
マリーナベイ市街地コース
| サーキット名 | マリーナベイ・ストリート・サーキット |
|---|---|
| 所在国 | シンガポール |
| 住所 | Marina Bay, Singapore |
| 設立年 | 2008年 |
| 設計 | ヘルマン・ティルケ、KBR, Inc. |
| 最大高低差 | 5m |
| 周回数 | 62 |
| ターン1までの距離*1 | 177m |
| 平均速度 | 170km/h |
| 最高速度 | 313km/h |
| 変速回数 | 60回/周 |
| SC導入率 | 100% |
| ウェット確率 | 16% |
| 全長 / コーナー数 | 4,940m / 19 |
| ピット長 / 損失時間*2 | 402m / 25秒 |
| エンジン負荷と全開率*3 | 54% |
| ブレーキ負荷と使用率 | |
| 燃料消費レベルと量 | |
| フューエル・エフェクト | |
| タイヤ負荷レベル | |
| ダウンフォースレベル | |
| グリップレベル | |
| WEBサイト | www.singaporegp.sg |
| SNS | x facebook instagram |
| *1ポールから最初の制動地点までの距離 *2制限速度でのピット通過時間 *3全開率は時間ベース | |
マリーナベイ市街地コース(英:Marina Bay Street Circuit)は、F1シンガポールGPの初開催(2008年)に合わせて設計されたストリートコース。F1史上初となるナイトレースが開催されたサーキットでもある。マリーナベイ・ストリートサーキット、またはシンガポール市街地コースとも呼ばれる。
常設のコースではなく、グランプリ開催に合わせてシンガポールの首都中心部の湾岸地区に特設される。ホームストレート及びピットは、公園の一部を一時的に路面舗装して仮設される。
Courtesy Of Red Bull Content Pool
強烈なライトで照らされたコースのみが明るく浮かび上がる夜のマリーナベイ市街地コース
公道故に全体的にコース幅が狭く、最も狭い橋を渡るセクションは約8m程。バンピーな路面、間近に迫るコンクリートウォール、高温多湿の環境…マリーナベイはマシンにもドライバーにも容赦がない。身体的な過酷さはシーズン最大と言われる。
ストリートサーキットの宿命であるが、少しでもグリップを失えばクラッシュのリスクが大きく高まる。2023年現在、レース中のセーフティーカー出動率は100%に至る。
F1初のナイトレース会場
コース全体が1500以上の照明によって光の道へと姿を変える。開催に際しての最大の問題点は照明設備にあったが、イタリアのヴァレリオ・マイオーリ社による最先端の照明システムは見事にレースを成功へと導いた。同社は、光のぎらつきや濡れた路面、あるいは他のマシンの上げる水しぶきなどの反射を最低限にするために完璧な提案を打ち出した。
Courtesy Of Red Bull Content Pool
マリーナベイ市街地コースでスクーデリア・アルファタウリAT03をドライブするピエール・ガスリー、2022年9月30日F1シンガポールGP
コースを照らす照明設備
- 電源ケーブル10万8,423m
- スチール製パイロン×240基
- 照明プロジェクタ×1,600基
- 総電力318万ワット
- 照度約3,000ルクス(スポーツ競技場の照明の4倍の明るさ)
- 発電機×12基
路面が極めてバンピーであるため、ナイトレースの決勝では、フロアを路面にこすりながら激しく火花を散らすマシンが見られる。また、ドライバーは透明なバイザーでレースに挑む。
何故ナイトレースなのか?
F1の中心地であるヨーロッパ諸国とシンガポールとの時差は7~8時間。レース開始はシンガポール現地時間で20時=ヨーロッパの午後1時~2時。欧州のファンがテレビ観戦しやすい時間にレースが行われる。
コースレイアウト
copyright Formula1 Data
マリーナベイ市街地コース(F1シンガポールGP)のコースレイアウト図(2026年版)
全長4,940mのコースには12個の左コーナーと7つの右コーナーが配される。ストレートモード(SM)ゾーンはカレンダー最多タイの5箇所に設けられる。
特徴
超低速サーキット
時速200kmを超えるコーナーが一つもなく、最長ストレートは僅か832m(5~7コーナー区間)と短く、パワーエフェクトが低いが、それでも最終セクターだけで10箇所ものコーナーが存在した以前のレイアウトよりは高い。
エンジン全開で走行するのはラップタイムの半分程度しかない。これより低いのは、モンテカルロ市街地コースとエルマノス・ロドリゲス・サーキットのみだ。
低速からの加速が頻繁に必要とされるため、フューエル・エフェクト(搭載燃料量がラップタイムに与える影響)はシーズンの中で最も大きい部類に入る。簡単に言えば、クルマの燃料が増えるごとに、1周あたりのタイムロスが大きくなるということだ。
ドライバーとマシンと襲う過酷な環境
高温多湿な熱帯環境とストップ&ゴーというコース特性から、マシンの信頼性だけでなく、ドライバーの神経と体力をすり減らすサーキットだ。
コックピット内の気温は例年、50℃を超える。レースを終えたドライバーの体重は、発汗だけで最大5kg減少することもある。
全体としてグリップが低く、一般道特有のマンホールや白線といった”障害物”がマシンのスリップを誘う状況の中で、ドライバーは一瞬のミスすら許されぬ戦いを強いられる。
特殊な準備とスケジュール
シンガポールGPは例年、ヨーロッパラウンドと隣合わせだ。ドライバーはシンガポールの特殊な環境に適応するために、サウナを使ったトレーニングや厚着でのランニング等を行う。
通常であれば時差ボケを解消するために余裕を持って現地入りするが、ナイトレースであるため、シンガポールの場合はやや特殊だ。
チームメンバーやドライバーは、欧州時間の生活リズムのままにシンガポールの週末に突入する。つまり、現地時間の昼過ぎに起床し、現地早朝にベットに入る。チームは現地正午に朝食を、そして現地午後6時にランチを提供し、ディナータイムは概ね現地午前1時にスタートする。
困難なオーバーテイク
オリジナルレイアウトは兎に角、オーバーテイクが難しく、10~20回程度に過ぎなかったが、コース改修後の初大会となった2023年は計40回の追い抜きが記録された。それでも2025年現在、ウィナーは全てポール・トゥ・ウインと、依然として予選リザルトは重要だ。
スタート直後に接触祭りが開催されるターン1・2は、コース幅が狭く切り返しがきつい。ポールポジションから最初のブレーキングポイントまでは175mしかない。
ターン5~7のSMゾーン2およびホームストレートエンドでは300km/h以上の速度となる。ターン5を如何に上手く立ち上がれるかがオーバーテイクの鍵の一つとなる。
| 年 | 追い抜き | リタイヤ | ピット回数 | ||
|---|---|---|---|---|---|
| 通常 | DRS | 接触 | 故障 | ||
| 2025 | – | – | – | – | – |
| 2024 | 4 | 25 | 0 | 1 | 23 |
| 2023 | 25 | 15 | 2 | 2 | 25 |
| 2022 | 9 | 2 | 4 | 2 | 21 |
| 2021 | 29 | 22 | 2 | 1 | 29 |
| 2020 | 中止 | ||||
| 2019 | 中止 | ||||
| 2018 | 7 | 5 | 1 | 0 | 25 |
| 2017 | 14 | 2 | 6 | 2 | 33 |
強力な地場
ターン13付近のエスプラネード橋の鉄骨が磁気を帯びているため、マシンの電子機器・センサー類に影響を与える。対策としてチーム側は、磁気干渉の少ない特殊なパーツを使う。また、ギヤボックスの油圧バルブへの影響を防ぐため、磁気誘導のためにミューメタル(ニッケル合金)でこれを覆う。
レースの勘所と勝利へのポイント
パッケージングとしては、高ダウンフォース仕様のセットアップに加え、低速コーナーから素早く脱出可能なトラクションの良さが重要となる。パワーユニット的には、ドライバーが思い通りにドライブ出来るよう、パワーよりも優れたドライバビリティが求められる。
セーフティーカー出動率は100%。2時間打ち切りレースとなる可能性が高く、他のサーキットに比べて戦略の重要性が高い。勝利のためには、迅速かつ的確な判断が求めれられる。
コースレコード
| タイム | ドライバー | チーム | 年 | |
|---|---|---|---|---|
| 現行レイアウト(2023-) | ||||
| 決勝ラップレコード | 1:33.808 | ルイス・ハミルトン | メルセデス | 2025年 |
| コースレコード | 1:29.158 | ジョージ・ラッセル | メルセデス | 2025年 |
| 旧レイアウト(2008-2022) | ||||
| ラップレコード | 1:41.905 | ケビン・マグヌッセン | ハース・フェラーリ | 2018年 |
| コースレコード | 1:36.015 | ルイス・ハミルトン | メルセデス | 2018年 |
サーキットの場所・アクセス
湾岸地区に仮設される。グランプリウィークに限って公道をサーキットにしているため、決勝レース翌日はコースの解体作業が行われその翌日には通行止めも解除、普通の一般道に戻る。
F1シンガポールGP歴代ウィナーとポールシッター
| 開催年 | ドライバー | チーム | タイム | |
|---|---|---|---|---|
| 2025 | 優勝 | ジョージ・ラッセル | メルセデス | 1:40:22.367 |
| ポール | ジョージ・ラッセル | メルセデス | 1:29.158 | |
| 2024 | 優勝 | ランド・ノリス | マクラーレン・メルセデス | 1:40:52.571 |
| ポール | ランド・ノリス | マクラーレン・メルセデス | 1:29.525 | |
| 2023 | 優勝 | カルロス・サインツ | フェラーリ | 1:46:37.418 |
| ポール | カルロス・サインツ | フェラーリ | 1:30.984 | |
| 2022 | 優勝 | セルジオ・ペレス | レッドブル・RBPT | 2:02:20.238 |
| ポール | シャルル・ルクレール | フェラーリ | 1:49.412 | |
| 2021 | 中止(COVID-19パンデミック) | |||
| 2020 | ||||
| 2019 | 優勝 | セバスチャン・ベッテル | フェラーリ | 1:58:33.667 |
| ポール | シャルル・ルクレール | フェラーリ | 1:36.217 | |
| 2018 | 優勝 | ルイス・ハミルトン | メルセデス | 1:51:11.611 |
| ポール | ルイス・ハミルトン | メルセデス | 1:36.015 | |
| 2017 | 優勝 | ルイス・ハミルトン | メルセデス | 2:03:23.544 |
| ポール | セバスチャン・ベッテル | フェラーリ | 1:39.491 | |
| 2016 | 優勝 | ニコ・ロズベルグ | メルセデス | 1:55:48.950 |
| ポール | ニコ・ロズベルグ | メルセデス | 1:42.584 | |
| 2015 | 優勝 | セバスチャン・ベッテル | フェラーリ | 2:01:22.118 |
| ポール | セバスチャン・ベッテル | フェラーリ | 1:43.885 | |
| 2014 | 優勝 | ルイス・ハミルトン | メルセデス | 2:00:04.795 |
| ポール | ルイス・ハミルトン | メルセデス | 1:45.681 | |
| 2013 | 優勝 | セバスチャン・ベッテル | レッドブル・ルノー | 1:59:13.132 |
| ポール | セバスチャン・ベッテル | レッドブル・ルノー | 1:42.841 | |
| 2012 | 優勝 | セバスチャン・ベッテル | レッドブル・ルノー | 2:00:26.144 |
| ポール | ルイス・ハミルトン | メルセデス | 1:46.362 | |
| 2011 | 優勝 | セバスチャン・ベッテル | レッドブル・ルノー | 1:59:06.757 |
| ポール | セバスチャン・ベッテル | レッドブル・ルノー | 1:44.381 | |
| 2010 | 優勝 | フェルナンド・アロンソ | フェラーリ | 1:57:53.579 |
| ポール | フェルナンド・アロンソ | フェラーリ | 1:45.390 | |
| 2009 | 優勝 | ルイス・ハミルトン | マクラーレン・メルセデス | 1:56:06.337 |
| ポール | ルイス・ハミルトン | マクラーレン・メルセデス | 1:47.891 | |
| 2008 | 優勝 | フェルナンド・アロンソ | ルノー | 1:57:16.304 |
| ポール | フェリペ・マッサ | フェラーリ | 1:44.801 | |
改修
当初は1周5,067mの長さを誇っていたが、2018年大会に際してターン16からターン17のラインが変更となり、結果として1周の総距離が2m減少し、5.063kmへと変更された。翌年にはターン13からターン14の区間に新たにDRSゾーンが追加された。
2023年はコース付近の再開発工事の影響で、ターン16~19区間にあった4つの90度コーナーが撤去され、代わって長さ398 mのストレートに置き換えられた。これによりコーナー数は23から19に減り、全長が135m短くなったため、レース周回数は61周から62周に増加した。この新たなストレートは翌年にDRSゾーンとして追加された。レイアウト変更によりラップタイムは10秒ほど高速化した。
copyright Formula1 Data
2023年に向けてのマリーナベイ市街地コース(F1シンガポールGP)のレイアウト変更箇所
ブレーキングポイントは16ヶ所もあり、冷却可能なストレートも少なかったため、ブレーキへの負荷はカレンダー最大レベルで、90度コーナーの多さから、以前はラップ終盤にリアタイヤがタレる傾向にあった。
また、レースラップが1周あたり2分近くに及んだため、アクシデントなく順調に進んだとしてもチェッカーフラッグまで2時間近くを要した。そのため、あらゆる面においてシンガポールGPはシーズンの中で最も過酷なレースだった。
画像
Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.
F1シンガポールGP決勝レース1周目のターン1・2、2022年10月2日マリーナベイ市街地コースにて
Courtesy Of Red Bull Content Pool
マリーナベイ市街地コースで行われたシンガポールGPでトップチェッカーを受けるレッドブルのセルジオ・ペレス
Courtesy Of Alfa Romeo Racing
闇夜に浮かぶマリーナベイ市街地コースのパドック、2022年9月29日F1シンガポールGP
Courtesy Of Red Bull Content Pool
レッドブルRB15を駆りマリーナベイ市街地コースを周回するマックス・フェルスタッペン、2019年F1シンガポールGPフリー走行3
Courtesy Of Red Bull Content Pool
日中のマリーナベイ・ストリート・サーキット