ジル・ビルヌーブ・サーキットのターン1、2019年カナダGP決勝レースにて
Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

ジル・ビルヌーブ・サーキット

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サーキットデータ
サーキット名ジル・ヴィルヌーヴ・サーキット
所在国カナダ
住所Parc Jean-Drapeau, Montréal, QC H3C 6A1, Canada
設立年1978年
全長 / コーナー数4,361m / 14
最大高低差5m
周回数70
ピット長 / 損失時間405m / 18秒
ターン1までの距離*1163m
平均速度200.997km/h
最高速度342km/h
エンジン負荷と全開率*2 69%
ブレーキ負荷と使用率 16%
燃料消費レベルと量 1.50kg/周
フューエル・エフェクト 0.32秒/10kg
タイヤ負荷レベル
ダウンフォースレベル
グリップレベル
変速回数50回/周
SC導入率60%
ウェット確率5%
WEBサイト www.circuitgillesvilleneuve.ca
SNS instagram

*1 ポールポジションから最初の制動地点までの距離
*2 全開率は距離ではなくタイムベースで算出

ジル・ビルヌーブ・サーキット(英:Circuit Gilles Villeneuve)とは、カナダはケベック州モントリオールのセント・ローレンス川にある人工島に作られたサーキットの事。F1カナダGPの舞台であり、初開催は1978年と古い。名前の由来はもちろん、伝説的F1ドライバーのジル・ヴィルヌーヴだ。

ジル・ビルヌーブ・サーキットから臨むセント・ローレンス川Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

ジル・ビルヌーブ・サーキットから臨むセント・ローレンス川

もともとは場所の名を取って「サーキット・イル・ノートルダム」と呼ばれていたが、地元の英雄、ジル・ヴィルヌーヴが1982年に事故死したことを受け名称が変更された。スタートライン上には”Salut Gilles”(やあ、ジル)とペイントされている。

この人工島は1967年のモントリオール万博の際に埋め立て造成されたもので、その後、公園及びサーキット会場として再開発が行われた。

ジル・ビルヌーブ・サーキットのホームストレートCourtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

ジル・ビルヌーブ・サーキットのホームストレートに描かれた”Salut Gilles”のペイント

コースレイアウト

ジル・ビルヌーヴ・サーキットは長いストレートと深く切れ込んだコーナーの組み合わせが特徴の典型的なストップ・アンド・ゴー型のサーキットで、速度域が似通ったコーナーで直線区間が繋げられているという点で、F1アゼルバイジャンGPの舞台、バクー市街地コースとの類似性が認められる。

ジル・ビルヌーブ・サーキット(F1カナダGP)のコースレイアウト図

ジル・ビルヌーブ・サーキット(F1カナダGP)のコースレイアウト図

殆どのコーナーが左右、または右左の連続コーナーとして構成されている点はバクーとは異なる。つまりクルマには高い反応性が要求されるという事だ。

トラクションの高さとブレーキング時のスタビリティー、エンジンパワーが勝利の鍵となる。ブレーキへの負荷はアルバート・パークと並ぶ程に厳しい。ただし冷却のために費やせる時間が長いため、負荷レベルを思えばブレーキトラブルは少ないとも言える。

最高速を記録するのは13コーナー手前で、F1マシンは8速340km/hほどでここを駆け抜ける。次に速いのはホームストレートエンドで8速320km/h。一方最も低速になるのは10コーナーのヘアピンで2速57km/h、次いで2コーナーの2速75km/hである。

チャンピオンズ・ウォール

名物はターン13・14から構成された最終シケインだ。ここはF1サーキットの中でも最難関の一つとして知られており、下手に縁石に乗ってしまうとアウト側のコンクリートウォールに激突してしまう。

これまでに幾多もの歴代F1王者たちがクラッシュを喫した歴史から、「チャンピオンの壁=Wall of the Champions」と呼ばれ恐れられている。と同時に、ここをお気に入りのコーナーに挙げるドライバーも多い。

ジル・ビルヌーブ・サーキットのチャンピオンズウォールに接触し、砂煙を上げながらスピンするハースのケビン・マグヌッセンCourtesy Of Haas F1 Team

ジル・ビルヌーブ・サーキットのチャンピオンズウォールに接触し、砂煙を上げながらスピンするハースのケビン・マグヌッセン

1999年のグランプリでは、地元の英雄ジャック・ビルヌーブやミハエル・シューマッハ、デイモン・ヒルらチャンピオン経験者がウォールの餌食に。その後もセバスチャン・ベッテルやジェンソン・バトンらが、チャンピオンズ・ウォールの前にひれ伏した。

特徴

ロスタイムが少ないピットイン

ピットレーンの長さは約404mと、カレンダーの中で長い部類に入るものの、ピットストップによるロスタイムは少ない。それはピットレーンの配置に理由がある。

ドライバーは最終シケインを通る事なく、直接ピットレーンに入ることができる。更にピット出口がターン2の手前に接続されているため、ターン1を通る必要もない。

ジル・ビルヌーブ・サーキットのピットレーンを歩くレッドブル・ホンダのピエール・ガスリーcopyright Red Bull Content Pool

ジル・ビルヌーブ・サーキットのピットレーンを歩くレッドブル・ホンダのピエール・ガスリー

オーバーテイクが容易

カナダグランプリは、そのトラックレイアウト故にオーバーテイクのチャンスが多く、過去これまでに幾度となく壮大なレースの舞台となってきた。基本的にはストレートとシケインのみで構成されているため、スリップストリームを得て最高速を伸ばす事が可能であり、ビッグブレーキングによって先行車を交わす事が出来る。

最大のパスポイントは最後コーナー手前のターン13。ヘアピン(ターン10)から続く長い直線区間が後続車の空気抵抗を減らし、トップスピードを上乗せする。例えターン13でパス出来なくとも、続くターン1のブレーキキングで交わす事もできる。

オーバーテイク リタイヤ
通常 DRS 接触 機械的問題
2022年 9回 25回 1台 2台
2019年 1回 27回 1台 1台

路面が非常にスムーズな割には、伝統的にタイヤのデグラデーションは高い。

コースレコード

コース特性こそ異なるが、モントリオールのレコードタイムはモナコGPの舞台、モンテカルロ市街地コースとほぼ同じだ。

コースレコード

タイム ドライバー チーム
ラップレコード 1:10.240 セバスチャン・ベッテル フェラーリ 2019年
コースレコード 1:13.078 バルテリ・ボッタス メルセデス 2019年

F1史上最長レース

2011年のカナダGPの決勝レースは、4時間4分39秒54に渡るF1史上最も長い時間を記録したグランプリである。雨の降る激闘を制したのは予選7番手のジェンソン・バトンであったが、この時バトンがリードラップを刻んだのは、最終ラップの僅か1周のみであった。

雨のためセーフティーカー先導でスタートした決勝では、序盤にルイス・ハミルトンがチームメイトのバトンに接触しリタイヤ、37周目にはフェルナンド・アロンソがバトンと接触しこれまたリタイヤと、バトンが優勝するなどとは誰もが考えていなかった。バトンは、ハミルトンとのインシデントではドライブスルー・ペナルティを受け、40周目には最後尾に後退していた。

ファイナル・ラップでレースをリードしていたのはセバスチャン・ベッテル。このままベッテルの優勝かと思われたが、終盤に驚異的な追い上げを見せたバトンのプレッシャー故か、1コーナーでまさかのスピン、バトンが劇的な勝利を収めた。

佐藤琢磨がアロンソをオーバーテイク!

小学校の教科書にでてきてもおかしくないレベルだが、日本人であれば2007年のカナダGPは非常に思い出深いシーズンだ。弱小スーパー・アグリの佐藤琢磨が、マクラーレンのフェルナンド・アロンソを追い上げオーバーテイクしたシーンは実に印象的であった。

サーキットの場所と地図

人工島というよりもむしろ川の中?

F1カナダGP歴代ウィナーとポールシッター

ジル・ビルヌーブ・サーキットで開催されたF1カナダGPの歴代勝者とポールシッター。モスポート・パークとモントランブラン・サーキットでの開催は含まれない。

開催年 ドライバー チーム タイム
2022 優勝 マックス・フェルスタッペン レッドブルRBPT 1:36:21.757
ポールポジション マックス・フェルスタッペン レッドブルRBPT 1:21.299
2021 コロナ禍で中止
2020 コロナ禍で中止
2019 優勝 ルイス・ハミルトン メルセデス 1:29:07.084
ポールポジション セバスチャン・ベッテル フェラーリ 1:10.240
2018 優勝 セバスチャン・ベッテル フェラーリ 1:28:31.377
ポールポジション セバスチャン・ベッテル フェラーリ 1:10.764
2017 優勝 ルイス・ハミルトン メルセデス 1:33:05.154
ポールポジション ルイス・ハミルトン メルセデス 1:11.459
2016 優勝 ルイス・ハミルトン メルセデス 1:31:05.296
ポールポジション ルイス・ハミルトン メルセデス 1:12.812
2015 優勝 ルイス・ハミルトン メルセデス 1:31:53.145
ポールポジション ルイス・ハミルトン メルセデス 1:14.393
2014 優勝 ダニエル・リカルド レッドブル・ルノー 1:39:12.830
ポールポジション ニコ・ロズベルグ メルセデス 1:14.874
2013 優勝 セバスチャン・ベッテル レッドブル・ルノー 1:32:09.143
ポールポジション セバスチャン・ベッテル レッドブル・ルノー 1:25.425
2012 優勝 ルイス・ハミルトン メルセデス 1:32:29.586
ポールポジション セバスチャン・ベッテル レッドブル・ルノー 1:13.784
2011 優勝 ジェンソン・バトン マクラーレン・メルセデス 4:04:39.537
ポールポジション セバスチャン・ベッテル レッドブル・ルノー 1:13.014
2010 優勝 ルイス・ハミルトン メルセデス 1:33:53.456
ポールポジション ルイス・ハミルトン メルセデス 1:15.105
2008 優勝 ロバート・クビサ BMWザウバー 1:36:24.227
ポールポジション ルイス・ハミルトン メルセデス 1:17.886
2007 優勝 ルイス・ハミルトン メルセデス 1:44:11.292
ポールポジション ルイス・ハミルトン メルセデス 1:15.707
2006 優勝 フェルナンド・アロンソ ルノー 1:34:37.308
ポールポジション フェルナンド・アロンソ ルノー 1:14.942
2005 優勝 キミ・ライコネン マクラーレン・メルセデス 1:32:09.290
ポールポジション ジェンソン・バトン BARホンダ 1:15.217
2004 優勝 ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:28:24.803
ポールポジション ラルフ・シューマッハ ウィリアムズBMW 1:12.275
2003 優勝 ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:31:13.591
ポールポジション ラルフ・シューマッハ ウィリアムズBMW 1:15.529
2002 優勝 ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:33:36.111
ポールポジション ファン・パブロ・モントーヤ ウィリアムズBMW 1:12.836
2001 優勝 ラルフ・シューマッハ ウィリアムズBMW 1:34:31.522
ポールポジション ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:15.782
2000 優勝 ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:41:12.313
ポールポジション ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:18.439
1999 優勝 ミカ・ハッキネン マクラーレン・メルセデス 1:41:35.727
ポールポジション ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:19.298
1998 優勝 ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:40:57.335
ポールポジション デイビッド・クルサード マクラーレン・メルセデス 1:18.213
1997 優勝 ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:17:40.646
ポールポジション ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:18.095
1996 優勝 デイモン・ヒル ウィリアムズ・ルノー 1:36:03.465
ポールポジション デイモン・ヒル ウィリアムズ・ルノー 1:21.059
1995 優勝 ジャン・アレジ フェラーリ 1:44:54.171
ポールポジション ミハエル・シューマッハ ベネトン・ルノー 1:27.661
1994 優勝 ミハエル・シューマッハ ベネトン・フォード 1:44:31.887
ポールポジション ミハエル・シューマッハ ベネトン・フォード 1:26.178
1993 優勝 アラン・プロスト ウィリアムズ・ルノー 1:36:41.822
ポールポジション アラン・プロスト ウィリアムズ・ルノー 1:18.987
1992 優勝 ゲルハルト・ベルガー マクラーレン・ホンダ 1:37:08.299
ポールポジション アイルトン・セナ マクラーレン・ホンダ 1:19.775
1991 優勝 ネルソン・ピケ ベネトン・フォード 1:38:51.490
ポールポジション リカルド・パトレーゼ ウィリアムズ・ルノー 1:19.837
1990 優勝 アイルトン・セナ マクラーレン・ホンダ 1:42:56.400
ポールポジション アイルトン・セナ マクラーレン・ホンダ 1:20.399
1989 優勝 ティエリー・ブーツェン ウィリアムズ・ルノー 2:01:24.073
ポールポジション アラン・プロスト マクラーレン・ホンダ 1:20.973
1988 優勝 アイルトン・セナ マクラーレン・ホンダ 1:39:46.618
ポールポジション アイルトン・セナ マクラーレン・ホンダ 1:21.681
1986 優勝 ナイジェル・マンセル ウィリアムズ・ホンダ 1:42:26.415
ポールポジション ナイジェル・マンセル ウィリアムズ・ホンダ 1:24.118
1985 優勝 ミケーレ・アルボレート フェラーリ 1:46:01.813
ポールポジション エリオ・デ・アンジェリス ロータス・ルノー 1:24.527
1984 優勝 ネルソン・ピケ ブラバムBMW 1:46:23.748
ポールポジション ネルソン・ピケ ブラバムBMW 1:25.442
1983 優勝 ルネ・アルヌー フェラーリ 1:48:31.838
ポールポジション ルネ・アルヌー フェラーリ 1:28.729
1982 優勝 ネルソン・ピケ ブラバムBMW 1:46:39.577
ポールポジション ディディエ・ピローニ フェラーリ 1:27.509
1981 優勝 ジャック・ラフィット リジェ・マトラ 2:01:25.20
ポールポジション ネルソン・ピケ ブラバム・フォード 1:29.211
1980 優勝 アラン・ジョーンズ ウィリアムズ・フォード 1:46:45.53
ポールポジション ネルソン・ピケ ブラバム・フォード 1:27.328
1979 優勝 アラン・ジョーンズ ウィリアムズ・フォード 1:29.892
ポールポジション アラン・ジョーンズ ウィリアムズ・フォード 1:52:06.892
1978 優勝 ジル・ヴィルヌーヴ フェラーリ 1:57:49.19
ポールポジション ジャン=ピエール・ジャリエ ロータス・フォード 1:38.015
1978 優勝 ジル・ヴィルヌーヴ フェラーリ 1:57:49.19

画像

2019年にピットとパドックが大幅に改修された。

ジル・ビルヌーブ・サーキットのターン10Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

ジル・ビルヌーブ・サーキットのターン10

ジル・ビルヌーブ・サーキットを走るトロロッソ・ホンダSTR13、2018年F1カナダGPにてCourtesy Of Honda

ジル・ビルヌーブ・サーキットを走るトロロッソ・ホンダSTR13、2018年F1カナダGPにて

ジル・ビルヌーブ・サーキットのコントロールタワーとスタートラインCourtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

ジル・ビルヌーブ・サーキットのコントロールタワーとスタートライン

スタート直後のターン1に飛び込むF1マシン、2019年カナダGP決勝レースにてCourtesy Of Red Bull Content Pool

スタート直後のターン1に飛び込むF1マシン、2019年カナダGP決勝レースにて

バルテリ・ボッタスとピエール・ガスリーとニコ・ヒュルケンベルグとランド・ノリス、F1カナダGP決勝レースにてCourtesy Of Red Bull Content Pool

バルテリ・ボッタスとピエール・ガスリーとニコ・ヒュルケンベルグとランド・ノリス、F1カナダGP決勝レースにて