
割れた戦略―ノリス5勝で王座争い接近、空力損失の角田17位…ルクレール激怒 / F1ハンガリーGP 2025《決勝》結果と詳報
2025年FIA-F1世界選手権第14戦ハンガリーGPが8月3日、ハンガロリンクで開催され、予選3番手スタートのランド・ノリス(マクラーレン)が、1ストップ戦略を巧みに決めて今季5勝目を飾った。僚友オスカー・ピアストリの猛追をわずか0.698秒差で凌ぎ切る会心の勝利だった。角田裕毅(レッドブル)は17位に沈んだ。
低路面温度がもたらした戦略分断
この日、レースを左右したのはタイヤ戦略だった。路面温度が30℃台前半にとどまったことにより、ミディアム→ハードの1ストップが有利に働いた。対照的に、2ストップを選択したドライバー達は、トラフィックに阻まれ思うように順位を上げられず、総じて順位を落とすかたちとなり、抜けないハンガロリンクの特性が如実に表れる展開となった。
ポールシッターのシャルル・ルクレール(フェラーリ)は序盤をリードするも、19周目のピアストリのピットストップに反応して即座にピットイン。アンダーカットを警戒した判断だったが、これで流れが一変した。両者の動きを受け、ノリスが1ストップに舵を切ったためだ。
ルクレールは第2スティントでもリードを維持したが、41周目、マクラーレンがピアストリに「ボックス(ピットイン)」の無線を送ったその直後にピットイン。2ストップ戦略に切り替えた。
これはマクラーレンの”釣り”だったのだろうか――実際にピアストリが2回目のピットストップを行ったのは、ルクレールの5周後のことだった。ピアストリはルクレールの6秒後方、ノリスの12秒後方でコースに復帰すると、51周目にDRSを活用してターン1でルクレールを鮮やかに攻略。2番手に浮上した。
順位を落としたルクレールは、詳細は不明だが、”レース前にチームに対して警告していたこと”を巡って無線で激怒した。
「ホント、めっちゃムカつくんだけど。競争力を完全に失った。僕の話をちゃんと聞くべきだった。僕だったら、これらの問題に別の方法で対処できたはずなのに。今はもう運転できたものじゃない。表彰台に乗れたら奇跡だよ」
ルクレールはその後、残り9周でジョージ・ラッセル(メルセデス)に交わされ、4位フィニッシュ。ラッセルは3位表彰台を獲得し、旧型リアサスペンションへの回帰が奏功した格好となった。
Courtesy Of McLaren
表彰台に上がる2位オスカー・ピアストリ(マクラーレン)と優勝したランド・ノリス(マクラーレン)、3位のジョージ・ラッセル(メルセデス)、2025年8月3日F1ハンガリーGP決勝レース(ハンガロリンク)
アストンとザウバーが躍進、フェルスタッペンは沈む
アストンマーチンは復調の兆しを見せ、フェルナンド・アロンソが5位、ランス・ストロールが7位とダブル入賞。その間に挟まれたのは、ザウバーのルーキー、ガブリエル・ボルトレート。予選Q3進出に続き、決勝でも堂々の6位入賞と存在感を示した。
マックス・フェルスタッペン(レッドブル)はスタート直後にリアム・ローソン(レーシング・ブルズ)にポジションを奪われるも、2周目のシケイン(ターン6/7)で逆襲。珍しい場所で見事なオーバーテイクを決めると、翌周にはストロールを攻略し、8番手に順位を上げた。
だが、上位10台の中で最も早い18周目のピットインが響いた。アストンマーチン勢、ボルトレート、レーシング・ブルズ勢はこれに反応せず、1ストップ戦略を採用。フェルスタッペンは9位に終わった。
ローソンはフェルスタッペンを抑えて8位、アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)が入賞圏内最後の一枠、10位に滑り込んだ。
角田裕毅、PU交換でピットレーンスタート
角田は決勝に向け、5基目のICE(内燃エンジン)投入を含むパワーユニット交換を実施。パルクフェルメ規定違反により、ピットレーンからスタートした。20周目にソフト、38周目にハードと繋ぐ変則2ストップでレースを戦ったが、終盤に向けてガーニーフラップが脱落。左フロントのダウンフォースを失ったことでターンインに苦しみ、反撃に転じることができず17位でフィニッシュした。
スタートでは、ウィリアムズのカルロス・サインツとアレックス・アルボン、ニコ・ヒュルケンベルグ(ザウバー)の3名がソフトタイヤを選択。序盤の混戦でポジションを上げた。
ヒュルケンベルグは、先陣を切って6周目にミディアムに履き替えたが、その直後、ジャンプスタートの裁定が下され、5秒ペナルティが科されることに。アントネッリと並び、全車最多タイの5ポジションアップを果たしたが、13位に終わった。
唯一のリタイアはオリバー・ベアマン(ハース)。エアロに大きなダメージがあるとチームから告げられ、50周目にガレージへ戻った。
2025年F1第14戦 ハンガリーGP 決勝リザルト
Pos | No | Driver | Team | Laps | Time | PTS |
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1 | 4 | ノリス | マクラーレン | 70 | 1:35:21.231 | 25 |
2 | 81 | ピアストリ | マクラーレン | 70 | +0.698s | 18 |
3 | 63 | ラッセル | メルセデス | 70 | +21.916s | 15 |
4 | 16 | ルクレール | フェラーリ | 70 | +42.560s | 12 |
5 | 14 | アロンソ | アストンマーチン | 70 | +59.040s | 10 |
6 | 5 | ボルトレート | ザウバー | 70 | +66.169s | 8 |
7 | 18 | ストロール | アストンマーチン | 70 | +68.174s | 6 |
8 | 30 | ローソン | レーシングブルズ | 70 | +69.451s | 4 |
9 | 1 | フェルスタッペン | レッドブル | 70 | +72.645s | 2 |
10 | 12 | キミ・アントネッリ | メルセデス | 69 | +1 lap | 1 |
11 | 6 | ハジャー | レーシングブルズ | 69 | +1 lap | 0 |
12 | 44 | ハミルトン | フェラーリ | 69 | +1 lap | 0 |
13 | 27 | ヒュルケンベルグ | ザウバー | 69 | +1 lap | 0 |
14 | 55 | サインツ | ウィリアムズ | 69 | +1 lap | 0 |
15 | 23 | アルボン | ウィリアムズ | 69 | +1 lap | 0 |
16 | 31 | オコン | ハース | 69 | +1 lap | 0 |
17 | 22 | 角田裕毅 | レッドブル | 69 | +1 lap | 0 |
18 | 43 | コラピント | アルピーヌ | 69 | +1 lap | 0 |
19 | 10 | ガスリー | アルピーヌ | 69 | +1 lap | 0 |
NC | 87 | ベアマン | ハース | 48 | DNF | 0 |
コンディション
天気 | 晴れ |
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気温 | 22℃ |
路面温度 | 33℃ |
セッション概要
グランプリ名 | F1ハンガリーGP |
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レース種別 | 決勝 |
レース開始日時 |
サーキット
名称 | ハンガロリンク |
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設立 | 1986年 |
全長 | 4381m |
コーナー数 | 16 |
周回方向 | 時計回り |