
F1レギュレーション「パワーユニット & ERS編」
F1レギュレーションの中から、エンジン交換ペナルティ等、パワーユニット(PU)に関連する主だったルールを厳選し、その要点を以下にまとめる。
2014年のレギュレーション改定によって、F1には1.6リッターのV型6気筒の小排気量エンジンにターボチャージャーとハイブリッドシステムを組み合わせた、通称パワーユニット(Power Unit = PU)が導入された。ハイブリッドは、運動エネルギーと熱エネルギーの2種類を回生し動力とする仕組みだ。システム全体で1000馬力以上を誇る。
PUは内燃エンジン=ICE、ターボチャージャー、MGU-H(熱回生)、MGU-K(運動回生)の主要4コンポーネントに、バッテリー=ES、コントロール・エレクトロニクス=CE、エキゾーストを加えた7つのエレメントで構成しなければならない。
レギュレーションでは最大回転数1万5000rpm、バンク角90度、最大燃料流量110kg/h、重量150kg以上(2020年までは145kg以上)と規定しており、1レースで使用可能な燃料量は110kgとなっている。
現行規約は2021年末で満了を迎えるが、少なくとも2025年までは同一仕様のパワーユニットが継続使用されることが決定している。
使用・交換に関するルール
- ICE・ターボ・MGU-H・MGU-Kは年間4基、CE、ESは3基以上、エキゾーストは9セットに達するとグリッド降格
- 参戦初年度サプライヤーのPUを使用している場合は、上記プラス1基が使用可能
- 規定数を上回る最初の投入時は10グリッド、それ以降は追加で5グリッド降格
- 計15グリッド降格以上の場合は、グリッド最後尾スタート(18年より新設 / 参考)
- ピットレーンスタート時を除き、時速100kmに達しない場合レーンでのMGU-K使用は禁止
- 部品不正交換防止の為、各イベントの最初にPU内部品を封印
- シーズン中のドライバー交換が発生した場合、PU使用状況は後任ドライバーに継承
- 過去のシーズンのパワーユニットを使用しても良い
- 1イベント中に降格対象となる同一PU要素を2基以上導入した場合、最後の要素のみペナルティなく次戦で使用可
エンジン交換ペナルティ
コスト削減の一環として、レギュレーションでは年間のエンジン交換上限数を規定しており、これに違反した場合、所定のグリッド降格ペナルティが科せられる。
降格ペナルティに関わる年間の上限基数に関しては上記のとおりだが、年間のレースが19戦以下の場合、MGU-Kは年間3基以上でペナルティの対象となる。
コンポーネント毎に定められた降格対象となる最初の基数(ICE・ターボ・MGU-H・MGU-Kは4基目、CE、ESは3基目、エキゾーストは9セット目)の交換の場合は10グリッド、これを超える(ICE・ターボ・MGU-H・MGU-Kは5基目以上、CE、ESは4基目以上、エキゾーストは10セット目以上)の交換には5グリッドを定めている。降格グリッドは累積計算され、週末のスターティンググリッドに影響する。
例えば内燃エンジンは年間3基までに制限されており、4基目を投入すると10グリッドが科されるが、5基目以上の投入の場合は5グリッドと、半分の降格数で済む仕組みとなっている。
累積降格数が15以上になる場合は、それ以上加算されずに最後尾スタートとなる。
運用・使用に関するルール
- エンジンへの燃料流量は一時間あたり110キログラム
- ドライバーが加速トルクを制御する唯一の手段はアクセルペダルのみ
- ESからMGU-Kへの1周あたりのエネルギー転送量は最大4MJ
- MGU-KからESへの1周あたりのエネルギー転送量は最大2MJ
- MGU-HとES間、またはMGU-HとMGU-K間でのエネルギー転送量は無制限
- PU供給者は、前年5月15日までに来季供給先チーム名をFIAに申告
燃料流量規定は年々増えており、2019シーズンに105kgから110kgへと増加された。
製造・素材に関するルール
- 内燃機関は1.6リットル、回転数は15,000rpmまでに制限
- 1気筒当たり2つの吸気口と2つの排気バルブ、1つのターボチャージャーを備える事
- 各気筒は90度に配置すること
- 排気は、タービン用の単一排気管と1つか2つのウェストゲート用排気管を備える事
- エンジンとMGU-K以外の動力装置はNG
- パワーユニットの全体重量は最低145kgであること
- クランクケースとシリンダーブロックは鍛造アルミニウム合金製、複合材料の使用は禁止
- MGU-Hは圧力充填システムの排気タービンに機械的に接続されていること
- MGU-Kはパワートレインに機械的に連結されていること
手短に分かりやすく2021年のF1レギュレーションを知りたい方は「主要変更点のまとめ」を、より詳しくルールの全体像を知りたい方は「完全網羅版」を合わせて参照されたい。