ジル・ビルヌーブ・サーキットのターン1・2、2023年6月16日F1カナダGPフリー走行
Courtesy Of Alfa Romeo Racing

ジル・ビルヌーブ・サーキット

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サーキットデータ
サーキット名ジル・ヴィルヌーヴ・サーキット
所在国カナダ
住所Parc Jean-Drapeau, Montréal, QC H3C 6A1, Canada
設立年1978年
全長 / コーナー数4,361m / 14
最大高低差5m
周回数70
ピット長 / 損失時間405m / 18秒
ターン1までの距離*1163m
平均速度200.997km/h
最高速度342km/h
エンジン負荷と全開率*2 59%
ブレーキ負荷と使用率 16%
燃料消費レベルと量 1.50kg/周
フューエル・エフェクト 0.32秒/10kg
タイヤ負荷レベル
ダウンフォースレベル
グリップレベル
変速回数50回/周
SC導入率60%
ウェット確率20%
WEBサイト www.circuitgillesvilleneuve.ca
SNS instagram

*1 ポールポジションから最初の制動地点までの距離
*2 全開率は距離ではなくタイムベースで算出

ジル・ビルヌーブ・サーキット(英:Circuit Gilles Villeneuve)とは、カナダはケベック州モントリオールのセント・ローレンス川にある人工島に作られたサーキットの事。F1カナダGPの舞台であり、初開催は1978年と古い。名前の由来はもちろん、地元出身の伝説的F1ドライバーのジル・ヴィルヌーヴだ。

ジル・ビルヌーブ・サーキットから臨むセント・ローレンス川Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

ジル・ビルヌーブ・サーキットから臨むセント・ローレンス川

もともとは場所の名を取って「サーキット・イル・ノートルダム」と呼ばれていたが、地元の英雄、ジル・ヴィルヌーヴが1982年に事故死したことを受け名称が変更された。スタートライン上には”Salut Gilles”(やあ、ジル)とペイントされている。

この人工島は1967年のモントリオール万博の際に埋め立て造成されたもので、その後、公園及びサーキット会場として再開発が行われた。

ジル・ビルヌーブ・サーキットのホームストレートCourtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

ジル・ビルヌーブ・サーキットのホームストレートに描かれた”Salut Gilles”のペイント

コースレイアウト

ジル・ビルヌーヴ・サーキットは長いストレートと深く切れ込んだコーナーの組み合わせが特徴の典型的なストップ・アンド・ゴー型のサーキットで、速度域が似通ったコーナーで直線区間が繋げられているという点で、F1アゼルバイジャンGPの舞台、バクー市街地コースとの類似性が認められる。

ジル・ビルヌーブ・サーキット(F1カナダGP)のコースレイアウト図

ジル・ビルヌーブ・サーキット(F1カナダGP)のコースレイアウト図

殆どのコーナーが左右、または右左の連続コーナーとして構成されている点はバクーとは異なる。つまりクルマには高い反応性が要求されるという事だ。

トラクションの高さとブレーキング時のスタビリティー、エンジンパワーが勝利の鍵となる。ブレーキへの負荷はアルバート・パークと並ぶ程に厳しい。ただし冷却に費やせる時間が長いため、負荷レベルを思えばブレーキトラブルは少ないとも言える。

最高速を記録するのは13コーナー手前で、F1マシンは8速340km/hほどでここを駆け抜ける。次に速いのはホームストレートエンドで8速320km/h。一方最も低速になるのは10コーナーのヘアピンで2速57km/h、次いで2コーナーの2速75km/hである。

チャンピオンズ・ウォール

名物はターン13・14から構成される最終シケインだ。ここはF1サーキットの中でも最難関の一つとして知られており、下手に縁石に乗ってしまうとアウト側のコンクリートウォールに激突してしまう。

これまでに幾多もの歴代F1王者たちがクラッシュを喫した歴史から、「チャンピオンの壁=Wall of the Champions」と呼ばれ恐れられている。と同時に、ここをお気に入りのコーナーに挙げるドライバーも多い。

ジル・ビルヌーブ・サーキットのチャンピオンズウォールに接触し、砂煙を上げながらスピンするハースのケビン・マグヌッセンCourtesy Of Haas F1 Team

ジル・ビルヌーブ・サーキットのチャンピオンズウォールに接触し、砂煙を上げながらスピンするハースのケビン・マグヌッセン

1999年のグランプリでは、地元の英雄ジャック・ビルヌーブやミハエル・シューマッハ、デイモン・ヒルらチャンピオン経験者がウォールの餌食に。その後もセバスチャン・ベッテルやジェンソン・バトンらが、チャンピオンズ・ウォールの前にひれ伏した。

特徴

ロスタイムが少ないピットイン

ピットレーンの長さは約404mと、カレンダーの中で長い部類に入るものの、ピットストップによるロスタイムは少ない。それはピットレーンの配置に理由がある。

ドライバーは最終シケインを通る事なく、直接ピットレーンに入ることができる。更にピット出口がターン2の手前に接続されているため、ターン1を通る必要もない。

ジル・ビルヌーブ・サーキットのピットレーンを歩くレッドブル・ホンダのピエール・ガスリーcopyright Red Bull Content Pool

ジル・ビルヌーブ・サーキットのピットレーンを歩くレッドブル・ホンダのピエール・ガスリー

オーバーテイクが容易

カナダグランプリは、そのトラックレイアウト故にオーバーテイクのチャンスが多く、過去これまでに幾度となく壮大なレースの舞台となってきた。基本的にはストレートとシケインのみで構成されているため、スリップストリームを得て最高速を伸ばす事が可能であり、ビッグブレーキングによって先行車を交わす事が出来る。

最大のパスポイントは最後コーナー手前のターン13。ヘアピン(ターン10)から続く長い直線区間が後続車の空気抵抗を減らし、トップスピードを上乗せする。例えターン13でパス出来なくとも、続くターン1のブレーキキングで交わす事もできる。

オーバーテイク リタイヤ
通常 DRS 接触 機械的問題
2023年 5回 12回 0台 2台
2022年 9回 25回 1台 2台
2019年 1回 27回 1台 1台

路面が非常にスムーズな割には、伝統的にタイヤのデグラデーションは高い。

コースレコード

コース特性こそ異なるが、モントリオールのレコードタイムはモナコGPの舞台、モンテカルロ市街地コースとほぼ同じだ。

タイム ドライバー チーム
ラップレコード 1:10.240 セバスチャン・ベッテル フェラーリ 2019年
コースレコード 1:13.078 バルテリ・ボッタス メルセデス 2019年

F1史上最長レース

2011年のカナダGPの決勝レースは、4時間4分39秒537に渡るF1史上最も長い時間を記録したグランプリである。雨の降る激闘を制したのは予選7番手のジェンソン・バトンであったが、この時バトンがリードラップを刻んだのは、最終ラップの僅か1周のみであった。

雨のためセーフティーカー先導でスタートした決勝では、序盤にルイス・ハミルトンがチームメイトのバトンに接触しリタイヤ、37周目にはフェルナンド・アロンソがバトンと接触しこれまたリタイヤと、バトンが優勝するなどとは誰もが考えていなかった。バトンは、ハミルトンとのインシデントではドライブスルー・ペナルティを受け、40周目には最後尾に後退していた。

ファイナル・ラップでレースをリードしていたのはセバスチャン・ベッテル。このままベッテルの優勝かと思われたが、終盤に驚異的な追い上げを見せたバトンのプレッシャー故か、1コーナーでまさかのスピン、バトンが劇的な勝利を収めた。

佐藤琢磨がアロンソをオーバーテイク!

小学校の教科書にでてきてもおかしくないレベルだが、日本人であれば2007年のカナダGPは非常に思い出深いシーズンだ。弱小スーパー・アグリの佐藤琢磨が、マクラーレンのフェルナンド・アロンソを追い上げオーバーテイクしたシーンは実に印象的であった。

チームメイトのアンソニー・デビッドソンはウッドチャックに衝突。フロントウイングの交換のために追加のピットストップを強いられ、スーパー・アグリはダブルポイントを逃した。

モントリオールの中洲に作られた人工島には数々の野生動物が生息しており、レース中にしばしばその姿を見せる。マーモットの1種であるウッドチャックはその中でも特に有名だ。

2018年にはフリー走行中にハースのロマン・グロージャンがウッドチャックとぶつかった。ノーズは激しく損傷し、バージボードやフロントウイングにもダメージが及んだ。

サーキットの場所と地図

人工島というよりもむしろ川の中?

F1カナダGP歴代ウィナーとポールシッター

ジル・ビルヌーブ・サーキットで開催されたF1カナダGPの歴代勝者とポールシッター。モスポート・パークとモントランブラン・サーキットでの開催は含まれない。

2024年の予選ではマックス・フェルスタッペン(レッドブル)と1000分の1秒まで同タイムの1分12秒000を刻んだジョージ・ラッセル(メルセデス)がキャリア2度目のポールポジションを獲得した。

F1のラップタイムが小数点第3位まで計測されるようになって以降、ポールポジションタイムが同一となったのは、ヘレス・サーキットで行われた1997年のF1ヨーロッパGPを含めて2回しか存在しない。当時はジャック・ビルヌーブとミハエル・シューマッハ、そしてハインツ=ハラルド・フレンツェンの3名が1分21秒072で並んだ。

開催年 ドライバー チーム タイム
2024 優勝 マックス・フェルスタッペン レッドブル・ホンダRBPT 1:45:47.927
ポールポジション ジョージ・ラッセル メルセデス 1:12.000
2023 優勝 マックス・フェルスタッペン レッドブル・ホンダRBPT 1:33:58.348
ポールポジション マックス・フェルスタッペン レッドブル・ホンダRBPT 1:25.858
2022 優勝 マックス・フェルスタッペン レッドブルRBPT 1:36:21.757
ポールポジション マックス・フェルスタッペン レッドブルRBPT 1:21.299
2021 コロナ禍で中止
2020 コロナ禍で中止
2019 優勝 ルイス・ハミルトン メルセデス 1:29:07.084
ポールポジション セバスチャン・ベッテル フェラーリ 1:10.240
2018 優勝 セバスチャン・ベッテル フェラーリ 1:28:31.377
ポールポジション セバスチャン・ベッテル フェラーリ 1:10.764
2017 優勝 ルイス・ハミルトン メルセデス 1:33:05.154
ポールポジション ルイス・ハミルトン メルセデス 1:11.459
2016 優勝 ルイス・ハミルトン メルセデス 1:31:05.296
ポールポジション ルイス・ハミルトン メルセデス 1:12.812
2015 優勝 ルイス・ハミルトン メルセデス 1:31:53.145
ポールポジション ルイス・ハミルトン メルセデス 1:14.393
2014 優勝 ダニエル・リカルド レッドブル・ルノー 1:39:12.830
ポールポジション ニコ・ロズベルグ メルセデス 1:14.874
2013 優勝 セバスチャン・ベッテル レッドブル・ルノー 1:32:09.143
ポールポジション セバスチャン・ベッテル レッドブル・ルノー 1:25.425
2012 優勝 ルイス・ハミルトン メルセデス 1:32:29.586
ポールポジション セバスチャン・ベッテル レッドブル・ルノー 1:13.784
2011 優勝 ジェンソン・バトン マクラーレン・メルセデス 4:04:39.537
ポールポジション セバスチャン・ベッテル レッドブル・ルノー 1:13.014
2010 優勝 ルイス・ハミルトン メルセデス 1:33:53.456
ポールポジション ルイス・ハミルトン メルセデス 1:15.105
2008 優勝 ロバート・クビサ BMWザウバー 1:36:24.227
ポールポジション ルイス・ハミルトン メルセデス 1:17.886
2007 優勝 ルイス・ハミルトン メルセデス 1:44:11.292
ポールポジション ルイス・ハミルトン メルセデス 1:15.707
2006 優勝 フェルナンド・アロンソ ルノー 1:34:37.308
ポールポジション フェルナンド・アロンソ ルノー 1:14.942
2005 優勝 キミ・ライコネン マクラーレン・メルセデス 1:32:09.290
ポールポジション ジェンソン・バトン BARホンダ 1:15.217
2004 優勝 ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:28:24.803
ポールポジション ラルフ・シューマッハ ウィリアムズBMW 1:12.275
2003 優勝 ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:31:13.591
ポールポジション ラルフ・シューマッハ ウィリアムズBMW 1:15.529
2002 優勝 ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:33:36.111
ポールポジション ファン・パブロ・モントーヤ ウィリアムズBMW 1:12.836
2001 優勝 ラルフ・シューマッハ ウィリアムズBMW 1:34:31.522
ポールポジション ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:15.782
2000 優勝 ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:41:12.313
ポールポジション ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:18.439
1999 優勝 ミカ・ハッキネン マクラーレン・メルセデス 1:41:35.727
ポールポジション ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:19.298
1998 優勝 ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:40:57.335
ポールポジション デイビッド・クルサード マクラーレン・メルセデス 1:18.213
1997 優勝 ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:17:40.646
ポールポジション ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:18.095
1996 優勝 デイモン・ヒル ウィリアムズ・ルノー 1:36:03.465
ポールポジション デイモン・ヒル ウィリアムズ・ルノー 1:21.059
1995 優勝 ジャン・アレジ フェラーリ 1:44:54.171
ポールポジション ミハエル・シューマッハ ベネトン・ルノー 1:27.661
1994 優勝 ミハエル・シューマッハ ベネトン・フォード 1:44:31.887
ポールポジション ミハエル・シューマッハ ベネトン・フォード 1:26.178
1993 優勝 アラン・プロスト ウィリアムズ・ルノー 1:36:41.822
ポールポジション アラン・プロスト ウィリアムズ・ルノー 1:18.987
1992 優勝 ゲルハルト・ベルガー マクラーレン・ホンダ 1:37:08.299
ポールポジション アイルトン・セナ マクラーレン・ホンダ 1:19.775
1991 優勝 ネルソン・ピケ ベネトン・フォード 1:38:51.490
ポールポジション リカルド・パトレーゼ ウィリアムズ・ルノー 1:19.837
1990 優勝 アイルトン・セナ マクラーレン・ホンダ 1:42:56.400
ポールポジション アイルトン・セナ マクラーレン・ホンダ 1:20.399
1989 優勝 ティエリー・ブーツェン ウィリアムズ・ルノー 2:01:24.073
ポールポジション アラン・プロスト マクラーレン・ホンダ 1:20.973
1988 優勝 アイルトン・セナ マクラーレン・ホンダ 1:39:46.618
ポールポジション アイルトン・セナ マクラーレン・ホンダ 1:21.681
1986 優勝 ナイジェル・マンセル ウィリアムズ・ホンダ 1:42:26.415
ポールポジション ナイジェル・マンセル ウィリアムズ・ホンダ 1:24.118
1985 優勝 ミケーレ・アルボレート フェラーリ 1:46:01.813
ポールポジション エリオ・デ・アンジェリス ロータス・ルノー 1:24.527
1984 優勝 ネルソン・ピケ ブラバムBMW 1:46:23.748
ポールポジション ネルソン・ピケ ブラバムBMW 1:25.442
1983 優勝 ルネ・アルヌー フェラーリ 1:48:31.838
ポールポジション ルネ・アルヌー フェラーリ 1:28.729
1982 優勝 ネルソン・ピケ ブラバムBMW 1:46:39.577
ポールポジション ディディエ・ピローニ フェラーリ 1:27.509
1981 優勝 ジャック・ラフィット リジェ・マトラ 2:01:25.20
ポールポジション ネルソン・ピケ ブラバム・フォード 1:29.211
1980 優勝 アラン・ジョーンズ ウィリアムズ・フォード 1:46:45.53
ポールポジション ネルソン・ピケ ブラバム・フォード 1:27.328
1979 優勝 アラン・ジョーンズ ウィリアムズ・フォード 1:29.892
ポールポジション アラン・ジョーンズ ウィリアムズ・フォード 1:52:06.892
1978 優勝 ジル・ヴィルヌーヴ フェラーリ 1:57:49.19
ポールポジション ジャン=ピエール・ジャリエ ロータス・フォード 1:38.015
1978 優勝 ジル・ヴィルヌーヴ フェラーリ 1:57:49.19

画像

2019年にピットとパドックが大幅に改修された。

ジル・ビルヌーブ・サーキットのターン10Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

ジル・ビルヌーブ・サーキットのターン10

ジル・ビルヌーブ・サーキットを走るトロロッソ・ホンダSTR13、2018年F1カナダGPにてCourtesy Of Honda

ジル・ビルヌーブ・サーキットを走るトロロッソ・ホンダSTR13、2018年F1カナダGPにて

ジル・ビルヌーブ・サーキットのコントロールタワーとスタートラインCourtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

ジル・ビルヌーブ・サーキットのコントロールタワーとスタートライン

スタート直後のターン1に飛び込むF1マシン、2019年カナダGP決勝レースにてCourtesy Of Red Bull Content Pool

スタート直後のターン1に飛び込むF1マシン、2019年カナダGP決勝レースにて

バルテリ・ボッタスとピエール・ガスリーとニコ・ヒュルケンベルグとランド・ノリス、F1カナダGP決勝レースにてCourtesy Of Red Bull Content Pool

バルテリ・ボッタスとピエール・ガスリーとニコ・ヒュルケンベルグとランド・ノリス、F1カナダGP決勝レースにて