マイアミ・インターナショナル・オートドローム

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サーキットデータ
サーキット名マイアミ・インターナショナル・オートドローム
所在国アメリカ
住所347 Don Shula Dr, Miami Gardens, FL 33056 アメリカ合衆国
設立年2022年
設計Apex Circuit Design
周回数57
ターン1までの距離*1167m
平均速度237km/h
最高速度355km/h
変速回数45回/周
SC導入率67%
ウェット確率0%
全長 / コーナー数5,412m / 19
ピット長 / 損失時間376m / 17秒
エンジン負荷と全開率*2 55%
ブレーキ負荷と使用率
タイヤ負荷レベル
ダウンフォースレベル
グリップレベル
WEBサイト f1miamigp.com
SNS instagram

*1 ポールから最初の制動地点までの距離*2 全開率は時間ベース

マイアミ・インターナショナル・オートドローム(英:Miami International Autodrome)は、米国フロリダ州マイアミ郊外に位置するハードロック・スタジアムとその周辺を舞台とする専用仮設レーシングサーキットであり、2022年5月8日に初開催されたF1マイアミGPのために新設された。F1との現行契約は2031年までの10年間にわたる。

アメリカ国内でのF1グランプリ開催地としては、1950年の世界選手権創設以来、インディアナポリス、セブリング、リバーサイド、ワトキンスグレン、ロングビーチ、ラスベガス、デトロイト、ダラス、フェニックス、オースティンのサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)に続く11番目となる。世界全体では77番目のグランプリ開催地である。

マイアミ・インターナショナル・オートドロームのホームストレート、2022年5月7日F1マイアミGPCourtesy Of Alfa Romeo Racing

マイアミ・インターナショナル・オートドロームのホームストレート、2022年5月7日F1マイアミGP

コースレイアウト

75案の中から選定されたレイアウトは全長5,412メートル、コーナー数は19(左コーナー:12、右コーナー:7)で、3本のストレートを有する。最高速度は355km/hに達する。

マイアミ・インターナショナル・オートドローム(F1マイアミGP)のコースレイアウト図とDRSゾーン

マイアミ・インターナショナル・オートドローム(F1マイアミGP)のコースレイアウト図とDRSゾーン

セクター1 ターン8の110m奥
セクター2 ターン16の70m奥
スピードトラップ ターン17の150m手前

最高速度という観点では、F1カレンダーの中でもトップ5に位置し、3本のストレートを擁する一方で、エンジン全開率は55%(ラップタイムにおける割合)にとどまり、全体としては低い部類に入る。また、マイアミとバクーは、空気抵抗(ドラッグ)への感度が極めて高いサーキットとしても知られている。

セクターごとに異なる特性を持ち、セクター1は高速スイープターンが主体、セクター2には複数の低速コーナーが集中する。セクター3は長いバックストレートとヘアピンが特徴。低速および高速が中心となる一方で、中速域のコーナーは比較的少ない。

専用仮設型サーキットのため、グランプリ開催の数週間前から設営作業が開始され、決勝レース終了とともに解体作業が進められる。

DRSゾーン

DRS検知地点1 ターン8の90m奥
DRS検知地点2 ターン16の70m奥
DRS検知地点3 ターン17の15m奥
DRS稼働地点1 ターン9の105m奥
DRS稼働地点2 ターン16の525m奥
DRS稼働地点3 ターン19のエイペックス

特徴

ミスを誘発する“罠”─セクター2終盤のタイト区間

最も警戒すべきは、有料道路の陸橋下に設けられたセクター2終盤の連続コーナーだ。サーキット設計を担当したApex Circuit Designのクライブ・ボーエンによれば、この区間にはドライバーのミスを誘発するような位置にバリアが巧みに配置されている。

有料道路の陸橋下に設けられたマイアミ・インターナショナル・オートドロームのコース、2022年5月5日F1マイアミGPCourtesy Of Alfa Romeo Racing

有料道路の陸橋下に設けられたマイアミ・インターナショナル・オートドロームのコース、2022年5月5日F1マイアミGP

「ターンパイクの高架橋の下にあるターン13から16にかけての連続コーナーは、針に糸を通すような形になっている」とボーエンは説明する。

「ターン14に向けては、エイペックスに到達するまで次のターン15のエイペックスが見えない。我々はここを“ミス・ジェネレーター”と呼んでいる。前走車がオーバードライブしやすく、ポジションを上げるチャンスとなる」

角田裕毅はこの区間を他のセクションと明確に区別し、独自に「フォーミュラEセクター」と命名している。

タイヤと路面

コースはスタジアムの私有地内にある既存の道路に加え、新たに敷設された「超平滑」なレーシングアスファルトの専用路を使用しており、公道は含まれていない。

舗装直後の路面は非常に滑りやすく、初開催時には高圧ジェット洗浄が施されたものの、グリップレベルについてはフェルナンド・アロンソが「F1のスタンダードではない」と指摘するなど、多くの批判が寄せられた。その結果、2023年シーズンに向けて再舗装が実施された。

セクター1ではタイヤの加熱が進む一方、ターン8からターン11まではストレート区間が続くため、低速コーナーが集中するターン11〜16ではタイヤが冷え、グリップ不足に陥る傾向がある。

路面そのものは非常にスムーズで、タイヤにかかる縦方向・横方向の負荷は中程度。例年、気温・路面温度が非常に高くなり、サーマル・デグラデーションが課題の一つとなる。

仮設サーキットらしく、週末を通してラバーが乗ることでグリップが大きく向上していく。F1アカデミーやポルシェ・カレラカップ・ノースアメリカなどのサポートレースが併催されるため、この傾向はさらに強まる。

オーバーテイクとDNF統計

DRSゾーンが設定された3本のロングストレートはいずれも低速コーナーへとつながっており、オーバーテイクが比較的容易な構成となっている。なかでも、ターン11およびターン17が最大の追い抜きポイントとなる。特にターン16〜17間のストレートは、全長1.28kmにも及ぶ。

追い抜き DNF ピット回数
通常 DRS 接触 機械故障
2025年 -回 -回 -台 -台 -回
2024年 12回 25回 1台 0台 28回
2023年 4回 49回 0台 0台 20回
2022年 30回 16回 2台 1台 25回

難しいセットアップ

全体的には、低速コーナーの後にストレートが続くレイアウトであるため、コーナー出口におけるトラクションの確保が重要となる。一方で、ダウンフォースとトップスピードのトレードオフをいかにバランスさせるかが、大きな課題となる。

中高速コーナーが連続する序盤区間や、ツイスティなターン11〜16ではダウンフォースの確保が求められるが、ロングストレートではドラッグ(空気抵抗)を抑える必要がある。そのため、セットアップ面では妥協が不可避であり、どのセクションに優先順位を置くべきか、どの選択が最もラップタイム向上につながるかを慎重に判断する必要がある。

偽物のマリーナ

旧約聖書によれば、モーゼは迫るエジプト軍から逃れるために海を割ったとされているが、マイアミ・インターナショナル・オートドロームに設置されたヨットハーバーでは、そもそも海を割る必要すらない。なぜなら、そこは水面を歩ける“フェイク・マリーナ”だからだ。

アメリカらしいエンターテインメント性に満ちたこの偽物のマリーナは、ターン6〜8の内側に設けられており、10隻のヨットが“停泊”している。湾は偽物だが、ヨットは本物。他にも“偽ビーチ”が併設されている。

F1マイアミGPの舞台、マイアミ・インターナショナル・オートドロームに設置された偽物のヨットハーバー (2)Courtesy Of Alfa Romeo Racing

F1マイアミGPの舞台、マイアミ・インターナショナル・オートドロームに設置された偽物のヨットハーバー (2)

F1マイアミGPの舞台、マイアミ・インターナショナル・オートドロームに設置された偽物のヨットハーバー (1)Courtesy Of Alfa Romeo Racing

F1マイアミGPの舞台、マイアミ・インターナショナル・オートドロームに設置された偽物のヨットハーバー (1)

決して泳ぐことのできないこの“フェイク・ハーバー”は、グランプリ初開催に先立ち話題を集め、チーム関係者の間で格好のジョークのネタとなった。マクラーレンF1チームは「これがマイアミの奇跡だ」とのコメントと共に、BGM付きの動画をSNS上に公開した。

なお、「マイアミの奇跡」とは、日本では1996年アトランタ五輪の男子サッカーで日本代表がブラジル代表を1対0で下した歴史的勝利を指すが、米国では2018年、NFLのペイトリオッツが試合終了直前にマイアミ・ドルフィンズに劇的な逆転勝利を収めた試合を指す。

水面を歩ける偽マリーナーがネタに

コースレコード

タイム ドライバー チーム
ラップレコード 1:29:708 マックス・フェルスタッペン レッドブル・ホンダRBPT 2023年
コースレコード 1分26秒204 マックス・フェルスタッペン レッドブル・ホンダRBPT 2025年

F1マイアミGP歴代ウィナーとポールシッター

開催年 ドライバー チーム タイム
2025 優勝
ポールポジション マックス・フェルスタッペン レッドブル・ホンダRBPT 1:26.204
2024 優勝 ランド・ノリス マクラーレン・メルセデス 1:30:49.876
ポールポジション マックス・フェルスタッペン レッドブル・ホンダRBPT 1:27.241
2023 優勝 マックス・フェルスタッペン レッドブル・ホンダRBPT 1:27:38.241
ポールポジション セルジオ・ペレス レッドブル・ホンダRBPT 1:26.841
2022 優勝 マックス・フェルスタッペン レッドブル・RBPT 1:34:24.258
ポールポジション シャルル・ルクレール フェラーリ 1:28.796

サーキットの場所

マイアミはスポーツが盛んな都市だ。ハードロック・スタジアムは、NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)のマイアミ・ドルフィンズの本拠地であり、NBA(ナショナル・バスケットボール・アソシエーション)のマイアミ・ヒートや、MLB(メジャーリーグ・ベースボール)のマイアミ・マーリンズも同地を拠点として活動している。また、テニスのマイアミ・オープンの開催地としても知られている。

経緯~相次いだ地元反対

マイアミ市当局は2018年5月10日、ビスケーン湾岸部の市街地を使っての翌年からのグランプリ開催計画が全会一致で合意に至った事を明らかにしたが、レース開催に際して生じる騒音問題や、道路の閉鎖や渋滞などについて地元住民からの再三の反対があり、2019年4月に断念した

マイアミ市当局は2018年5月10日、ビスケーン湾岸部の市街地を使用した翌年からのF1グランプリ開催計画について、全会一致で合意に至った事を明らかにした。だが、レース開催に伴う騒音問題や道路の閉鎖、交通渋滞などに対し、地元住民から再三にわたって反対の声が上がり、2019年4月にこの計画を断念した

同年10月には、F1の商業部門を統括するショーン・ブラッチズと、ハードロック・スタジアムの副会長トム・ガーファンクルが、2021年に同スタジアムを舞台としたレースの開催に向けて基本合意に達したと発表した

新たな開催地での計画が進められる中でも、地元住民からの反対は根強く、抗議活動も展開された。その結果、当初検討されていた199番ストリートを組み込むレイアウト案は見送られ、完全に公道を使わない案へと変更された

こうした数々の反対運動を乗り越え、F1は現地プロモーターと10年間の長期契約を締結。2021年4月18日、翌2022年からのマイアミGP開催を正式発表した

2022年の初開催を1週間後に控えた4月29日には、建設作業員2名が火傷を負い、重傷者1名がヘリコプターで、もう1名が救急車で病院に搬送される電気関連の事故が発生した。

初開催に際して現地プロモーターは、F1グランプリの開催によって新たに4,000人の雇用が生まれ、毎年4億ドル以上の経済効果が期待できるとの見通しを示した。

オンボード映像

写真

F1マイアミGPの舞台、マイアミ・インターナショナル・オートドローム、2022年5月5日 (6)Courtesy Of Alfa Romeo Racing

F1マイアミGPの舞台、マイアミ・インターナショナル・オートドローム、2022年5月5日 (6)

F1マイアミGPの舞台、マイアミ・インターナショナル・オートドローム、2022年5月5日 (5)Courtesy Of Alfa Romeo Racing

F1マイアミGPの舞台、マイアミ・インターナショナル・オートドローム、2022年5月5日 (5)

F1マイアミGPの舞台、マイアミ・インターナショナル・オートドローム、2022年5月5日 (3)Courtesy Of Alfa Romeo Racing

F1マイアミGPの舞台、マイアミ・インターナショナル・オートドローム、2022年5月5日 (3)

F1マイアミGPの舞台、マイアミ・インターナショナル・オートドローム、2022年5月5日 (2)Courtesy Of Alfa Romeo Racing

F1マイアミGPの舞台、マイアミ・インターナショナル・オートドローム、2022年5月5日 (2)

F1マイアミGPの舞台、マイアミ・インターナショナル・オートドローム、2022年5月5日 (1)Courtesy Of Alfa Romeo Racing

F1マイアミGPの舞台、マイアミ・インターナショナル・オートドローム、2022年5月5日 (1)

マイアミ・インターナショナル・オートドローム (F1マイアミGP)にあるゴンドラリフト、2022年5月5日Courtesy Of Alfa Romeo Racing

マイアミ・インターナショナル・オートドローム (F1マイアミGP)にあるゴンドラリフト、2022年5月5日

F1マイアミGPの舞台マイアミ・インターナショナル・オートドロームの縁石、2022年5月5日Courtesy Of Alfa Romeo Racing

F1マイアミGPの舞台マイアミ・インターナショナル・オートドロームの縁石、2022年5月5日

F1マイアミGPの舞台、マイアミ・インターナショナル・オートドローム、2022年5月5日 (7)Courtesy Of Alfa Romeo Racing

F1マイアミGPの舞台、マイアミ・インターナショナル・オートドローム、2022年5月5日 (7)

ハードロックスタジアムを使用したF1マイアミGPの舞台、マイアミ・インターナショナル・オートドロームのCGcopyright f1mia.com

ハードロックスタジアムを使用したF1マイアミGPの舞台、マイアミ・インターナショナル・オートドロームのCG

ハードロックスタジアムを使用したF1マイアミGPの舞台、マイアミ・インターナショナル・オートドロームのCGcopyright f1mia.com

ハードロックスタジアムを使用したF1マイアミGPの舞台、マイアミ・インターナショナル・オートドロームのCG

ハードロックスタジアムを使用したF1マイアミGPの舞台、マイアミ・インターナショナル・オートドロームのCGcopyright f1mia.com

ハードロックスタジアムを使用したF1マイアミGPの舞台、マイアミ・インターナショナル・オートドロームのCG