、所属していたCGRと対立。実際にF1テストやアメリカGPでのフリー走行を経験したものの、最終的に契約を巡ってマクラーレンと訴訟沙汰となり、CGRに残留する形となった。

この件について、レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーであるヘルムート・マルコは「複数の契約を同時に結んだ彼のマネジメントは賢くなかった」と批判した。ただし一方で、ドライバーとしてのパロウの才能については高く評価している。

パロウの契約にはF1移籍を可能にする条項が含まれており、2026年末の契約満了を待たずに移籍できる余地があるとされる。過去には、レッドブル傘下のトロロッソ(現レーシング・ブルズ)が2018年に向け、当時CGRと契約していたブレンドン・ハートレーを獲得した例がある。

COTAでインタビューを受けるブレンドン・ハートレー(トロロッソ)、2017年F1アメリカGPCourtesy Of Getty Images / Red Bull

COTAでインタビューを受けるブレンドン・ハートレー(トロロッソ)、2017年F1アメリカGP