
スパ・フランコルシャン
サーキットデータ
名前 | スパ・フランコルシャン・サーキット |
---|---|
所在国 | ベルギー |
設立年 | 1921年 |
デザイン | ジュール・ド・ティエ(Jules de Their) |
全長 | 7,004m | 19コーナー |
周回数 | 44周 | 時計回り |
ピットレーン長 | 386.3m| 17.4秒 |
ターン1までの距離*1 | 150.4m |
平均速度 | 221.157km/h |
最高速度 | 335.5km/h |
エンジン負荷*2 | | 全開率 : 75% |
ブレーキ負荷 | | 使用率 : 16% |
燃料消費量 | | 2.39kg/周 |
フューエル・エフェクト | | 0.41秒/10kg |
タイヤ負荷 | |
グリップ | |
エアロ重要度 | |
セーフティーカー出動率 | 80% |
ウェット確率 | 8% |
最大高低差 | 104m |
収容人数 | 90,000人 |
WEBサイト | www.spa-francorchamps.be |
SNS | twitter facebook instagram |
*1 ポールポジションから最初の制動地点までの距離
*2 全開率は距離ではなくタイムベースで算出
スパ・フランコルシャン(Circuit de Spa-Francorchamps)は、ベルギー・リエージュ州のスパ市郊外フランコルシャンにあるF1ベルギーGPが開催されるサーキット。通称”スパ”と呼ばれる。
初のレース開催は1922年。1925年には初めてグランプリレースが行われ、最古の歴史を持つコースの一つとして知られる。世界三大耐久レースのひとつ「スパ・フランコルシャン24時間レース」の開催地であり、1924年の初開催から長年に渡って過酷な耐久レースの舞台を担ってきた。
周りを深い木々が覆うロケーションが引き起こすスパ特有の変わりやすい天候、通称「スパ・ウエザー」。コースの一部で雨が降るかと思いきや、別のエリアでは路面が乾いていることもめずらしくない。突然の土砂降りがレース結果を大きく狂わしたことは一度や二度ではなく、セーフティーカー出動率は60%を超える。
© Pirelli
伝統的・古典的なスパのコースは多くのドライバーとファンに愛されているが、3勝以上を挙げたドライバーは僅かの6人。スパはドライバーを選別する。
- ファン・マヌエル・ファンジオ3勝
- デイモン・ヒルー3勝
- ジム・クラークー4勝
- キミ・ライコネンー4勝
- アイルトン・セナー5勝
- ミハエル・シューマッハー6勝
コースレイアウト
開業当初のオリジナルのレイアウトは全長9.3マイル(14.9km)と、現在の二倍以上も長く、その一部は公道であった。現在は1周7.004kmだが、それでも現行F1カレンダーの平均値を2km近く上回り、最長のサーキットとして君臨している。2番目に長いバクー市街地サーキット(6.003 km)よりも1kmも長い。コーナー数は19。左10コーナー、右9コーナーとバランスが良い。
DRSは、オールージュの235m手前、ラ・ソース(La Source)を通過した後で検知。ケメルストレート(Kemmel Straight)で使用可。フリー走行・予選ではサーキットのどの部分でもDRSの使用が許可されているが、安全面での理由によって、ベルギーGPではオー・ルージュでのDRS使用が禁止されている。
特徴
平均240km/hを誇るF1随一の超高速サーキット
エンジン全開率は75%~80%にも達し、1ラップの平均時速は230kmと、F1屈指の超高速サーキットとして名を馳せる。1周のほぼ4分の3はフル・スロットルという計算だが、セクター別にみると、セクター1ではおよそ84%、セクター3では約93%と、常時フルスロットル状態となる。ラ・ソース(ターン1)からレ・コーム(ターン5)のブレーキゾーンまでの1,875mは、約23秒間ものエンジン全開区間となる。
これらの高速セクション(低ドラッグが有効)と、セクター2を中心に構成される曲がりくねったセクション(高ドラッグが有効)の両方のバランスの取れたセッティングが肝となる。エンジンパワーにして10馬力あたり0.22秒ほどのゲインとなるパワーサーキットだ。
1周の大部分でアクセルをベタ踏みしているため、燃料消費量も桁外れに高い。スパでは1周あたり2.39kgもの燃料が使われる。カレンダーの平均が1.69kg/lapであることを考えると約1.4倍。如何に燃費に厳しいかがよく分かる。エネルギー回生(ERS)にも厳しく、1周もたずにデプロイメントが切れてしまう。
オー・ルージュとプーオン
かの有名なオー・ルージュ(Eau Rouge)は、ドライバーやファンがいつも話題にするコーナーのひとつ。フランス語で「赤い水」の意味を持つ、コーナーと交差するように流れる川の名前が由来。2019年のFIA-F2選手権レースでアントワーヌ・ユベールが事故死したのがオー・ルージュとこれに続くラディオン(ターン3)を抜けた先の区間だった。
高低差約80mを2秒ほどで駆け抜けることになるため、縦方向に1G、横方向に5Gもの荷重がかかるという。ロケットで空に打ち上げられるような感覚に近いのだろう。また、セクター2では、18階建てのビルに相当する高さを一気に降ることになる。
スパ・フランコルシャンの高低差はF1最大となる約104mで、ターン7が最高地点、ターン15が最低地点となる。
© Pirelli / オー・ルージュ
オー・ルージュと同じ位に人気があるのは、ターン10・11から構成されるプーオン。急な下り坂の先に位置する高速2連チャンの左コーナーでは、度胸とドライビング・スキルが試される。30%近くダウンフォースが増した最新型F1マシンはプーオンすらエンジン全開であり、ここではシーズン最高となる5.2Gもの横方向への強烈なGフォースがドライバーに襲いかかる。
© Pirelli、高速左コーナーのプーオン
オーバーテイク
レース中のオーバーテイクは、困難とは言わないまでも決して簡単なわけではない。2018年のベルギーグランプリでは、合計28回のコース上での追い抜きが記録された。その内、DRSを使用しない通常のオーバーテイクは10回に過ぎなかった。
タイヤへの入力が大きいため、決勝ではタイヤのマネジメント能力が問われる。予選に関しては、1週7kmもの長さ故にタイヤのチョイスによっては1周持たずに性能が低下してしまう恐れがある。
ポール・ポジションからターン1のブレーキングゾーンまでの距離はF1最短の150.4mしかない。最長はソチ・オートドロームの890mで、6倍近くの差がある。オープニングラップのターン1までに劇的なオーバーテイクが起こる可能性は低いが、その分だけターン1の出口で各車が接近するため、ここで前走車のスリップエリアに付くことができればターン5までに交わせる可能性は高い。
年 | オーバーテイク | リタイヤ | ||
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通常 | DRS | 接触 | 機械的問題 | |
2017年 | 11回 | 21回 | 1台 | 3台 |
2018年 | 10回 | 18回 | 5台 | 0台 |
2019年 | 15回 | 35回 | 1台 | 1台 |
コースレコード
決勝レースで計測される史上最速の”ラップレコード”は、2018年にメルセデスAMGのバルテリ・ボッタスが刻んだ1分46秒286。一方の”コース・レコード”は、2019年にフェラーリのシャルル・ルクレールが予選Q3でマークした1分42秒519となっている。
- ラップレコード
- 1:46.286(ボッタス/Mercedes、2018年)
- コースレコード
- 1:42.519(ルクレール/Ferrari、2019年)
サーキットの場所と地図
ベルギーの首都ブリュッセルの東、ドイツとの国境に近いアルデンヌの森を切り開いた場所に位置する。”スパ”と”フランコルシャン”にまたがる土地にあることから、シルキュイ・ド・スパ=フランコルシャン(Circuit de Spa-Francorchamps)と呼ばれている。
写真
© Getty Images / Red Bull Content Pool、ホームストレート
© Getty Images / Red Bull Content Pool、ハースのケビン・マグヌッセンとトロロッソ・ホンダのピエール・ガスリー、2019年F1ベルギーGP決勝レース
© Pirelli & C. S.p.A.、ターン1
© Pirelli & C. S.p.A.、ターン9