
アルピーヌF1のポール・アーロン、競合ザウバーからFP1出走へ―イギリス及びハンガリーで異例合意
激戦が繰り広げられるF1の世界で、異例の合意が成立した。現在コンストラクターズ選手権9位につけるザウバーと、最下位に沈むアルピーヌ──立場上は明確なライバル関係にある両チームが、ひとりの若手ドライバーをめぐって手を結んだのだ。
その名は21歳のエストニア人ドライバー、ポール・アローン。今季アルピーヌのF1リザーブドライバーを務める彼が、今週末のF1第12戦イギリスGPと第14戦ハンガリーGPにおいて、ザウバーのマシンで金曜フリー走行(FP1)に出走することが決まった。
2025年のF1レギュレーションは、すべてのチームに対して年間4回、グランプリ参戦経験が2戦以下のルーキードライバーを、金曜フリー走行で起用することを義務づけている。
ザウバーは今季、新人ガブリエル・ボルトレートをレギュラードライバーとして起用しているため、すでに開幕2戦でこの義務の2枠分を消化している。そして残り2枠が今回、アーロンに提供されることとなった。
これとは別に、アローンはアルピーヌからも今季中に3回のFP1出走が予定されており、対象となるグランプリは後日発表される見通しだ。
Courtesy Of Alpine Racing
アルピーヌの2025年仕様レーシングスーツを着用したポール・アーロン、ジャック・ドゥーハン、ピエール・ガスリー、フランコ・コラピント
今回の合意について、アルピーヌのエグゼクティブアドバイザーを務めるフラビオ・ブリアトーレは「若手に可能な限り多くの走行機会を与えることは我々の利益にもなる」と、説明する。
「昨年のF2出身ドライバーたちは今季のF1で成果を残している。ポールもその中で上位を争った一人だ。今回の出走は彼とチーム双方にとって好機であり、貴重な走行経験となるだろう」
アローンは2024年のFIA-F2選手権でランキング3位を獲得し、今季のF1で活躍するボルトレート(年間優勝)、アイザック・ハジャー(年間2位)に次ぐ成績を残した。この実績が評価され、アルピーヌのリザーブ・ドライバーに就任。アブダビで行われた昨年のポストF1シーズンテストで初めてF1マシンをドライブした。
2025年は主にシミュレーター作業を通してアルピーヌF1チームを裏で支えている。また、TPC(旧車テスト)プログラムの一環として、2023年型マシン「A523」を使った6日間にわたるテストにも参加している。
「いつかF1にフル参戦することが僕の夢であることは隠すまでもない。競争力のあるマシンで走れる機会は、どれも重要な経験になる」とアーロンは語る。
「引き続きアルピーヌでの仕事に集中しつつ、シルバーストンとブダペストでのザウバーとのセッションにも全力で取り組みたい」
今回の出走でアローンは、いずれもニコ・ヒュルケンベルグに代わってザウバーC45のステアリングを握る。