カタロニア・サーキットのホームストレート、2021年5月7日F1スペインGPフリー走行にて
Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

カタロニア・サーキット

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サーキットデータ
サーキット名カタロニア・サーキット
所在国スペイン
住所Camino Mas Moreneta, 08160 Montmeló, Barcelona, Spain
設立年1991年
全長 / コーナー数4,657m / 14
最大高低差30m
周回数66
ピット長 / 損失時間367m / 17秒
ターン1までの距離*1565m
平均速度192.9km/h
最高速度315km/h
エンジン負荷と全開率*2 62%
ブレーキ負荷と使用率 16.4%
燃料消費レベルと量 1.59kg/周
フューエル・エフェクト 0.36秒/10kg
タイヤ負荷レベル
ダウンフォースレベル
変速回数40回/周
SC導入率60%
WEBサイト www.circuitcat.com
SNS instagram

*1 ポールポジションから最初の制動地点までの距離
*2 全開率は距離ではなくタイムベースで算出

カタロニア・サーキットとは、スペインのカタルーニャ州の州都バルセロナから北部に25kmのムンマローにあるF1スペインGPが開催されるサーキットのこと。正式名称は、シルクイート・デ・バルセロナ・カタルーニャ(Circuit de Barcelona-Catalunya)

ウインターテストやインシーズンテストの開催地でもあるため、F1関係者にとっては馴染み深いコース。各チームとも豊富なデータを所持している。シーズン中にどれだけ開発が進んでいるかを見極めるのに最適なグランプリとなる。

雪に閉ざされたカタロニア・サーキットCourtesy Of Honda

雪に閉ざされたカタロニア・サーキット

カタロニア・サーキットは1992年のバルセロナ夏季オリンピックでの自転車競技開催に先立ち1991年に開業。同じ年にヘレスに代わってF1スペインGPの舞台を務め、以降毎シーズンに渡ってグランプリレースを開催してきた。現時点では少なくとも2026年までの開催が決まっている

例年ヨーロッパラウンドの始まりの地であり、全チームが大規模なマシンアップデートを行うことでも知られる。これは、F1チームの大部分がヨーロッパに本拠地を置いているため、サーキットがチームのファクトリーに近いことによる。

Catalunya Circuit f1 photocreativeCommonsCaterhamF1

1994年と1997年及び、2008年から2012年までは同じスペインのバレンシア市街地コースでグランプリが併催された。F1では「1国1GP開催」が原則であるため、本来であれば1シーズン中に一つの国で2回のグランプリが開催される事は許されないが、バレンシアでのグランプリ名称を「ヨーロッパGP」とすることで対処した。

コースレイアウト

このコースで速いマシンはどのサーキットでも速い」と言われるほど、マシンの総合力が試されるテクニカルなサーキットで、実際、プレシーズンテストの常連でもある。

高速・中速・低速とコーナーの種類と速度域がバラエティに富んでおり、なおかつロングストレートと高低差(30m)も備える。

2007年以降、16コーナー、全長4675mのレイアウトが採用されてきたが、2023年大会に先立ち最終セクションのシケイン(旧ターン14、15)が撤去され、2006年以前のレイアウトに戻された。

F1スペインGPの舞台カタロニア・サーキットの2021年版コースレイアウト図copyright Formula1 Data

2021・2022年版コースレイアウト図

カタロニア・サーキット(F1スペインGP)のコースレイアウト図(2023年)copyright Formula1 Data

2023年版コースレイアウト図

高速のセクター1と2、特にターン3・9の高速コーナーではエアログリップが重要で、チームはミディアム・ハイダウンフォース仕様のパッケージを持ち込む。ターン3では強烈なGフォースがマシンとドライバーを襲う。時速285km/hにも達する超高速コーナーだ。

黄色いソーセージ縁石が設置されたカタロニア・サーキットのターン1とターン2を駆け抜けるアルピーヌA521、2021年5月7日F1スペインGPCourtesy Of Alpine Racing

黄色いソーセージ縁石が設置されたカタロニア・サーキットのターン1とターン2を駆け抜けるアルピーヌA521、2021年5月7日F1スペインGP

ヘビーブレーキングが必要になるのは2回、ブレーキ使用率も16%とブレーキにはやさしいサーキットだ。燃料・エンジンへの負担は低く、マシンのトータルバランスがモノを言う。平均速度も190km/hほど。

低速コーナーのほとんどは左コーナー。対照的に右コーナーのほとんどは高速となるため、左右で微妙にクルマのセットアップを変える。左タイヤの消耗が早く、右タイヤには熱が入りにくい。

高速コーナーが多い事もあり、タイヤとしては最も硬いコンパウンドセットが持ち込まれる。ターン3やターン9等、高速左コーナーが存在するため、左フロントタイヤの摩耗が特に酷い。

改修と変更

2018年には路面が再舗装され、それ以前に見られた凹凸やタイヤへの攻撃性が変化した。

2021年に向けては、F1を統括する国際自動車連盟(FIA)並びにMotoGPを管轄する国際モーターサイクリズム連盟(FIM)との合意に基づき、バックストレート終端のターン10、スタジアムセクション入口にある通称ラ・カイシャの改修工事が行われ、全長が4,655から4,675mへと20m長くなった。

変更されてなお、F1マシンはこのコーナーを以前と同じく3速で駆け抜けたが、通過速度は85km/hから110km/h程度にまで上昇した。

2021年のF1スペインGP開催に向けて改修されたカタロニア・サーキットのターン10、2021年5月6日Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

2021年のF1スペインGP開催に向けて改修されたカタロニア・サーキットのターン10、2021年5月6日

2023年に向けては、2007年に最終コーナー手前に導入されたシケイン(ターン14/15)が撤去され、以前のオリジナルレイアウトに戻された

これに伴い、安全性強化のためにラップ最後の2つの高速コーナーにTECPROバリアが導入され、公式コース全長は従来より18m短い4.657kmへと変化した。

また、ターン1のランオフエリアは拡大され、ターン1・2には新しいフェンスが設置。ピットレーン出口のスコアボードも「より近代的な」ものに改装され、縁石やタイヤバリアの再塗装と交換も行われた。更に、メインストレートに沿うピットビルのホスピタリティとコーポレートエリアも拡大・近代化された。

ドライバーを翻弄する風

海岸に近いという立地が原因の不安定な風向きが、マシンパフォーマンスに大きく影響する。そのため、下手にセッティングを詰め過ぎると、僅かなコンディションの変化に翻弄される事になる。

例えば、初日午後のFP2で突き詰めたセッティングを行ったとする。そのセッティングがバシッとハマり、FP2では最高のマシンバランスだったとしても、翌日の午前のFP3では最悪のマシンバランスに感じられる、ということが往々にしてある。

無線にむなしく響く「昨日までは最高だったのに、どういうわけか今は全くグリップがない。。」のようなドライバーのコメントが、このカタロニア・サーキットではよく聞かれる。

カタロニア・サーキットのホームストレート
©F1 ホームストレート

オーバーテイクとリタイヤ統計

唯一のロングストレートであるホームストレートに先立って高速コーナーが配されているため、後続車はダーティーエアーの影響で前走車を追従しにくく、ストレート終端も特に激しいブレーキングゾーンというわけではなく、またコース幅も狭いためオーバーテイクは難しい。

オーバーテイク リタイヤ
通常 DRS 接触 機械的問題
2022年 6回 37回 0台 2台
2021年 11回 37回 0台 1台
2020年 6回 25回 0台 1台
2019年 7回 15回 2台 1台
2018年 3回 10回 3台 3台
2017年 4回 16回 3台 1台
2016年 24回 38回 2台 3台
2015年 10回 12回 1台 1台
2015年 10回 12回 1台 1台

ウェットコンディションで行われた1991年の開幕戦では61回、2011年には60回、2013年には50回の追い越しが記録されるなど、一時は華やかなレースもあったが、基本的に追い抜きは困難だ。ちなみに2005年と2008年は僅か2回で、2000年と2002年も3回に留まっている。

カタロニア・サーキットで行われた過去31回のグランプリの内、ポール・トゥ・ウインは23回と、その確率は74%にも達する(2021年大会終了現在)。だが、ポールからターン1のエイペックスまでの距離は579mとカレンダーで4番目に長く(2021年時点)、上手く蹴り出さないとターン1までに追い抜きを許す事もあり得る。

2021年5月9日のF1スペインGP決勝1周目のターン1でメルセデスのルイス・ハミルトンを交わすレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンCourtesy Of Red Bull Content Pool

2021年5月9日のF1スペインGP決勝1周目のターン1でメルセデスのルイス・ハミルトンを交わすレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン

2013年にフェラーリF138を駆ったフェルナンド・アロンソを除き、優勝は2列目以上に限られている。なお表彰台獲得としては1997年のオリビエ・パニス、2001年のファン・パブロ・モントーヤが12番グリッドから表彰台に上っている。

スペインGPは女性ドライバーが唯一入賞したレース

スペインGPは女性F1ドライバーが初めて、かつ唯一のポイントを獲得した場所でもある。

イタリア出身のレラ・ロンバルディはモンジュイック・サーキットで開催された1975年4月27日のF1スペインGPでマーチのステアリングを握り6位入賞を果たした。

29周目に首位を走行していたロルフ・シュトメレンがクラッシュし、ジャーナリスト2名、観客1名、コースマーシャル1名が死亡してレース打ち切りとなった事で、ハーフポイントの0.5点が与えられた。

コースレコード

タイム ドライバー チーム
4.655km(2007~2020年)
ラップレコード 1:18.183 バルテリ・ボッタス メルセデス 2020年
コースレコード 1:15.406 バルテリ・ボッタス メルセデス 2019年
4.727km(2021年~)
ラップレコード 1:18.149 マックス・フェルスタッペン レッドブル・ホンダ 2021年
コースレコード 1:16.741 ルイス・ハミルトン メルセデス 2021年
4.657km(2023年~)
ラップレコード
コースレコード

F1スペインGP歴代ウィナーとポールシッター

開催年 ドライバー チーム タイム
2023 優勝
ポールポジション
2022 優勝 マックス・フェルスタッペン レッドブル・RBPT 1:37:20.475
ポールポジション シャルル・ルクレール フェラーリ 1:18.750
2021 優勝 マックス・フェルスタッペン レッドブル・ホンダ 1:33:07.680
ポールポジション ルイス・ハミルトン メルセデス 1:16.741
2020 優勝 ルイス・ハミルトン メルセデス 1:31:45.279
ポールポジション ルイス・ハミルトン メルセデス 1:15.584
2019 優勝 ルイス・ハミルトン メルセデス 1:35:50.443
ポールポジション バルテリ・ボッタス メルセデス 1:15.406
2018 優勝 ルイス・ハミルトン メルセデス 1:35:29.972
ポールポジション ルイス・ハミルトン メルセデス 1:16.173
2017 優勝 ルイス・ハミルトン メルセデス 1:35:56.497
ポールポジション ルイス・ハミルトン メルセデス 1:19.149
2016 優勝 マックス・フェルスタッペン レッドブル・タグホイヤー 1:41:40.017
ポールポジション ルイス・ハミルトン メルセデス 1:22.000
2015 優勝 ニコ・ロズベルグ メルセデス 1:41:12.555
ポールポジション ニコ・ロズベルグ メルセデス 1:24.681
2014 優勝 ルイス・ハミルトン メルセデス 1:41:05.155
ポールポジション ルイス・ハミルトン メルセデス 1:25.232
2013 優勝 フェルナンド・アロンソ フェラーリ 1:39:16.596
ポールポジション ニコ・ロズベルグ メルセデス 1:20.718
2012 優勝 パストール・マルドナド ウイリアムズ・ルノー 1:39:09.145
ポールポジション パストール・マルドナド ウイリアムズ・ルノー 1:22.285
2011 優勝 セバスチャン・ベッテル レッドブル・ルノー 1:39:03.301
ポールポジション マーク・ウェバー レッドブル・ルノー 1:20.981
2010 優勝 マーク・ウェバー レッドブル・ルノー 1:35:44.101
ポールポジション マーク・ウェバー レッドブル・ルノー 1:19.995
2009 優勝 ジェンソン・バトン ブラウン・メルセデス 1:37:19.202
ポールポジション ジェンソン・バトン ブラウン・メルセデス 1:20.527
2008 優勝 キミ・ライコネン フェラーリ 1:38:19.051
ポールポジション キミ・ライコネン フェラーリ 1:21.813
2007 優勝 フェリペ・マッサ フェラーリ 1:31:36.230
ポールポジション フェリペ・マッサ フェラーリ 1:21.421
2006 優勝 フェルナンド・アロンソ ルノー 1:26:21.759
ポールポジション フェルナンド・アロンソ ルノー 1:14.648
2005 優勝 キミ・ライコネン マクラーレン・メルセデス 1:27:16.830
ポールポジション キミ・ライコネン マクラーレン・メルセデス 2:31.421
2004 優勝 ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:27:32.841
ポールポジション ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:15.022
2003 優勝 ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:33:46.933
ポールポジション ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:17.762
2002 優勝 ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:30:29.981
ポールポジション ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:16.364
2001 優勝 ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:31:03.305
ポールポジション ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:18.201
2000 優勝 ミカ・ハッキネン マクラーレン・メルセデス 1:33:55.390
ポールポジション ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:18.201
1999 優勝 ミカ・ハッキネン マクラーレン・メルセデス 1:34:13.665
ポールポジション ミカ・ハッキネン マクラーレン・メルセデス 1:22.088
1998 優勝 ミカ・ハッキネン マクラーレン・メルセデス 1:33:37.621
ポールポジション ミカ・ハッキネン マクラーレン・メルセデス 1:20.262
1997 優勝 ジャック・ヴィルヌーヴ ウイリアムズ・ルノー 1:30:35.896
ポールポジション ジャック・ヴィルヌーヴ ウイリアムズ・ルノー 1:16.525
1996 優勝 ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:59:49.307
ポールポジション デーモン・ヒル ウイリアムズ・ルノー 1:20.650
1995 優勝 ミハエル・シューマッハ ベネトン・ルノー 1:34:20.507
ポールポジション ミハエル・シューマッハ ベネトン・ルノー 1:21.452
1994 優勝 デーモン・ヒル ウイリアムズ・ルノー 1:36:14.374
ポールポジション ミハエル・シューマッハ ベネトン・フォード 1:21.908
1993 優勝 アラン・プロスト ウイリアムズ・ルノー 1:32:27.685
ポールポジション アラン・プロスト ウイリアムズ・ルノー 1:17.809
1992 優勝 ナイジェル・マンセル ウイリアムズ・ルノー 1:56:10.674
ポールポジション ナイジェル・マンセル ウイリアムズ・ルノー 1:20.190
1991 優勝 ナイジェル・マンセル ウイリアムズ・ルノー 1:38:41.541
ポールポジション ゲルハルト・ベルガー マクラーレン・ホンダ 1:18.751

サーキットの場所と航空写真

余談だが、サーキットの形が「ゴリラが両腕を上に上げて”ウホッ”と吠えている」ように見えることから、我々は「ゴリラ・サーキット」と呼んでいる。

写真

カタロニア・サーキット(F1スペインGP)のピットロード、2021年5月11日Courtesy Of Alfa Romeo Racing

カタロニア・サーキット(F1スペインGP)のピットロード、2021年5月11日

カタロニア・サーキット(F1スペインGP)のホームストレートを走行するアルファロメオのロバート・クビサ、2021年5月11日Courtesy Of Alfa Romeo Racing

カタロニア・サーキット(F1スペインGP)のホームストレートを走行するアルファロメオのロバート・クビサ、2021年5月11日

カタロニア・サーキットのピットレーンからコースに合流するアルピーヌのエステバン・オコン、2021年5月7日F1スペインGPにてCourtesy Of Alpine Racing

カタロニア・サーキットのピットレーンからコースに合流するアルピーヌのエステバン・オコン、2021年5月7日F1スペインGPにて

カタロニア・サーキットのピット入り口付近、2021年5月7日F1スペインGPのフリー走行にてCourtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

カタロニア・サーキットのピット入り口付近、2021年5月7日F1スペインGPのフリー走行にて

改修されたカタロニア・サーキットのターン10、2021年5月6日F1スペインGPにてCourtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

改修されたカタロニア・サーキットのターン10、2021年5月6日F1スペインGPにて

曇り空のカタロニア・サーキットを走行する33号車レッドブル・ホンダRB15、2019年F1スペインGPフリー走行3copyright Red Bull Content Pool

曇り空のカタロニア・サーキットを走行する33号車レッドブル・ホンダRB15、2019年F1スペインGPフリー走行3