
F1、軽率な異議申立を抑止へ「預託金引き上げ」検討開始
2025年シーズン前半にレース後の異議申し立てが相次いだことを受け、国際自動車連盟(FIA)とF1チームが、軽率な異議申し立てを抑制するための制度改定に向けて動き出した。
焦点となっているのは、正式な異議申し立て時に支払う「預託金」の金額だ。これまで一律2000ユーロ(約34万円)だったこの保証金を大幅に引き上げることで、根拠に乏しい抗議を未然に防ぐ狙いがある。
背景にレッドブルの連続抗議か
この議論の背景には、レッドブルが今季、メルセデスのジョージ・ラッセルに対して繰り返した異議申し立てがある。第6戦マイアミGPでは「黄旗無視」、続く第9戦カナダGPではセーフティーカー中の行為に対する抗議を提出した。
いずれの申し立てもFIAによって却下されたが、一部チーム関係者の間では「抗議の乱発によりレース結果の確定が遅れる」「競技全体の信頼性が損なわれる」といった懸念の声が上がっていた。
こうした流れを受け、7月22日にロンドンで開かれたF1コミッションでは、「異議申し立て・控訴・再審請求」に関する預託金制度の見直しが正式に議題に加えられた。
ラッセル「罰金より軽い抗議金では抑止にならない」
預託金の増額を強く求めたひとりが当事者のラッセルだった。
ラッセルは「その場の感情で口を滑らせたり、リアウイングに触れたりするだけで巨額の罰金が課されるのに、9桁の利益を出しているチームにとって2000ユーロなんて痛くも痒くもない」と指摘。
その上で、「もし保証金が6桁ユーロ(10万ユーロ以上)になれば、チームは安易な抗議を思いとどまるはずだ」と具体的な金額にも言及した。
「調査依頼」にも費用負担の動き
今回の見直し検討では、正式な異議申し立てに加え、他チームに対する「調査依頼」にも費用を導入する案が浮上している。
これは、レッドブルが今季、マクラーレンに対してタイヤ冷却技術に関する非公式な調査依頼を繰り返していたことが背景にあると見られる。
マクラーレンのザク・ブラウンCEOは、「特定のチームが、他チームの違反を訴えることを戦略の一部として多用している」と指摘。「正式な異議申し立てと同様に、こうした調査依頼にも明確な根拠と預託金を課すべきだ」と強く主張していた。