表彰台に立つオスカー・ピアストリ(マクラーレン)、2025年F1スペインGP決勝レースにて
Courtesy Of McLaren

吐き捨てるピアストリ「何年も経った今も、こうやって邪魔してくる」因縁の古巣アルピーヌに”カチン”、遺恨から3年

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オスカー・ピアストリ(マクラーレン)は2025年F1第11戦オーストリアGP決勝レース中、かつて自身が所属していたアルピーヌのドライバー達に次々と妨害され、チーム無線を通して、こう吐き捨てた。

「アルピーヌは何年経っても結局、こうやって未だに僕の邪魔をしてくるんだね」

3年も前の確執を引き合いに出したこの発言は、今もなお関係性に根深い亀裂があることを明確に示していた。

温厚な選手権リーダーを苛立たせた古巣

レース終盤、チームメイトのランド・ノリスを追う状況の中、ピアストリは立て続けにアルピーヌ勢に行く手を阻まれる憂き目に遭った。

まずは55周目、角田裕毅とのバトルに夢中になっていたバックマーカーのフランコ・コラピントから危険な幅寄せを受け、ホイールを芝生に落とす冷や汗ものの試練に直面した。

さらに2周後、今度は同じくバックマーカーのピエール・ガスリーが、ターン1でピアストリの追い抜きを拒否。この一連の行為に対し、普段は冷静かつ温厚なピアストリも珍しく感情を露わにした。

あまりに有名な3年前の”契約遺恨”

ピアストリの苛立ちの背景には、2022年に起きたF1史上最も有名な契約騒動がある。

当時、ピアストリはリザーブドライバーとしてアルピーヌに所属していた。チームはフェルナンド・アロンソのアストンマーチン移籍を受け、2023年からピアストリをレースシートに昇格させると発表した。

だが、ピアストリは即座にSNSで反論。以下の投稿は、F1史に残る名ツイートとなった。

「僕の理解では、僕が来年彼らのためにドライブするという、アルピーヌF1が今日の午後遅くに発行したプレスリリースは、僕の同意なしに行われたものだ。これは誤りであり、僕はアルピーヌと2023年の契約を結んでいない。来年、アルピーヌでドライブする事はない」

アルピーヌF1チームのリザーブドライバーを務めるオスカー・ピアストリ、2022年4月6日Courtesy Of Alpine Racing

アルピーヌF1チームのリザーブドライバーを務めるオスカー・ピアストリ、2022年4月6日

実際、ピアストリは発表に先立ち、2度に渡ってチームを去る意思をアルピーヌに伝えており、当時はすでにマクラーレン側と秘密裏に契約を結んでいた。

アルピーヌが法的手段に訴えた契約承認委員会(CRB)でも、ピアストリとマクラーレン側の主張が全面的に認められた。

当時のアルピーヌ代表オトマー・サフナウアーは、チームへの忠義を欠く行為であるとして、ピアストリを公然と批判。関係は完全に決裂した。

明暗を分けた3年間の軌跡

あれから3年、両者の明暗は鮮やかに分かれている。

ピアストリが移籍を決断した2022年当時は、アルピーヌの方がマクラーレンより高い競争力を誇っていた。だが現在、マクラーレンは昨年のコンストラクターズチャンピオンとして、今季も現時点で2位以下に207ポイントの大差をつけトップを独走している。

一方のアルピーヌは最下位に沈み、開幕11戦でわずか11ポイントしか獲得できていない。

数字が物語る現実は残酷だ。ピアストリはF1デビューから現在に至るまで、605ポイントを獲得している。対してアルピーヌは2台合計で196ポイント。ピアストリ一人に3倍以上の差をつけられているのが現実だ。

現在チャンピオンシップでノリスに15ポイント差でリードを保つピアストリ。古巣アルピーヌとの因縁は続いているが、コース上の結果は、彼の選択が正しかったことを雄弁に物語っている。

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