
サーキット・オブ・ジ・アメリカズ
サーキット名 | サーキット・オブ・ジ・アメリカズ |
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所在国 | アメリカ |
住所 | 9201 Circuit of the Americas Blvd, Austin, TX 78617, USA |
設立年 | 2012年 |
設計 | ヘルマン・ティルケ |
全長 / コーナー数 | 5,516m / 20 |
最大高低差 | 31m |
周回数 | 56 |
ピット長 / 損失時間 | 414m / 19秒 |
ターン1までの距離*1 | 240m |
平均速度 | 180km/h |
最高速度 | 334km/h |
エンジン負荷と全開率*2 | 53% |
ブレーキ負荷と使用率 | 21% |
燃料消費レベルと量 | 1.88kg/周 |
フューエル・エフェクト | 0.38秒/10kg |
タイヤ負荷レベル | |
ダウンフォースレベル | |
グリップレベル | |
変速回数 | 72回/周 |
SC導入率 | 20% |
ウェット確率 | 12% |
総工費 | 400億円 |
WEBサイト | circuitoftheamericas.com |
SNS | twitter facebook instagram |
*1 ポールポジションから最初の制動地点までの距離 *2 全開率は距離ではなくタイムベースで算出
サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(英:Circuit Of The Americas)とは、7年ぶりとなる2012年のF1アメリカGPに合わせてテキサス州オースティンに建設されたサーキットで、頭文字を取ってCOTAとも表記される。米国は自動車メーカー・スポンサー各社にとって魅力的な巨大マーケットであり、F1復活は悲願であった。
Courtesy Of Red Bull Content Pool
快晴に恵まれたCOTA、F1アメリカGP決勝レーススタート直後のターン1の様子 2018年10月21日
著名コーナーを模したコースレイアウト
元の地形を使用した高低差が印象的で、高速コーナーあり、多数のテクニカルコーナーありと、非常にチャレンジング。多くのドライバーが口を揃えて「走っていて楽しい」と語るヘルマン・ティルケの最高傑作の一つだ。
ただ厳密に言えば、設計初期のレイアウトは現地プロモーターで元レーシングドライバーのタボ・ヘルムンドと、1993年のロードレース世界選手権500ccチャンピオン、ケビン・シュワンツによって考案されたもので、現行レイアウトは2人がヘルマン・ティルケに協力を求めた結果、誕生したものだ。
以下のように、ヨーロッパに位置する幾つかのコースから着想を得てコーナーがデザインされた。
- ターン3~6(シルバーストンのマゴッツとベケッツ)
- ターン12~15(ホッケンハイムのスタジアムセクション)
- ターン16~18(イスタンブールパークのターン8)
例えばトルコGPの舞台、イスタンブール・パークにヒントを得たターン16~18は約570mと距離も似通っているが、COTAの当該セクションは進入速度が遅く、コーナーを脱出するまで加速が続く一方、イスタンブールのターン8は同一速度をキープして走るという点で異なる。
Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.
2022年シーズンに向けて再舗装されたサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)のセクター1区間、2022年10月20日F1アメリカGP
特徴
最大の注目はターン1!高低差31mのブラインド
一番の特徴は、ホームストレートから続く急斜面の頂点に設置された圧巻のターン1だ。これはCOTA設立の大口出資者であるテキサスの企業「レッド・マコンブス」に因んで「ビッグ・レッド(Big Red)」と呼ばれている。
最大傾斜角は12.5度、ピットレーンとの高低差は30.9mに及ぶ。これはピサの斜塔の半分に相当する。ちなみにCOTAの展望台の高さは77mだ。
ドライバーの目線は自分の膝の高さよりも低くなる。完全なブラインドコーナーで、小林可夢偉曰く「クリッピングポイントが全く見えない」ため、勘だけでステアリングを切るそうだ。
Courtesy Of HONDA
サーキット・オブ・ジ・アメリカズの1コーナー側からホームストレートを見下ろした様子
1コーナー直前のコース幅はなんと29.7mもある。日本の一般道の横幅はおおよそ3m程なので、10車線道路ほどの巨大なコース幅と言える。3ワイドや4ワイドなど、他のサーキットではお目にかかれないオーバーテイク合戦が繰り広げられる。
妥協のセットアップ
COTAは超高速サーキットとして知られるスパ・フランコルシャンより高速コーナーの数が多い一方、低速トラックの代名詞であるハンガロリンクよりも低速コーナーの数が多い。そのため、トップスピードと低速グリップのバランスを取るのが極めて難しい。
セクター1は約800mに渡って平均時速250kmを超える連続高速コーナーで構成されているが、2本のロングストレートを有するが故に、単にダウンフォースを増やせば良いというものではない。バランスを踏まえた妥協のセットアップが必要となる。
最長ストレートはターン11から12にかけての1090m。最高速も同じ場所で記録されており、F1マシンの場合時速320km程に達する。
ターン12のブレーキングでは5G以上が発生する。これはシーズン最大級であり、体重70kgのドライバーに350kgの負荷が掛かるという事を意味する。
全20コーナーの内7コーナーが時速240km超の高速コーナーであるため、フロントタイヤ、特に左フロントの摩耗が大きい。ギアチェンジの回数も1周あたり56回と多い。
不安定な地盤、相次ぐ路面トラブル
2012年の開業以来、COTAの路面は度々、バンプの酷さに悩まされてきた。これは、オースティン付近に広がる粘土質の土壌とこれに起因する地盤沈下が原因であるため、根本的な解決は難しく、これまでに幾度となく再舗装を含む改修が行われてきた。
COTAの東側の土壌は可塑性が高く、雨が降って湿れば膨張し、乾燥すると逆に収縮する傾向がある。
問題を解決するために、2019年から2020年のオフシーズン中にコース全長の40%が再舗装された。それはピットレーン出口を含むメインストレートと、ターン9~10区間、ターン11~ターン12のバックストレート、そしてターン15からターン19区間を対象とした工事であった。
それでもなお、2021年のMotoGPアメリカGPでは、アプリリアのアレイシ・エスパルガロが「本当にとんでもなく凄く危険で悪夢のようだ」とレース中止を訴えるなど、多くのライダーが不満をあらわにした。
そこでCOTAは再び予算を投じ、まずは2022年に向けてターン2~10間およびターン12~15間の路面を再舗装しただけでなく、ターン2・10にはバンプの再発防止として鉄筋コンクリートと鉄骨を埋設した。
さらに、2023年大会に向けてはターン12及び、ターン14~16区間を、そして2024年大会に向けてはターン16~3及び、ターン9~12区間を再舗装した。
容易なオーバーテイク
ホームストレートにはDRSゾーンが設定されており、ワイドなコーナーエントリーとブラインド・エイペックスを備えるターン1は、ターン12と並んでCOTAにおける最大のオーバーテイクポイントだ。
F1サーキットとしては最も追い抜きが容易なコースで、2019年シーズンはバーレーンに続く最多2番目となる計60回のオーバーテイクが記録された。
年 | オーバーテイク | リタイヤ | ||
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通常 | DRS | 接触 | 機械的問題 | |
2023年 | 10回 | 35回 | 4台 | 1台 |
2022年 | 29回 | 46回 | 3台 | 0台 |
2021年 | 18回 | 14回 | 0台 | 3台 |
2019年 | 20回 | 40回 | 0台 | 2台 |
2018年 | 11回 | 20回 | 5台 | 1台 |
2017年 | 23回 | 21回 | 1台 | 3台 |
2016年 | 27回 | 37回 | 2台 | 2台 |
2015年 | 47回 | 16回 | 5台 | 3台 |
前後に均等なタイヤ負荷
タイヤに掛かる負荷はフロントとリアに対してほぼ均等で、主に横方向の力が掛かる。
路面は2022年大会に向けて部分的に再舗装されたが、依然としてかなりバンピーだ。これは潜在的にクルマの横滑りが増える可能性がある事を意味し、結果としてオーバーヒートをの原因となり得る。
COTAで見られるデグラデーションはサーマル・デグラデーション、つまり熱ダレが殆どで、グレイニングが発生することはほとんどない。
コースレコード
タイム | ドライバー | チーム | 年 | |
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ラップレコード | 1:36.169 | シャルル・ルクレール | フェラーリ | 2019年 |
コースレコード | 1:32.029 | バルテリ・ボッタス | メルセデス | 2019年 |
F1アメリカGP歴代ウィナーとポールシッター
開催年 | ドライバー | チーム | タイム | |
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2024 | 優勝 | シャルル・ルクレール | フェラーリ | 1:35:09.639 |
ポールポジション | ランド・ノリス | マクラーレン・メルセデス | 1:32.330 | |
2023 | 優勝 | マックス・フェルスタッペン | レッドブルRBPT | 1:35:21.362 |
ポールポジション | シャルル・ルクレール | フェラーリ | 1:34.723 | |
2022 | 優勝 | マックス・フェルスタッペン | レッドブルRBPT | 1:42:11.687 |
ポールポジション | カルロス・サインツ | フェラーリ | 1:34.356 | |
2021 | 優勝 | マックス・フェルスタッペン | レッドブル・ホンダ | 1:34:36.552 |
ポールポジション | マックス・フェルスタッペン | レッドブル・ホンダ | 1:32.910 | |
2020 | 中止(コロナ渦) | |||
2019 | 優勝 | バルテリ・ボッタス | メルセデス | 1:33:55.653 |
ポールポジション | バルテリ・ボッタス | メルセデス | 1:32.029 | |
2018 | 優勝 | キミ・ライコネン | フェラーリ | 1:34:18.643 |
ポールポジション | ルイス・ハミルトン | メルセデス | 1:32.237 | |
2017 | 優勝 | ルイス・ハミルトン | メルセデス | 1:33:50.991 |
ポールポジション | ルイス・ハミルトン | メルセデス | 1:33.108 | |
2016 | 優勝 | ルイス・ハミルトン | メルセデス | 1:38:12.618 |
ポールポジション | ルイス・ハミルトン | メルセデス | 1:34.999 | |
2015 | 優勝 | ルイス・ハミルトン | メルセデス | 1:50:52.703 |
ポールポジション | ニコ・ロズベルグ | メルセデス | 1:56.824 | |
2014 | 優勝 | ルイス・ハミルトン | メルセデス | 1:40:04.785 |
ポールポジション | ニコ・ロズベルグ | メルセデス | 1:36.067 | |
2013 | 優勝 | セバスチャン・ベッテル | レッドブル・ルノー | 1:39:17.148 |
ポールポジション | セバスチャン・ベッテル | レッドブル・ルノー | 1:36.338 | |
2012 | 優勝 | ルイス・ハミルトン | マクラーレン・メルセデス | 1:35:55.269 |
ポールポジション | セバスチャン・ベッテル | レッドブル・ルノー | 1:35.657 |
サーキットの場所
サウスオースティンの1000エーカーもの広大な平野に建設され、オースティン・バーグストロム国際空港から3Kmほどの場所にある。オースティンは活気にあふれる都市であり、音楽祭などのイベントで知られている。
オースティンの街は「世界の音楽の中心地」を公式に標榜しており、独特の雰囲気がある。またバーベキューに代表される肉料理が絶品で、多くのドライバーはここに来る前にいくらか減量するらしい。というのも、食べすぎてしまって体重が増えてしまうからだそう。
写真
Courtesy Of Alfa Romeo Racing
サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)の最終コーナーを抜けてターン1へと向かうアルファロメオC42、2022年10月21日F1アメリカGP
Courtesy Of Red Bull Content Pool
サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)のターン1
Courtesy Of Red Bull Content Pool
サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)を走るMotoGPマシン
Courtesy Of TOYOTA MOTOR CORPORATION
サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)を走るトヨタ TS050 HYBRID
Courtesy Of Red Bull Content Pool
混雑するサーキット・オブ・ジ・アメリカズのセクター3、2019年F1アメリカGP予選にて
Courtesy Of Pirelli
大観衆に見守られ行われる表彰台セレモニーとレース終了後のピットレーンに止まるF1マシン、F1アメリカGP決勝 2018年
Courtesy Of Red Bull Content Pool
サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)を走行するレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン、2019年F1アメリカGPフリー走行1にて