
ヤス・マリーナ・サーキット
サーキットデータ
名前 | ヤス・マリーナ・サーキット |
---|---|
所在国 | アラブ首長国連邦 |
設立年 | 2009年 |
デザイン | ヘルマン・ティルケ |
全長 | 5,554m | 21コーナー |
周回数 | 55周 | 反時計回り |
ピットレーン長 | 358m| 16.1秒 |
ターン1までの距離*1 | 201m |
平均速度 | 194km/h |
最高速度 | 346km/h |
エンジン負荷*2 | | 全開率 : 61% |
ブレーキ負荷 | | 使用率 : 17% |
燃料消費量 | | 1.91kg/周 |
フューエル・エフェクト | | 0.35秒/10kg |
タイヤ負荷 | |
グリップ | |
エアロ重要度 | |
セーフティーカー出動率 | 20% |
最大高低差 | 11m |
収容人数 | 50,000人 |
総工費 | 30000億円 |
WEBサイト | www.yasmarinacircuit.ae |
SNS | twitter facebook instagram |
*1 ポールポジションから最初の制動地点までの距離
*2 全開率は距離ではなくタイムベースで算出
ヤス・マリーナ・サーキットは、アラブ首長国連邦のヤス島に建設されたサーキット。オープンは2009年10月。同年以降、シーズンフィナーレを飾るF1アブダビGPの開催地となっている。
総工費はなんと日本円にして3兆円。周辺には世界初のフェラーリのテーマパーク「フェラーリ・ワールド」や、ゴルフコース、メガヨットに対応したマリーナなどの豪華施設が立ち並び、コース脇には5星ホテル(ヤス・ホテル)が併設されるなど観光には困らない。一連の大規模な開発計画の一環としてレースコースが建設された。手がけたのは数々の近代F1サーキットを設計してきたヘルマン・ティルケ。
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F1初にして唯一のトワイライトレース
アブダビGPの決勝は日没前にスタートし、その後ナイトレースへ突入。チェッカーフラッグがはためくのは夜のトワイライトグランプリ。ヤス・マリーナ・サーキットは、F1の歴史上初めてトワイライトレースが開催されたグランプリである。路面温度の低下が著しいため、タイヤマネジメントが重要。レース終了後には花火が打ち上げられ、シーズン最後を彩る。
© HONDA / 照明下のサーキットを走るMP4-31
中東の砂漠地帯に位置しているためウェットとなる可能性はゼロに等しい。アブダビGP開催時期の平均気温は27.9℃。平均路面温度は30.9℃。2018年の決勝では一時軽い降雨があったものの、2013年から2018年までの6年間においては、ウェットコンディションとなったセッションは1つもない。
コースレイアウト
レーシング専用セクションと市街地をイメージしたセクションとを組み合わせた独特なサーキット。1,233mのロングストレートや、連続する低速の90度コーナーなど、セクター毎にマシンに対する要求が変化するテクニックな一面を持つ。
ラップ前半は高速サーキット、後半は低速のストップ・アンド・ゴーといった趣で、全21コーナーのうちの6つが時速100㎞以下と、低速時のトラクションが重要となる。
コース上のアップダウンは殆どない。新しいコースのためアンジュレーションも少なく路面はスムーズだが、砂漠からの砂によって滑りやすい箇所がある。路面の舗装にはイギリス・シュロップシャー州のベイストンヒルの硬砂岩が使われている。
コース幅が広くエスケープゾーンも多いため、セーフティカーの出動はあまり期待できない(過去5年での出動率は20%)。
トップスピードはDRS区間の8コーナー手前で時速331km、1.2kmの距離を約14秒間エンジン全開で走るためICEへの負担が大きい。同じくDRSが使用可能な11コーナー手前でも時速320km程に達する。両コーナー手前はハードブレーキングとなるためブレーキへの負荷が大きい。エンジン全開率は57%、平均速度は時速190kmとカナダGPのジル・ビルヌーブ・サーキットとほぼ同じ。
燃料消費量はシーズンTop5に食い込む悪さ。オーストラリア、カナダ、オーストリア、ロシアに続いて燃費にキツイ。2から4コーナーはエンジン全開区間。ブレーキングポイントが多いため、エネルギー回生は問題とならない。
個性的なピットレーン
コースも然ることながらピットレーンも個性的。本線から右に分流した359.3mのピットレーンは、ホームストレート進行方向右側に配置されたピットを通り、サーキット本線を地下からくぐり抜け、左から本線に合流する特異な構造となっている。
暗く狭いそのトンネルは、タイヤ交換直後でグリップのないマシンの足元を度々滑らせる。1回のピットストップでのタイムロスは約16秒プラス制止時間。
オーバーテイク
2本のロングストレートを有するもDRSなしではオーバーテイクは困難で、ワイド&ローな車体が導入された2017年のグランプリでは、合計僅か7回のオーバーテイクが計測されるに留まった。この印象が強いためか「つまらない」との批判も少なくない。
2016年のレースでは、ラップリーダーのルイス・ハミルトン(メルセデス)が追い抜き困難な特性を利用。後続2番手を走るランキングリーダーのニコ・ロズベルグを他のマシンの餌食にすべく故意にペースを落とした。ハミルトンが4度目の王者になるにはロズベルグが4位以下になることが条件で、そのために後続マシンがロズベルグを捉えられるようペースを異様なほど落としたのだ。
年 | オーバーテイク(回) | リタイヤ(台) | ||
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通常 | DRS | 接触 | 機械的問題 | |
2016年 | 25 | 29 | 2 | 3 |
2017年 | 0 | 7 | 0 | 2 |
2018年 | 10 | 22 | 1 | 4 |
2019年 | 12 | 23 | 0 | 1 |
オーバーテイクが容易とは言えず、また、ピットレーン出口が高架をくぐった先にあるなど複雑であり、他のコースと比較してタイムロスが多くリスクも大きい事から、F1アブダビGPは例年、1ストップ戦略が主流となっている。
コースレコード
タイム | ドライバー | チーム | 年 | |
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ラップレコード | 1:39.283 | ルイス・ハミルトン | メルセデス | 2019年 |
コースレコード | 1:34.779 | ルイス・ハミルトン | メルセデス | 2019年 |
サーキットの場所
アブダビ市内からのアクセスも良く、車で30分程度の場所に位置する。アブダビ国際空港からの便も良い。
サーキット内にあるヤス・レーシング・スクールでは、アストンマーチンや3000ccのV6フォーミュラカーを使ってコース走行が体験できる他、最新鋭のコントロール・ルーム見学などが出来る。
写真で見るヤス・マリーナ
© Andrew Hone, Pirelli / 日中のヤス・マリーナ・サーキット
© Andrew Hone, Pirelli / 夕暮れのヤス・マリーナ・サーキット
© Pirelli / セクター2の始まり、アップダウンが無いことがよく分かる
© Pirelli / 2箇所目のDRSが設置されるバックストレート
© Pirelli / 低速の第3セクター