
イモラ・サーキット
サーキット名 | イモラ・サーキット |
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所在国 | イタリア |
住所 | Piazza Ayrton Senna da Silva, 1 40026 Imola, Italia |
設立年 | 1953年 |
設計 | 改修時:ヘルマン・ティルケ |
最大高低差 | 34m |
周回数 | 63 |
ターン1までの距離*1 | 399m |
平均速度 | 217km/h |
最高速度 | 329km/h |
変速回数 | 52回/周 |
SC導入率 | 80% |
ウェット確率 | 30% |
全長 / コーナー数 | 4,909m / 21 |
ピット長 / 損失時間 | 548m / 25秒 |
エンジン負荷と全開率*2 | 67% |
ブレーキ負荷と使用率 | |
燃料消費レベルと量 | |
タイヤ負荷レベル | |
ダウンフォースレベル | |
グリップレベル | |
WEBサイト | www.autodromoimola.it |
SNS | twitter facebook instagram |
*1 ポールから最初の制動地点までの距離*2 全開率は時間ベース
イモラ・サーキット(英:Imola Circuit)は、イタリア・エミリア=ロマーニャ州イモラ市に位置する歴史あるレーシングサーキットで、正式名称は「アウトードロモ・インテルナツィオナーレ・エンツォ・エ・ディーノ・フェラーリ(Autodromo Internazionale Enzo e Dino Ferrari)」。初のレース開催は1953年。当初は2輪レース用として使用されていた。
サーキットの名称は、フェラーリ創業者エンツォ・フェラーリと、その息子アルフレード・“ディーノ”・フェラーリに由来する。開業当初は「アウトードロモ・ディ・イモラ(Autodromo di Imola)」と呼ばれ、1957年からは「アウトードロモ・ディーノ・フェラーリ(Autodromo Dino Ferrari)」に改称。1988年にエンツォが逝去したことを受け、翌1989年より現在の名称へと改められた。
1980年に「イタリアGP」の名のもとで初めてF1グランプリが開催された。翌1981年から2006年までは「サンマリノGP」として毎年F1レースが行われ、長らくカレンダーの定番となっていた。その後、F1から姿を消していたが、新型コロナウイルス感染症パンデミックに伴う日程変更の影響で、代替グランプリとして2020年にカレンダーへ復帰。以降は「エミリア・ロマーニャGP」として開催されている。
Courtesy Of Red Bull Content Pool
イモラ・サーキットを周回するマックス・フェルスタッペン(レッドブル)とダニエル・リカルド(RBフォーミュラ1)、2024年5月17日F1エミリア・ロマーニャGPフリー走行
コースレイアウト
copyright Formula1 Data
イモラ・サーキット(F1エミリア・ロマーニャGP)の2022年版コースレイアウト図
全長4,909mのうち、約71.39%(約3,505m)がストレートで構成され、右コーナーが9.81%(約482m)、左コーナーが18.77%(約921m)と、比較的直線主体のレイアウトだが、各ストレートの長さは短く、冷却に使える時間が限られるため、特にブレーキにとっては厳しいコースでもある。
コース幅は狭く、縁石は高くて攻撃的な設計で、自然な高低差があるほか、ハードブレーキングと流れるような高速区間が交互に現れる。いわゆる“オールドスクール”なサーキットに分類される。
また、F1カレンダーにおいては珍しい反時計回りのレイアウトを採用する。同様のレイアウトを持つのはインテルラゴス、バクー、COTA(サーキット・オブ・ジ・アメリカズ)、ジェッダ、マリーナベイ、ヤス・マリーナなど、限られたサーキットにとどまる。
特徴
隠れたハイスピードトラック
平均速度は200km/h。これはシルバーストーン(約205km/h)や鈴鹿(約210km/h)に匹敵する。ラップタイムの約68%、走行距離にして約74%はエンジン全開区間で構成されており、これもF1カレンダーの中ではトップクラスの数値となっている。
特に、最終コーナーの出口からターン2のブレーキングポイントまでは、およそ15秒間にわたるフルスロットルが続く、パワーユニットにとって過酷な区間だ。
加えて、路面グリップが高く、コーナー出口のラインが比較的直線的であるため、コーナー脱出時の縦加速度(いわゆるgLongフォース)は平均1.5Gに達し、これもシーズンを通じて最も高い水準のひとつとされている。
copyright Red Bull Content Pool
イモラ・サーキットを走行するレッドブル・ホンダRB16、2020年F1エミリア・ロマーニャGP
多様なコーナー、セットアップの妥協
コーナーの種類や通過速度が多岐に渡るため、マシンの作動領域を広範に確保する必要がある。これは、すべてのコーナーが類似した速度レンジで構成されるソチ・オートドロームのようなサーキットとは対照的な特性だ。
加えて、路面はかなりバンピーで、縁石も大型かつ攻撃的な形状となっており、ドライバーとマシン双方に高い負荷をかける。
このような多様なコーナーを持つコースでパフォーマンスを最大化するには、単に空力やメカニカルグリップの最適化だけでなく、乗り心地(ショック吸収性)と空力効率との間で繊細なバランスを取る必要があり、セットアップにおいては一定の妥協を強いられることになる。
イモラ・サーキットを走行するメルセデスW12のルイス・ハミルトン、2021年4月16日F1エミリア・ロマーニャGP初日フリー走行にて
統計
オーバーテイクとリタイヤ、ピット回数
近代的なサーキットとは異なり、コース幅が狭く、DRSゾーンも1か所に限られていることから、オーバーテイクは極めて難しい。過去28回のレース中、ポール・ポジションからの勝利は9回にとどまっているものの、予選順位がレース結果に与える影響は大きく、ポール・トゥ・ウィン率は無視できない水準にある。
そのため、このサーキットでは予選でのポジションとレース戦略の重要性が極めて高い。イモラ以上に追い抜きが難しいのはモナコとシンガポールのみだ。
加えて、ピットレーンの全長は528メートルとF1カレンダーで最長を誇り、ロスタイムは約24.8秒にも及ぶ。これにより、多くのチームはタイムロスを最小限に抑えるべく、1ストップ戦略を採用する傾向が強い。
年 | オーバーテイク | リタイヤ | ピット回数 | ||
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通常 | DRS | 接触 | 機械的問題 | ||
2024年 | 5回 | 25回 | 0台 | 1台 | 25回 |
2023年 | 洪水被害のため中止 | ||||
2022年 | 9回 | 8回 | 2台 | 0台 | 25回 |
2021年 | 24回 | 10回 | 3台 | 0台 | 26回 |
2020年 | 1回 | 3回 | 2台 | 3台 | 30回 |
コースレコード
2020年のカレンダー復帰まで、決勝レースで計測される史上最速の”ラップレコード”は2006年にフェルナンド・アロンソ(ルノー)が記録した1分24秒795、”コース・レコード”は同じ2006年にミハエル・シューマッハ(フェラーリ)が予選で記録した1分22秒795であったが、いずれも9秒近く更新される事となった。
タイム | ドライバー | チーム | 年 | |
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ラップレコード | 1:15.484 | ルイス・ハミルトン | メルセデス | 2020年 |
コースレコード | 1:13.609 | バルテリ・ボッタス | メルセデス | 2020年 |
F1エミリア・ロマーニャGP歴代ウィナーとポールシッター
開催年 | ドライバー | チーム | タイム | |
---|---|---|---|---|
2025 | – | – | – | – |
ポール | – | – | – | |
2024 | 優勝 | マックス・フェルスタッペン | レッドブル・ホンダRBPT | 1:25:25.252 |
ポール | マックス・フェルスタッペン | レッドブル・ホンダRBPT | 1:14.746 | |
2023 | 洪水被害のため中止 | |||
2022 | 優勝 | マックス・フェルスタッペン | レッドブル・RBPT | 1:32:07.986 |
ポール | マックス・フェルスタッペン | レッドブル・RBPT | 30:39.567 | |
2021 | 優勝 | マックス・フェルスタッペン | レッドブル・ホンダ | 2:02:34.598 |
ポール | ルイス・ハミルトン | メルセデス | 1:14.411 | |
2020 | 優勝 | ルイス・ハミルトン | メルセデス | 1:28:32.430 |
ポール | バルテリ・ボッタス | メルセデス | 1:13.609 |
歴史
サーキットの建設は1950年に始まり、1953年に最初のレースが開催された。イモラはこれまでにサンマリノGP、イタリアGP、エミリア・ロマーニャGPと、3つの異なる名称でF1レースを開催してきた。2007年以後、F1イタリアGPの舞台はモンツァ・サーキットへと移った。
1980年から2006年まで毎年グランプリレースが開催されてきたものの、2007年にF1カレンダーから脱落。ヘルマン・ティルケ監修のもと全面改修された。これによりイモラは一旦、F1のテスト走行が上限の「FIAグレード1T」認証へと格下げされた。
しかしながら2011年に再度、FIAの最高認証ライセンス「グレード1」を取得。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で再編が行われたF1カレンダー入りを目指して、2020年にライセンスを更新し、第13戦F1エミリア・ロマーニャGPの舞台として14年ぶりにF1に復活した。
これまでにF1を始めとしてGP2シリーズやMotoGP、世界ツーリングカー選手権(WTCC)、ルマン・シリーズ等の選手権が開催された。また、フェラーリ・チャレンジ、イタリアF4、スーパーバイク世界選手権、フォーミュラ・ルノー・ユーロカップなどをホストしている。
“魔の1994年サンマリノGP”―F1史に刻まれた悲劇
イモラを語る上で、1994年のサンマリノGPを避けて通ることはできない。このグランプリは、F1史上も最も悲劇的な週末のひとつとして記憶されており、ローランド・ラッツェンバーガー、そしてアイルトン・セナという二人の命が失われた。
この週末には、数多くの重大事故が連続して発生。これを受け、安全性向上に向けたレイアウト変更が施された。
- 金曜フリー走行:ジョーダンのルーベンス・バリチェロが縁石に乗り上げた勢いで横転。激しくクラッシュして意識を失い、鼻骨を骨折する重傷を負う。
- 土曜予選:シムテックのラッツェンバーガーのマシンからフロントウイングが脱落。時速約310km/hでコンクリートウォールに正面衝突し、頭蓋底骨折により即死した。
- 決勝スタート直後:1周目、ベネトンのJ.J.レートにロータスのペドロ・ラミーが追突。飛び散った破片が観客席に飛び込み、数名の観客が負傷。
- 同決勝7周目:セーフティーカーが退去した直後、ウィリアムズのセナがステアリングシャフトの破損により高速のタンブレッロ・コーナーでクラッシュ。搬送先の病院で死亡が確認された。
- 同決勝中盤:ピットインしたミケーレ・アルボレートのマシンからリヤタイヤが外れ、ロータスおよびフェラーリのピットクルー数名に直撃。複数名が重傷を負った。
セナが命を落としたタンブレッロの近くには、故人を偲ぶ銅像が設置されている。現在もその周囲には、ファンによる手書きのメッセージや献花、ブラジル国旗、ポスター、帽子などが絶えることなく捧げられており、F1界の象徴的な追悼の場となっている。このモニュメントのあるエリアには、一般来場者も無料で立ち入ることが可能だ。
Courtesy Of Red Bull Content Pool
タンブレッロ・コーナー脇に設置されたアイルトン・セナの銅像 拡大
コース改修
再開発計画の一環として2006年11月にコースおよび周辺施設の大規模な改修工事が始まり、2007年9月に完了した。2009年夏には、国際モーターサイクル連盟(FIM)のホモロゲーション基準に対応するため、ピットレーン前のシケインに調整が加えられた。また、2011年8月にはコース全体の約70%において路面の再舗装が実施された。
現在はシケインとして整備されているタンブレッロは、かつてはF1でも屈指の超高速コーナーとして知られ、非常に危険なゾーンだった。1987年にはネルソン・ピケ、1989年にはゲルハルト・ベルガー、1992年にはリカルド・パトレーゼが、それぞれ大クラッシュを喫した。
そして1994年に発生したセナとラッツェンバーガーの死亡事故を受けて、タンブレッロおよびヴィルヌーブの両コーナーは、いずれもシケインへと改修された。
さらに近年では、2024年のF1エミリア・ロマーニャGPに先立ち、トラックリミット(コース外走行)対策として、ターン11およびターン14・15のシケインにグラベル(砂利)が新たに設置され、ターン7のグラベルエリアも拡張された。
モータースポーツの宝庫―エミリア・ロマーニャ州に点在する5つのサーキット
イタリア北部のエミリア・ロマーニャ州には、国内外で知られる5つのレーシングサーキットが存在している。その中で唯一、F1グランプリが開催されたのが、イモラ・サーキットだ。
以下、州内にある主要サーキットを紹介する。
- ミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリ(4.226km):MotoGPをはじめとする二輪の国際レースが定期的に開催されており、テクニカルなレイアウトと高い安全性で知られる。
- アウトードロモ・リカルド・パレッティ(2.360km):レーシングカーシャシーの名門ダラーラの創設者ジャンパオロ・ダラーラが建設に関与。主にテスト用途に使用され、各カテゴリーの開発走行にも活用されている。
- モデナ・サーキット(2.007km):2011年にオープンした比較的新しいサーキットで、主にドライビングスクールやアマチュア向け走行会として利用されている。地元ドライバーが自家用車で走行を楽しむ光景も珍しくない。
- フィオラノ・サーキット(2.976km):1972年に開設されたフェラーリのプライベートテストコースで、8の字型の特徴的なレイアウトを持つ。マラネロで製造されたすべてのF1マシンとロードカーが、まずこのコースで初走行を行う。
Courtesy Of Ferrari S.p.A.
フィオラノ・サーキットを走行するフェラーリSF71H
サーキットの場所と航空写真
写真
Courtesy Of Red Bull Content Pool
2022年エミリア・ロマーニャGPのスプリントレースを走るセルジオ・ペレス(レッドブル)-2022年4月23日イモラ・サーキット
copyright Red Bull Content Pool
グラベルに飛び出るメルセデスAMGペトロナスF1チームのバルテリ・ボッタスと、後方からチャンスを伺うレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン、2020年F1エミリア・ロマーニャGP決勝レースにて
copyright Red Bull Content Pool
夕焼け時のイモラ・サーキットを走行するアルファタウリ・ホンダのピエール・ガスリー、2020年F1エミリア・ロマーニャGP予選にて
Courtesy Of Red Bull Content Pool
イモラサーキットで開催された2019年イタリアF4選手権第5戦
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イモラ・サーキットで開催されたF1 Clienti/XX Programmes
Courtesy Of Ferrari S.p.A.
2020年F1エミリア・ロマーニャGPでイモラ・サーキットを走行するレッドブル・ホンダRB16