サーキット名 | シルバーストン・サーキット |
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所在国 | イギリス |
住所 | Towcester Northamptonshire NN12 8TN, UK |
設立年 | 1947年 |
設計 | ポピュラス建築事務所 |
全長 / コーナー数 | 5,891m / 18 |
周回数 | 52 |
ピット長 / 損失時間 | 509.6m / 17.3秒 |
ターン1までの距離*1 | 239m |
平均速度 | 208.7km/h |
最高速度 | 336km/h |
エンジン負荷と全開率*2 | 72% |
ブレーキ負荷 | |
燃料消費レベルと量 | 2.02kg/周 |
フューエル・エフェクト | 0.37秒/10kg |
タイヤ負荷レベル | |
ダウンフォースレベル | |
変速回数 | 37回/周 |
SC導入率 | 80% |
ウェット確率 | 4% |
WEBサイト | www.silverstone.co.uk |
SNS | twitter facebook instagram |
*1 ポールポジションから最初の制動地点までの距離 *2 全開率は距離ではなくタイムベースで算出
シルバーストン・サーキット(英:Silverstone Circuit)とは、イギリス・ノーサンプトンシャーとバッキンガムシャーをまたいだ所に位置するサーキット。第二次世界大戦で使われたイギリス空軍飛行場の跡地に建設され、三角形をした3本の滑走路がそのままコースとして使われている。ターン14へと続く直線区間が「ハンガー(英:航空機格納庫)ストレート」と呼ばれるなど、名残を残す。
1950年にF1世界選手権としての初のグランプリが開催されたサーキットで、ほぼ全てのF1チームがシルバーストン近郊に本拠地を構える。その内の2チームは10分以内という近場で、ホンダとレッドブル・レーシングも車で40分ほどのミルトン・キーンズに拠点を構える。まさに「モータースポーツの聖地」「F1のホームグランプリ」と呼ぶに相応しい。界隈は「モータースポーツビレッジ」とも呼ばれる。
Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.
シルバーストン・サーキットのホームストレート
飛行場の建設は1943年。初めてレースが開催されたのは1947年で、地元住人のモーリス・ジョーヒガンが飛行場跡地への忍込み、廃墟となった滑走路と周辺道路を使って、友人11名と共に2マイル(約 3.2km)で違法レースをしたのが始まりだった。その時ジョーヒガンがレース中に1頭の羊をはねてしまった事から”マトン(羊肉)グランプリ”と呼ばれたりもする。
初開催となった1950年5月13日のイギリスGPでは、アルファロメオ・ティーポ158を駆るジュゼッペ・ファリーナがポール・トゥ・ウインを飾り、記念すべきF1初の優勝者として名前を刻んだ。2位はルイジ・ファジオーリ、3位はレグ・パーネルと、1位から3位までをアルファロメオが独占した。
creativeCommonsSilverstone Circuits Limited
コースレイアウト
全長5.891kmのシルバーストン・サーキットはカレンダーの中で3番目に長い。これを超えるのはスパ・フランコルシャン(7.004km)とバクー市街地コース(6.003km)のみ。
有名なマゴッツ、ベケッツ、チャペルと続く超高速コーナーに代表されるように「高速サーキット」と称されるが、現在のレイアウトは低・中・高速のコーナーが混在しているため、セットアップ面で妥協が強いられる。
ダウンフォースが著しく向上した現代のF1マシンにおいては、あらゆる高速コーナーが”ストレート化”している。今やターン1・2やコップス(ターン9)、マゴッツ(ターン11)はエンジン全開区間であり、全長の約81%区間はアクセルべた踏みで、ラップタイム向上のためにはこれまで以上に高いエンジン馬力が求められる。
F1世界選手権で7度目のドライバーズチャンピオンに輝いた同国出身のルイス・ハミルトンに敬意を表し、サーキットは2020年12月12日(土)にインターナショナル・サーキットのピット・ストレートの名称を「ハミルトン・ストレート」と命名した事を発表した。個人名が付けられるのはシルバーストンでは初めてのことだった。
2箇所のDRSゾーン
DRSゾーン | 検知地点 | DRS開始地点 |
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DRS1 | ターン3の25m手前 | ターン5の30m奥 |
DRS2 | ターン11 | ターン14 |
特徴
分析され尽くしたサーキット
Courtesy Of Red Bull Content Pool
青空の下で行われた2018年のF1イギリスGP決勝レース
シルバーストンはF1の中心地ヨーロッパに位置する歴史あるコースであるだけに、1950年のF1世界選手権初開催から数えて10度の変更を経ているとは言え、ドライバーにとってもチームにとってもある種「知り尽くした」サーキットである。同じ様に古くからあるコースとしては鈴鹿やモナコ、モンツァやスパ、バルセロナなど、現在ではかなり数が限られる。
確かに、マゴッツやべケッツをはじめとするテクニカルな要素が多いためドライバーズサーキットとも称されるが、予測不可能性が低いという意味ではシャシー性能が歴然と表れるコースとも言える。
オーバーテイクとアクシデント
2018年のイギリスGPで計測されたオーバーテイク数は30回で、その内DRSを使ったオーバーテイクは21回。2019年は計23回の内、DRSを使ったものが16回だった。高速コーナーが多いことから後続車はダーティーエアーの影響を受けやすく、決して追い抜きが簡単なコースとは言えない。
2018年にホームストレートがDRS区間となり計3箇所へと増加されたものの、翌2019年には廃止となり、従来どおりウェリントンストレート(ターン5~6)と、ハンガーストレート(ターン14~15)の2箇所のみに変更された。
DRSはその仕組み上、ブレーキを踏むと同時に閉じるシステムであるため、廃止された旧DRS1ではターン1とターン2をノーブレーキで通過することで、DRS区間終了後のターン3までの間でDRSが使用出来る特殊な状況となっていた。
年 | オーバーテイク | リタイヤ | ||
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通常 | DRS | 接触 | 機械的問題 | |
2015年 | 14回 | 4回 | 4台 | 3台 |
2016年 | 16回 | 10回 | 2台 | 3台 |
2017年 | 15回 | 21回 | 1台 | 2台 |
2018年 | 9回 | 21回 | 3台 | 2台 |
2019年 | 7回 | 16回 | 3台 | 0台 |
2020年 | 12回 | 13回 | 2台 | 0台 |
低ダウンフォースコースへの変貌
ワイド&ローの現行マシンが導入される2017年以前はハイダウンフォース・トラックであったものの、以降は重いリアウィングでは1周のラップタイムでライバルを上回る事ができなくなった。
2019年のイギリスGPでは馬力不足に苦しむフェラーリ勢が極端に低いダウンフォース仕様のリアウィングを投入し、予選で4番手、決勝レースで3位表彰台の予期せぬリザルトを残した。圧倒的な優位性を誇ったメルセデスも同様の傾向で、Tウイングやガーニー・フラップを取り外している。
気紛れなブリティッシュ・ウェザー
英国特有の変わりやすく気まぐれな天気=ブリティッシュ・ウェザーは、レースをしばしば混沌に導く。風向きも比較的頻繁に変化するため、クルマのバランスとドライバーのドライビングスタイルに影響を与える。風向きの変化は、ブレーキポイントやエイペックスの通過速度、スロットルなど、あらゆる操作に影響する。
カレンダー最大の平均横G
最大荷重は5.5G(ターン13:ベケッツ、ターン15:ストウ)を超えるが、これは発射するロケットの中で宇宙飛行士が耐えなければならないGフォースの2倍に達する。
ヘルメットを着用した人間の頭の平均重量は7kgであり、ドライバーの首が35kgの力で左右に引っ張られる事を意味する。1周を通しての横方向の平均Gフォースは2.8Gで、これはカレンダーの中で最大。ポール・リカールと鈴鹿が僅差で続く。
コースレコード
決勝レースで計測される史上最速の”ラップレコード”は、2020年のイギリスGPでレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンが記録した1分27秒097。一方の”コース・レコード”は同じく2020年のイギリスGPでルイス・ハミルトンが予選Q3でマークした1分24秒303となっている。
ラップレコード | 1:27.097(フェルスタッペン/Red Bull、2020年) |
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コースレコード | 1:24.303(ハミルトン/Mercedes、2020年) |
改修の歴史
シルバーストンを所有するBRDCは、高額な開催権料に不満を募らせF1側と対立。2020年以降の存続が危ぶまれ、ロンドンのドックランズ地区を使った市街地での開催が模索されるなどしていたが、2019年のイギリスGPを前に、英国国会議員を務めるジェフリー・ドナルドソンとピーター・ヘインの両氏がF1のチェイス・ケアリーCEOと会談。一転して2024年までの存続が決定した。
1952年 | コントロールラインがファームストレート(かわいい名前)から現在の位置へ |
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1973年 | ジョディ・シェクターがウッドコート(Woodcote)コーナーでスピンし、ピットレーンに突っ込んだことをきっかけにタイヤバリアが設置 |
1975年 | ウッドコートにシケインを設置 |
1990年 | グランプリ終了後、翌年開催に間に合うように再び改修工事 |
1994年 | セナの事故死を受けて、減速と安全性向上のためにストウコーナーと全開のアビーをはじめ大幅に改修 |
2010年 | コース改修。新たに760mのストレートおよび低速コーナーが加わり、モンツァ・サーキットと並ぶ高速サーキットに変貌 |
2018年 | 路面全面再舗装 |
2019年 | 路面全面再々舗装 |
2018年に路面を全面再舗装したものの、排水性の悪さ故に同年のMotoGP第12戦イギリスGPでは3箇所を骨折したティト・ラバットを含む5名のライダーが転倒。雨のために全クラスの決勝が中止を余儀なくされ、主催者はチケットの払い戻しを行った。約350万ポンドの損失を被った。
F1ドライバーからも不評で、ルイス・ハミルトンは「史上最悪の仕事だ」と酷評した。
MotoGPを統括する国際モーターサイクリズム連盟はシルバーストンのライセンスを取り消しとする処分を下し、再発行の条件として運営者側に路面の全面再舗装を要求。シルバーストンは前回再舗装を依頼したAggregate Industries社ではなく、約370万ポンドを費やしてイタリアのサーキットコンサルタント会社であるDromoに再々舗装の発注を出した。ターマック・トレーディング社が再々舗装を請け負った。
新たなサーフェスは従来の6倍の強度を誇るアスファルト混合物で施工され、2019年の6月末に工事が完了。F1イギリスGPは2年連続で未知の路面でのレースを行う事となった。
シルバーストンは一件を巡り、2022年にAggregate Industries社に約800万ポンド(約13億2,669万円)の損害賠償を求める訴えを起こした。