上空から見たモンツァ・サーキット
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モンツァ・サーキット

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サーキットデータ
サーキット名モンツァサーキット
所在国イタリア
住所Via Vedano, 5, 20900 Monza MB, Italy
設立年1922年
設計アルフレッド・ロッセーリ
全長 / コーナー数5,793m / 11
周回数53
ピット長 / 損失時間417.6m / 21秒
ターン1までの距離*1458m
平均速度243km/h
最高速度362.5km/h
エンジン負荷と全開率*2 78%
ブレーキ負荷と使用率 15%
燃料消費レベルと量 1.98kg/周
フューエル・エフェクト 0.31秒/10kg
タイヤ負荷レベル
ダウンフォースレベル
変速回数36回/周
SC導入率40%
ウェット確率20%
WEBサイト www.monzanet.it
SNS instagram

*1 ポールポジションから最初の制動地点までの距離
*2 全開率は距離ではなくタイムベースで算出

モンツァ・サーキット(伊: Autodromo Nazionale di Monza)は、イタリア北部の都市モンツァにあるF1イタリアGPが行われるサーキット。設立は1922年と古く、ミラノのオートモービル・クラブによって僅か100日で建設され、現存するサーキットとしてはブルックランズ(イギリス)、インディアナポリス(アメリカ)に続いて世界で3番目に長い歴史を持つ。

F1グランプリの開催数はシルバーストンやスパ・フランコルシャンを上回り、2020年現在で70回を誇る。モンツァは1980年にイモラ・サーキットにその座を譲った以外、1950年の世界選手権化から数えて全てのF1イタリアGPの舞台を務めてきた。

フェラーリはF1イタリアGPにおいて最も多くの成功を収めたチームであり、これまでに19勝を挙げている。マクラーレンは10勝で2位、メルセデスは7勝で3位に続く(2019年現在)。19勝という数字は、単一コースでの史上最多勝利数となっている。

モンツァでのグランプリが終了すると次はアジアラウンドがスタートするため、ヨーロッパを舞台にしたグランプリウィークの終わりを告げる場所でもある。各チームの本拠地はイギリスに集中しているため、ヨーロッパラウンドの終了は頻繁なアップデート投入の終了と同義であり、シーズン中のマシン開発における大きな区切りとなる。

monza f1 photocreativeCommonsjanebelindasmith

2019年のF1イタリアGP開幕を直前に控えた9月4日、スクーデリア・トロロッソの生誕90周年とイタリアGPの90周年を祝う式典がミラノで行われ、モンツァ・サーキットでのF1イタリアGPが、少なくとも2024年まで継続する事が発表された。

ティフォシが織りなすモンツァの空気

赤き跳馬、フェラーリの聖地であるモンツァの独特な雰囲気を作り出すのは、熱狂的フェラーリファン「ティフォシ」だ。ティフォシはフェラーリカラーに身を包み、スタンドを赤く染め上げる。レース終了後には大挙してコース内になだれ込み、赤い発煙筒でスクーデリアを讃える。ホームストレートが赤一色に彩られて行われる表彰式は非常にエキサイティングだ。

ティフォシはモンツァを”La Pista Magica(ラ・ピスタ・マジカ)=魔法のトラック”と呼び親しんでいる。

Tifosi photo
creativeCommonswww.davidbaxendale.com

コースレイアウト

開業当時は5.5kmのロードコースと21度バンクの2つのコーナーを含む4.5kmの高速オーバルを組み合わせた全長10kmものロングコースであったが、超高速故に死亡事故が多発。幾度ものコース改修経て、現在は4本のストレートをコーナーでつないだ5.793kmのシンプルなレイアウトに落ち着いた。

モンツァ・サーキット(2022年F1イタリアGP)のコースレイアウト図copyright Formula1 Data

モンツァ・サーキット(2022年F1イタリアGP)のコースレイアウト図

モンツァ・サーキットの旧オーバルバンク
© Alfa Romeo、旧オーバル区間のバンク

F1マシンは最終コーナーのパラボリカ(Parabolica)を190km/hで駆け抜けた後、1.12kmのホームストレートを時速370キロで疾走。ターン1で時速70キロまで急制動する。

パラボリカはイタリア語で放物線を意味し、ホッケンハイムやエストリルサーキットにも同じ名を付けられたコーナーが存在するが、1981~1994年にかけて215戦を戦ったイタリア出身の元F1ドライバー、ミケーレ・アルボレートに敬意を表して2021年に「クルーヴァ・アルボレート(Curva Alboreto)」へと改称された

DRS区間は、ターン7の170m先からターン8のアスカリ手前までの間(検知箇所はターン7の95m手前)と、フィニッシュラインの115m先からターン1まで区間(検知箇所はターン11の20m先)の計2箇所。

特徴

エンジン性能が試される超高速サーキット

ラップタイムの78%、全長の85%がエンジン全開となるF1カレンダー最速のサーキット。現行レイアウトは2つのシケインを持つが、2003年に優勝を飾ったミハエル・シューマッハは平均速度247.585km/hを記録し、2019年にはキミ・ライコネンが平均263.587km/hのファステストラップを刻んだ。「スピードの神殿(Temple of Speed)」と呼ばれる。

最高速度は340km/hに達するが、この指標で言えばフランスのポール・リカール・サーキット(341km/h)とメキシコのエルマノス・ロドリゲス・サーキット(350km/h)の方が高い。

パワーセンシティビティ、つまりエンジンパワーがラップタイムに与える影響もF1随一だ。これはロングストレートの存在も去る事ながら、それに至る起点が低速コーナーであるため加速時のパワーが要求されるためだ。これは同時にメカニカルグリップの重要性が高い事を意味する。

モンツァではスリップストリームの効果が非常に高く、予選での戦略に影響を与える事が多い。2020年大会ではトウの有無によるラップタイム差が約0.7秒に達した。

セットアップと攻略法

典型的なストップ・アンド・ゴー・サーキットであり地形も平坦であるため、チームは専用のリアウイングを始めとして、ダウンフォースを極限まで削ったモンツァ仕様の特別なエアロパッケージを持ち込む。ただそれでもなお理論的に言えば、クルマが逆さまの状態で走れる程の強大なダウンフォースを発生させる。

ダウンフォースレベルが低くストレートが長い事からタイヤとブレーキが冷え過ぎてしまう傾向にあり、他のサーキットに比べてタイヤのロックアップが多発する。

タイムアップの鍵はシケイン。可能な限り速度を落とさず、コーナー出口で確実にトラクションをかけて走り抜く必要がある。そのためには縁石を上手く使う事が重要で、セットアップにおいて縁石の上でのクルマの安定性を追求する事が鍵となる。

ただしモンツァのコーナー出口側の縁石はトラクションがかかりにくくバンピーであるため、全く縁石を使わずに走る事も一つの攻略法となっている。

なおターマックの色が薄く(グレーに近い)、公園という立地故に木陰が多く存在する事もあり、路面温度は比較的低めとなる。

ロングストレートとハードブレーキングの繰り返しとなるため、使用率は低いものの、ブレーキへの負荷は非常に大きい。

困難なオーバーテイク

ダウンフォース量が極端に少ないため、その分だけ制動距離が長くなりオーバーテイクのチャンスは増えるものの、その一方でマシンは横滑りしやすくなる。

ターン1手前へのアプローチではライン取りが重要。ここが最大のオーバーテイクポイントとなるが、他のコースと比べるとオーバーテイクは困難で、予選順位が極めて重要となる。ポールシッターがレースに勝つ確率はモナコ以上。

オーバーテイク リタイヤ
通常 DRS 接触 機械的問題
2015年 14回 13回 2台 2台
2017年 21回 16回 1台 3台
2018年 15回 24回 2台 2台
2019年 15回 24回 0台 3台
2020年 15回 11回 1台 3台

歴史

イタリアグランプリは、F1世界選手権が設立された1950年より一貫してカレンダーにその名を刻んできた。未だに一度もカレンダー落ちしていないのはイタリアとイギリスの2つのグランプリのみ。モンツァはイモラに開催地を譲った1980年を除き、毎年F1イタリアGPの看板を背負ってきた。

姿を消したオーバルコース

荒廃したモンツァ・サーキットのオーバル区間のバンク
荒廃したモンツァのオーバル区間 / © Alfa Romeo Racing

開業当初のレイアウトにはオーバルセクションが存在していたものの、その初年度となった1922年を含めて、F1開催初期に多くの死亡事故が発生。これまでに52人のドライバーと35人の観客が命を落としている。

オーバルが姿を消すキッカケとなったのは1961年のグランプリだった。ヴォルフガング・フォン・トリップスが観客席に飛び込み、トリップスを含む15名が死亡する事故が発生したため、1962年以降はロードコースのみが使用される事となった。

今は使われていないものの、バンクや昔のグランドスタンドは現存しており、それがモンツァの独特の雰囲気に一役を買っている。

コースレコード

決勝レースで計測される史上最速の”ラップレコード”は、フェラーリ黄金時代の2004年に、ルーベンス・バリチェロが刻んだ1分21秒046。一方の”コース・レコード”は2020年にメルセデスのルイス・ハミルトンが予選Q3でマークした1分18秒887となっている。

タイム ドライバー チーム
ラップレコード 1:21.046 ルーベンス・バリチェロ フェラーリ 2004年
コースレコード 1:18.887 ルイス・ハミルトン メルセデス 2020年

サーキットの場所と地図

モンツァ・パークはヨーロッパで4番目に大きな公園で、広さは688ヘクタールを誇る。これはモナコ公国の3倍以上の広さだ。

写真

モンツァ・サーキットのホームストレート、2020年F1イタリアGPにて

モンツァ・サーキットのアスカリ・シケイン

モンツァ・サーキットの看板

モンツァ・サーキットでのF1イタリアGP決勝レースに向けてグリッドに着いたF1マシン

モンツァ・サーキットのホームストレートに集まるティフォシ

ターン1側から見たモンツァ・サーキットのホームストレート

モンツァ・サーキットのウォールに描かれたオーバルを含むコースレイアウト図