ポール・リカール・サーキット
サーキット名 | ポール・リカール・サーキット |
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所在国 | フランス |
住所 | 2760 Route des Hauts du Camp, RDN8, 83330 Le Castellet, フランス |
設立年 | 1970年 |
設計 | ヘルマン・ティルケ(2002年改修) |
全長 / コーナー数 | 5,842m / 15 |
最大高低差 | 31m |
周回数 | 53 |
ピット長 / 損失時間 | 415.5m / 20.5秒 |
ターン1までの距離*1 | 413m |
平均速度 | 219.8km/h |
最高速度 | 343km/h |
エンジン負荷と全開率*2 | 65% |
ブレーキ負荷 | |
燃料消費レベルと量 | 2.08kg/周 |
フューエル・エフェクト | 0.31秒/10kg |
タイヤ負荷レベル | |
ダウンフォースレベル | |
変速回数 | 42回/周 |
SC導入率 | 50% |
ウェット確率 | 10% |
WEBサイト | www.circuitpaulricard.com |
SNS | twitter facebook |
*1 ポールポジションから最初の制動地点までの距離 *2 全開率は距離ではなくタイムベースで算出
ポール・リカール・サーキット(仏:Circuit Paul Ricard)は、フランス・マルセイユ近郊のル・カステレ村にあるサーキット。1970年に設立され、1990年までのおよそ20年間に渡ってF1フランスGPの舞台を務めた。名前の由来は、同コースの資金調達を手がけた世界第4位の仏酒造メーカー”ペルノ・リカール”の創業者ポール・リカール。
2016年12月に2018年シーズンからのF1復帰が発表され、10年ぶりにフランスGPが復活した。契約は2022年までの5年間。ポール・リカールでのF1開催はアラン・プロスト(フェラーリ)が優勝した1990年以来28年ぶりの事となった。
コースレイアウト
ポール・リカールでのグランプリはこれまで、5.810km(1971~1985年)、3.813km(1986~1990年)、5.842km(2018年~)という3種類のレイアウトが使用されてきた。
2018年の復帰以降に採用されているのは、1.8kmのミストラス・ストレートの途中にシケインを設けた全長5.842kmのレイアウトだ。これは欧州最長のストレートの一つで、設立当初のオリジナルに準じている。
2018年のカレンダー復帰に際しては、超ロングストレートのハイスピード・レイアウトを望む声が多かったが、FIAはエンジンへの負荷を考慮してターン8・9から構成されるシケイン導入を決めた。とは言え復帰初年度は、8コーナー手前で時速337.5kmのスピードトラップを記録している。
なおコースの最も高い場所(ターン12)と最も低い場所(ターン6)では約31メートルの高低差があるものの、サーキット全体に渡って緩やかに傾斜しているため実際にはさほど目立たない。
特徴
あらゆる要素が試される総合的なサーキット
カタロニア・サーキットのようにクルマのあらゆる領域が試される総合的なコースで、実際、チームは中~高ダウンフォース・パッケージを持ち込む。
低速のタイトコーナーとミドルストレートで構成される最初のセクターは、ブレーキングやトラクション、低速でのバランスとダウンフォースを要求する。ミストラル・ストレートと高速のシーニュを含む第2セクターでは、エンジンパワーとエアロ効率が、そして第3セクターでは中速域でのダウンフォースと、クルマの敏捷性が必要となる。
15のコーナーのうち左回りは6つで右回りは9つだ。右コーナーの多くはロングコーナーであり、左フロントタイヤへの負担が大きい。
高効率のダクトが鍵
ターン8では1.5秒という僅かな時間で時速340kmから140kmへと一気に減速しなくてはならない。僅か1箇所のために冷却効率が高い、すなわち空気抵抗が大きいブレーキダクトが必要となるため、高効率のダクトの開発によって大幅なタイムゲインが可能となる。
ターン8を含めて0.4秒以上の間に渡って4G以上の制動力を記録する所謂ヘビーブレーキングゾーンは3箇所と多いが、各制動区間の間隔が十分に開いているため冷却的にキツイというわけではない。
© Morgan Mathurin
“強風”の名を持つバックストレート
ポール・リカールのバックストレートは「ミストラル・ストレート」と呼ばれている。”ミストラル”はフランス語で「フランス南東部に吹く強い北風の事」を意味する。
海抜400mに位置し海岸に近いためコースに吹き付ける風はかなり強く、天候が急激に変わる事もしばしばだ。
現代のF1マシンは複雑なエアロダイナミクスの上に成り立っているため、突発的な気流の変化に対して脆弱だ。ハイレーキのマシンは特にだが、走行中のマシンに与える強風の影響は大きく、ダウンフォースが不安定となりマシンの挙動が乱れる。
ランオフエリアに設置された赤と青のストライプ
© circuitpaulricard、青と赤のコントラストが美しい
ランオフエリアは赤と青の2つのカラーで彩られている。これは単なる見栄えの良さを狙ったものではない。これらはグラベルに代わるランオフシステムで、減速機構を備えている。
両ペイントはアスファルトにタングステンを混ぜたもので、共にサンドペーパー(紙やすり)のような組成となっており、コース外に飛び出たマシンを減速させる。青よりも赤の方は摩擦係数が高い。
定期的に再舗装される黒い路面
テストコースであるが故に、他のF1サーキットとくらべて定期的に路面が再舗装されるのも特徴の一つと言える。
ここのターマックは非常に色が濃いため天候が良いと路面温度が劇的に高くなる傾向がある。50℃以上になる事も珍しくはない。
ターン4とターン5の間にある唯一のバンプを除けば路面そのものは非常に滑らかで、タイヤの消耗が少ない反面、温まりにくい。
オーバーテイクとリタイヤ統計
ミストラス・ストレートへのシケイン設置でオーバーテイクが困難になるのではと懸念されたが、2018年は計50回のコース上でのオーバーテイクが記録された。
デグラデーションが少なく、また、ランオフエリアが広いためにセーフティーカー導入の可能性は低く、戦略的にトラックポジションを上げる事は容易ではない。
年 | オーバーテイク | リタイヤ | ||
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通常 | DRS | 接触 | 機械的問題 | |
2021年 | 14回 | 41回 | 0台 | 0台 |
2019年 | 6回 | 18回 | 0台 | 1台 |
2018年 | 15回 | 35回 | 2台 | 1台 |
テスト専用ハイテクサーキット
1999年を最後にロードレース世界選手権(現MotoGP)の舞台から退いたポール・リカールは、当時F1のトップを務めていたバーニー・エクレストンの関連企業エクセリス社によって買収され、以降テスト専用サーキットの道を歩む事となった。実際、2009年までの10年間はレースが一切開催されなかった。
2002年にヘルマン・ティルケの設計によって改修され、サーキット名も「ハイテク・テスト・トラック」へと改称された。同年トヨタは、ポール・リカールをトヨタF1の前線基地と位置づけ、エクセリス社と提携した。
© B. Asset
247通りのコースレイアウト
F1から市販車まで、幅広い車のテストに最適化された新しいコースは全247通りものレイアウトを備えており、マシン開発やレース競技など、用途に合わせて最短826mから最長5,861mまで変幻自在のレイアウトを可能にする。
その内の64レイアウトでは「ウルトラ・リファイン・ウォーター・システム」と呼ばれる人工ウェットコンディション再現装置や、高強度コンクリート及びポリエステル溝による高排水システム等を利用できる。自動給水システムには雨水を再利用している。
© circuitpaulricard
改修の歴史
2002年の近代化とテストトラック化を経て、2009年にフランスの建築事務所、Architecture 54の協力の下、4400席のグランドスタンド席を新設するなどして1万人の観客を収容できるように再改修され、レース競技用のサーキットに復帰した。
以降、ヨーロピアン・ル・マン(ELMS)やブランパンGT、FIA WTCC等の開催コースに採用され、コース名称を「サーキット・ポール・リカール」に戻した。
また2018年のフランスGP復活に先立ち、オーバーテイク促進のために3つのコーナーが改修され、また一部が再舗装されたほか、新たな歩行者用通路や観客用アクセスゲート、グランドスタンドに46,000席の常設席が設けられた。またパドック・メディアセンターも新たに建設された。
復帰初年度のフランスGPで安全性への懸念が発生した事を受け、2019年大会ではピットインの方法が変更された。従来はメインストレートから直接ピットレーンに入る形であったが、ターン14の右側から進入する形となった。この変更によりピットストップに伴うロスタイムが約1秒短縮された。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響で中止を強いられた2020年を経て、2021年のF1グランプリ開催に向けてコースの大部分及びピットレーンの入り口付近が再舗装された。
© Morgan Mathurin
フランスGP開催の7つのコース
ポール・リカールはフランスGPが開催された7番目のサーキットで、2021年現在、最多18回のマニクールに次いで2番目に多い17回のグランプリを開催してきた。過去にF1世界選手権フランスGPを開催した事のあるコースは以下の通り。
サーキット | 開催数 | 開催年 |
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マニクール | 18回 | 1991-2008 |
ランス・グー | 12回 | 1950, 1951, 1953, 1954, 1956, 1958-1961, 1963, 1966 |
ポール・リカール | 18回 | 1971, 1973, 1975, 1976, 1978, 1980, 1982, 1983, 1985-1990, 2018, 2019, 2021, 2022 |
ディジョン・プレノワ | 5回 | 1974, 1977, 1979, 1981, 1984 |
ルーアン・レゼサール | 5回 | 1952, 1957, 1962, 1964, 1968 |
シャレード | 4回 | 1965, 1969, 1970, 1972 |
ブガッティ | 1回 | 1967 |
なお1950年より前の非世界選手権時代を含めるとフランスGPを主催した事のあるコースは16箇所に及ぶ。
コースレコード
2018年のF1カレンダーの復帰までは、1985年にケケ・ロズベルグ(ウィリアムズ・ホンダ)が記録した1分39秒914が決勝レースで計測される史上最速の”ラップレコード”となっていたが、復帰初年度に5秒近く更新された。
タイム | ドライバー | チーム | 年 | |
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ラップレコード | 1:32.740 | セバスチャン・ベッテル | フェラーリ | 2019年 |
コースレコード | 1:28.319 | ルイス・ハミルトン | メルセデス | 2019年 |
サーキットの場所と地図
プロヴァンスの中心都市マルセイユから東へ約40kmの山々に囲まれたル・カステレ村に位置する。10km程南下すると地中海が広がる。
過去10年間の環境保全活動を評価するFIA環境認証の最高レベル(3つ星)を2019年に取得するなど、サント・ボーム地域自然公園の中心に位置する事などから環境に配慮したサーキット運営を行っている。
F1フランスGP歴代ウィナーとポールシッター
ポール・リカール・サーキットで開催されたF1世界選手権フランスGPの歴代勝者とポールシッター。
開催年 | ドライバー | チーム | タイム | |
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2021 | 優勝 | マックス・フェルスタッペン | レッドブル・ホンダ | 1:27:25.770 |
ポール | マックス・フェルスタッペン | レッドブル・ホンダ | 1:29.990 | |
2019 | 優勝 | ルイス・ハミルトン | メルセデス | 1:24:31.198 |
ポール | ルイス・ハミルトン | メルセデス | 1:28.319 | |
2018 | 優勝 | ルイス・ハミルトン | メルセデス | 1:30:11.385 |
ポール | ルイス・ハミルトン | メルセデス | 1:30.029 | |
1990 | 優勝 | アラン・プロスト | フェラーリ | 1:33:29.606 |
ポール | ナイジェル・マンセル | フェラーリ | 1:04.402 | |
1989 | 優勝 | アラン・プロスト | マクラーレン・ホンダ | 1:38:29.411 |
ポール | アラン・プロスト | マクラーレン・ホンダ | 1:07.203 | |
1988 | 優勝 | アラン・プロスト | マクラーレン・ホンダ | 1:37:37.328 |
ポール | アラン・プロスト | マクラーレン・ホンダ | 1:07.589 | |
1987 | 優勝 | ナイジェル・マンセル | ウィリアムズ・ホンダ | 1:37:03.839 |
ポール | ナイジェル・マンセル | ウィリアムズ・ホンダ | 1:06.454 | |
1986 | 優勝 | ナイジェル・マンセル | ウィリアムズ・ホンダ | 1:37:19.272 |
ポール | アイルトン・セナ | ロータス・ルノー | 1:06.526 | |
1985 | 優勝 | ネルソン・ピケ | ブラバム・BMW | 1:31:46.266 |
ポール | ケケ・ロズベルグ | ウィリアムズ・ホンダ | 1:32.462 | |
1983 | 優勝 | アラン・プロスト | ルノー | 1:34:13.913 |
ポール | アラン・プロスト | ルノー | 1:36.672 | |
1982 | 優勝 | ルネ・アルヌー | ルノー | 1:33:33.217 |
ポール | ルネ・アルヌー | ルノー | 1:34.406 | |
1980 | 優勝 | アラン・ジョーンズ | ウィリアムズ・フォード | 1:32:43.420 |
ポール | ジャック・ラフィティ | リジェ・フォード | 1:38.880 | |
1978 | 優勝 | マリオ・アンドレッティ | ロータス・フォード | 1:38:51.920 |
ポール | ジョン・ワトソン | ブラバム・アルファロメオ | 1:44.410 | |
1976 | 優勝 | ジェームス・ハント | マクラーレン・フォード | 1:40:58.600 |
ポール | ジェームス・ハント | マクラーレン・フォード | 1:47.890 | |
1975 | 優勝 | ニキ・ラウダ | フェラーリ | 1:40:18.840 |
ポール | ニキ・ラウダ | フェラーリ | 1:47.820 | |
1973 | 優勝 | ロニー・ピーターソン | ロータス・フォード | 1:41:36.520 |
ポール | ジャッキー・スチュワート | ティレル・フォード | 1:48.370 | |
1971 | 優勝 | ジャッキー・スチュワート | ティレル・フォード | 1:46:41.680 |
ポール | ジャッキー・スチュワート | ティレル・フォード | 1:50.710 |