ロウズヘアピンを走行するレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン、2021年F1モナコGPにてCourtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

モンテカルロ市街地コース

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サーキットデータ

名前 モンテカルロ市街地コース
所在国 モナコ
設立年 1929年
全長 3,340m | 18コーナー
周回数 78周 | 時計回り
ピットレーン長 323m| 16.4秒
ターン1までの距離*1 114m
平均速度 150km/h
最高速度 291.7km/h
エンジン負荷*2 | 全開率 : 45%
ブレーキ負荷 | 使用率 : 22%
燃料消費量 | 1.35kg/周
フューエル・エフェクト | 0.27秒/10kg
タイヤ負荷
グリップレベル
エアロ重要度
セーフティーカー出動率 80%
ウェット確率 8%
最大高低差 42m
収容人数 120,000人
WEBサイト www.acm.mc
SNS instagram

*1 ポールポジションから最初の制動地点までの距離
*2 全開率は距離ではなくタイムベースで算出

モンテカルロ市街地コースとは、フランス南部にあるモナコ公国の4つの地区の中の一つであるモンテカルロに仮設されるストリートサーキットで、世界三大レースの一つに数えられるF1モナコGPの舞台。モナコ・ヒストリックとフォーミュラE選手権E-Prixでも使用される。

普段はカジノやヨットハーバー、高級ブランド店が軒を連ね、世界中のセレブたちが訪れる優雅な街だが、5月のレース期間中は2車線の一般道路の脇に頑丈なガードレールが設置され、世界一の難コースに姿を変える。レース後3週間でそれらは完全に撤去される。

2001年F1モナコGPフェラーリのミハエル・シューマッハ
©F1

F1モナコGPを主催するのはオートモービル・クラブ・デ・モナコ(ACM / モナコ自動車クラブ)だ。組織の将来性を確保を求めて国際自動車連盟(FIA)への加盟を望んだACMは、モータースポーツ統括団体としての実績を挙げるため、1929年4月14日にモナコGPを初開催した。

狭い市街地でのレースだけに、安全対策は欠かせない。グランプリ週末には計650名ものマーシャルが駆り出され、120名の消防士がコース脇に待機、15mおきに計800個もの消化器が配置される。

コースレイアウト

コース幅が狭い事に加えてランオフエリアが殆どないため、一瞬のミスが大きなアクシデントに繋がるため、他のサーキットと比べてより高い集中力が要求される。

F1モナコGPが開催されるモンテカルロ市街地コースのコースレイアウト2021年版

最高速度は290km/hで、モンツァの350km/hと比べて圧倒的に低く、8速ギアが使われる事はないが、F1としては珍しく1速が使用される。なお平均速度は時速130kmと、F1カレンダーの中で最も遅い。

1速ギアが使われるのはF1カレンダーの中で最も遅いコーナーであるターン6(ロウズ・ヘアピン)。180度のステアリングロックが必要となるためドライバーの腕は交差する。その結果、意図せずにステアリング上のボタンやロータリーを操作してしまう恐れがあるため、その対策としてチームはモナコGPでステアリングホイールに特殊なガードを設置する。

モンテカルロ市街地コースのローズヘアピンを駆け抜けるF1マシン、2019年F1モナコGP決勝レースにてCourtesy Of Red Bull Content Pool

ロウズヘアピンを駆け抜けるF1マシン、2019年F1モナコGP決勝レースにて

70秒強の1周の中で約25回のアップシフトと25回のダウンシフトが行われる。ステアリングホイールのシフトランプや耳元でのビープ音がドライバーにシフトタイミングを告げる。F1カレンダーの中で最もギアチェンジの回数が多いのはバクー市街地サーキットで、その数は70回に及ぶ。

ターン6やターン8(ポルティエ)を始めとしてブレーキングは難く、その後に続くエンジン全開区間のトンネル内では、アイルトン・セナやミハエル・シューマッハと言った多くの偉大なドライバーがレースを終えた。

カタロニアの第3セクターとの類似性

その類似性から、スペインGPの舞台、カタロニア・サーキットの第3セクターで速いマシンがモンテカルロでも速い傾向がある。

チームは低速のモンテカルロに対して最大レベルのダウンフォースパッケージを持ち込む。

コース変更

1955年以降ほとんど変わらないままのレイアウトでレースが行われている。大規模な改修は2003年と04年。2003年の改修では狭すぎるピットエリアの拡張のために13コーナーから18コーナーまでを海側に移動、2004年にはラスカス・コーナーに改修が加えられ、以前よりも緩やかな形状に変化した。

特徴的なコーナー名

モナコの各コーナーには様々な呼び名があり、多くのファン、ドライバー、関係者がいかにこのサーキットを愛しているのかがよく分かる。主だった有名コーナーを以下に紹介しよう。

1979年ロウズ・ヘアピンを走るジョディー・シェクターとニキ・ラウダ、ジル・ビルヌーブ。レースはシェクターが制した。
©formula1.com ロウズ・ヘアピン(1979年F1モナコGP)

困難なオーバーテイク

「絶対に抜けない」と形容されるほどオーバーテイクは困難で、予選結果が決定的に重要だ。

その一方、決勝レースでのセーフティーカー出動確率は極めて高く、レース戦略と素早いピット判断が順位を大幅に入れ替える事も多々ある。

オーバーテイク リタイヤ
通常 DRS 接触 機械的問題
2015年 2回 1回 1台 2台
2016年 21回 0回 7台 0台
2017年 6回 0回 4台 1台
2018年 21回 30回 1台 2台
2019年 4回 1回 0台 1台
2020年 中止

戦略は1ストッパー

追い抜き困難なモナコのタイヤ戦略は原則的に1ストッパーのみとなる。事故やアクシデントなどの理由でセーフティーカーが導入されれば、全車が一斉にピットになだれ込む。

ポジションアップの鍵はオーバーカットだ。

低速のモナコは原則としてタイヤのデグラデーションが非常に低いため、アンダーカットを機能させる事が難しい。故に、抜けないモナコでライバルを逆転するにはオーバーカットが武器の一つとなる。

コースレコード

決勝レースで計測される史上最速の”ラップレコード”は、2018年にレッドブル・レーシングのマックス・フェルスタッペンが記録した1分14秒260。一方の”コース・レコード”は、翌2019年にメルセデスのルイス・ハミルトンが予選Q3でマークした1分10秒166となっている。

タイム ドライバー チーム
ラップレコード 1:14.260 マックス・フェルスタッペン レッドブル 2018年
コースレコード 1:10.166 ルイス・ハミルトン メルセデス 2019年

誰もが夢見るモナコウィナー

モナコGPは技術的に難しいだけでなく、レーシングドライバーにとっては一生に一度は勝ちたいと願う伝統の一戦だ。

モンテカルロは僅かなミスがウォールの餌食となる程タイトでシビアなコースであり、過去には2件の死亡事故が発生。1952年にはルイジ・ファジオーリがトンネルで、67年にはロレンツォ・バンディーニがヌーベルシケインでそれぞれクラッシュし亡くなっている。

マシンの性能差が現れにくくドライバーの腕・技量が試される事もあり「モナコでの1勝は他での3勝に値する」と言われ、F1カレンダー屈指のドライバーズ・サーキットとして知られている。

モナコGPの勝者は「モナコ・マイスター」と呼ばれ多くの賞賛を集めることになる。モンテカルロでの勝利のためには精密なドライビング、卓越した技術、そして恐れを知らない勇気が求められる。

モナコ公国のアルベール2世大公からトロフィーを受け取るため、モナコGPには表彰台は存在せず、上位3名は貴賓席にて表彰される。

モナコGP最多優勝記録

1993年モナコ・ウィナーのアイルトン・セナ
©mclaren.com 1993年アイルトン・セナ

アイルトン・セナの6回が最多、セナは優勝記録だけでなくモナコGP最多ポールポジション(5回)、最多表彰台記録(8回)も所持している。「Mr.モナコ」と呼ばれたグラハム・ヒルとミハエル・シューマッハが5回優勝、アラン・プロストが4回、スターリング・モスとジャッキー・スチュワートがそれぞれ3回優勝している。セナに次ぐ4回のモナコPP記録を持つファン・マヌエル・ファンジオは2度の優勝を挙げている。

チームとしてモナコで一番勝っているのはマクラーレンの15回。15回の勝利の内10回はセナとプロストによって献上されている。マクラーレンとF1モナコGPの歴史 – セナ、プロストらが挙げた15回の優勝を写真と共に振り返る

モナコ・ヒストリック・グランプリ

2018年の第11回グランプリ・ドゥ・モナコ・ヒストリックの様子

市街地コースの設営に合わせて、2年に一度モナコの2週間前に開催されるヒストリックカー・レースがモナコ・ヒストリック・グランプリ(Grand Prix de Monaco Historique)だ。1997年のモナコ建国700周年を記念して初開催され、2018年に11回目の開催を迎えた。

昔のレースカーを使って開催されるレースとしては英国のグッドウッド・リバイバル・フェスティバルやフランスのル・マン・クラシックなどが知られている。

モナコでは1930年代から1970年代までのレースカーが7つのシリーズに分けられレースを競う。その内の4シリーズはクラシックF1マシンを対象としており、昔のグランプリの雰囲気を楽しむことが出来る。

サーキットの場所

海に隣接しているため、クルーザーやヨットからレースを観戦するファンもいる。ルイス・ハミルトン、ニコ・ロズベルグ、マックス・フェルスタッペン、ニコ・ヒュルケンベルグ、ブレンドン・ハートレー等、モナコ在住のF1ドライバーは数多い。