バクー市街地コース
サーキット名 | バクー市街地サーキット |
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所在国 | アゼルバイジャン |
住所 | 93, Zarifa Aliyeva, Bakı, Azerbaijan |
設立年 | 2016年 |
設計 | ヘルマン・ティルケ |
全長 / コーナー数 | 6,003m / 20 |
最大高低差 | 46m |
周回数 | 51 |
ピット長 / 損失時間 | 323.9m / 1.5秒 |
ターン1までの距離*1 | 138m |
平均速度 | 199km/h |
最高速度 | 378km/h |
エンジン負荷と全開率*2 | 65% |
ブレーキ負荷 | |
燃料消費レベルと量 | 2.06kg/周 |
フューエル・エフェクト | 0.34秒/10kg |
タイヤ負荷レベル | |
ダウンフォースレベル | |
グリップレベル | |
変速回数 | 70回/周 |
SC導入率 | 50% |
WEBサイト | www.bakucitycircuit.com |
SNS | twitter facebook instagram |
*1 ポールポジションから最初の制動地点までの距離 *2 全開率は距離ではなくタイムベースで算出
バクー市街地コース(英:Baku City Circuit)とは、アゼルバイジャンの首都バクーに仮設される市街地コースのこと。バクー・シティー・サーキットとも呼ばれる。2016年にヨーロッパGPの舞台として初めてF1が開催され、翌17年以降はアゼルバイジャンGPと名を変えた。
石油が豊富な元ソビエト連邦のアゼルバイジャンは、ロシアとイランに挟まれた位置にありコーカサス山脈とカスピ海に面している。ロシアGPが行われるソチから僅か900km南の場所だ。
日本人にはあまり馴染みがないと言えるが、分類としてはヨーロッパ圏に属する国家で、近年はヨーロッパの各種スポーツ大会や音楽大会などを精力的に誘致・開催している。当初ヨーロッパGPと呼ばれていたのもこれが一因と言われる。
「バクー」という名前は、ペルシャ語で「風の街」を意味する「バド・クーイ」や、「風が吹きつける」という意味の「バド・クベ」に由来しており、常に強風が吹くことで知られている。
F1はアゼルバイジャンとの間で2026年までの開催契約を締結している。
- 半モンツァ、半モナコ
- コースレイアウト
- 世界最速のストリートサーキット
- オーバーテイク容易な異色の公道コース
- セットアップとメカから見るバクー
- クラッシュ必至、混乱のレースとなる理由
- 困難なタイヤウォームアップ
- コースレコード
- F1アゼルバイジャンGP歴代ウィナーとポールシッター
- サーキットの場所と画像
半モンツァ、半モナコ
バクー市街地コースは、ヘイダル・アリエフ・センターなどの近代的な建物が並ぶ起伏の少ないセクター1と、中世の城壁が目を引く旧市街の起伏激しく狭く曲がりくねったセクター2、そしてカスピ海に面したアクセル全開で駆け抜けるセクター3で構成される。
ツイスティな旧市街区間はモンテカルロの街並みに似た雰囲気があり、ロングストレートとビッグブレーキングはイタリアのグランプリ会場を彷彿とさせるため「半モンツァ、半モナコ」と称される事が多い。
旧市街を周るコースは砂利道であるため、グランプリ開催に合わせて一時的にアスファルトが舗装される。
コースレイアウト
F1サーキットでお馴染みのヘルマン・ティルケ率いるティルケ・エンジニアリングが手がけたサーキット。F1カレンダーの中で最も狭いコース幅を有しており、9コーナーと10コーナーの間の区間は横幅が7.6mしかない。F1マシンはここのタイトなセクションを時速100km以上のスピードで駆け抜けていく。
1周の長さはベルギーGPの舞台であるスパ・フランコルシャンに次ぐおよそ6km。最も低速になるのは4コーナーで3速88km/h、16コーナーから1コーナーまでの2.22kmはエンジン全開区間となる。タイヤへの負荷は比較的軽微で、例年1ストップ戦略が主流。
© Pirelli & C. S.p.A. / F1カレンダーの中で最もタイトなバクー市街地コースの9コーナーと10コーナー
DRSゾーンは2箇所に設置される。
DRS検知地点 | DRS稼働地点 | |
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DRS1 | ターン2の手前のSC2ライン | ターン2の54m先 |
DRS2 | ターン20 | ターン20の447m先 |
世界最速のストリートサーキット
2016年にバルテリ・ボッタス(ウィリアムズ)がF1での最高速記録を更新する378km/hをマークした事から、世界最速のストリートサーキットと呼ばれたが、現在では一周の平均速度が高いジェッダ市街地コースが「F1史上最速の市街地コース」を標榜している。
これほどのトップスピードが記録されるのは、ターン19からターン1まで続く約2.19kmもの超ロング・ストレートの存在による。この区間はシーズン最長のエンジン全開区間で、スパ・フランコルシャンのターン1からターン5までの区間より約200メートル長い。
そのためエネルギー回生(ERS)にも厳しく、スパ・フランコルシャンやレッドブル・リンクなどと並び、1周もたずにデプロイメントが切れてしまう。
https://www.youtube.com/watch?v=zV0HmON8auo
オーバーテイク容易な異色の公道コース
通常、公道サーキットでのオーバーテイクは困難だがバクーは例外だ。2019年のアゼルバイジャンGPでは、通常のオーバーテイク(DRSを使用しないオーバーテイク)の回数が37回と、その年のレースの中で最も多かった。
年 | オーバーテイク | リタイヤ | ||
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通常 | DRS | 接触 | 機械的問題 | |
2023年 | 12回 | 9回 | 1台 | 1台 |
2022年 | 3回 | 17回 | 0台 | 4台 |
2021年 | 11回 | 10回 | 1台 | 1台 |
2020年 | 中止 | |||
2019年 | 37回 | 18回 | 2台 | 2台 |
2018年 | 25回 | 20回 | 6台 | 0台 |
2017年 | 26回 | 24回 | 2台 | 4台 |
2016年 | 20回 | 47回 | 0台 | 4台 |
セットアップとメカから見るバクー
ダウンフォース
理想的にはコーナーでは高ダウンフォースを、そしてストレートでは低ダウンフォースを望みたいところだが、そんなものは実現不可能であり、チームは妥協点を見つけ出し、ミディアムダウンフォースの構成を選択する事になる。
初開催の際は各チームともにストレートでのトップスピードを重視した方が最終的なアドバンテージが高いと判断。空気抵抗の少ない低ダウンフォースのパッケージを持ち込んだが、翌年以降はダウンフォース量を増やしたため、以降は最高速度が低下した。
超高速のモンツァ仕様のウイングを持ち込む程ではないが、スパ・フランコルシャンやジル・ビルヌーブ・サーキットと同程度のダウンフォースレベルをつけるチームが多い。
タイヤ
コーナーが短いバクーでは、1周を通してステアリングを切る時間と角度が小さいためタイヤへの熱入れが難しく、各チームはブレーキ熱に頼る事になる。そのため、柔らかいコンパウンドは逆にオーバーヒートのリスクがある。
ギアシフト
全長が長くロングストレートがあるため、ギアボックス的にはかなりタフなコースで、1周あたり約70回ものギアシフトが行われる。これはF1サーキットとしては最大で、約66回のシンガポールがこれに次いで2番目に多い。
ブレーキ
バクーはF1カレンダーの中で最もブレーキエネルギーレベルが高いサーキットの一つで、2G以上を記録するブレーキングゾーンが8箇所存在する。ただし0.4秒以上にわたって4G以上を発生させるヘビー・ブレーキングゾーンがなく、これはF1カレンダーの中で3つしか存在しない。
クラッシュ必至、混乱のレースとなる理由
2016年の初開催では7台がリタイヤを喫して、非力なウィリアムズのランス・ストロールが3位表彰台を獲得。続く第2回大会となった2017年もまた7台がDNF。フォース・インディアのセルジオ・ペレスが3位になるなど、例外なく波乱と混乱が起きている。
その理由の一つは、モナコGPの舞台であるモンテカルロ市街地コースと同様に、コース脇にランオフエリアがなく、鉄製のガードレールやコンクリート等、僅かな接触によってマシンが大きなダメージを負う点にある。
ただしモナコとは異なり、ドライバーへの精神的ストレスは低い。バリアには余裕があり、またストレートも多いためステアリング上のスイッチ操作は容易で、横Gもターン18の3.8Gが最大と、F1としては最も低い部類に属する。
もう一つの主たる理由はロングストレート。あまりにも長いためタイヤとブレーキの温度が大幅に下がってしまい、フロントグリップと制動力が失われてしまう。
インシデントによってセーフティーカーが出動した場合、ラップリーダーは不利な状況に置かれる。リスタートの際に、ロングストレートで後続車にスリップストリームを与えてしまうため、ターン1でオーバーテイクされる危険性が高いためだ。
困難なタイヤウォームアップ
バクーでタイヤを最適なワーキングレンジに入れる事は難しい。概ねピレリタイヤは100度前後で動作するが、アゼルバイジャンGPはシーズンの比較的早い時期に行われれるため、路面温度が非常に低くなる傾向にある。2018シーズンのセッションでは平均25度程度であった。
たとえ晴天に恵まれたとしても、トラックの大部分は建物の影に隠れてしまうため、路面温度が上昇する事はない。レース中にセーフティーカーが出動すると、タイヤに熱を入れることは非常に難しく、リスタート直後は混乱が発生しやすい。
ただ2019年大会では予想外に路面温度が上昇。ソフトが機能せず、ミディアムがレースのメインタイヤとなった。
コースレコード
決勝レースで計測される史上最速の”ラップレコード”は、2019年にフェラーリのシャルル・ルクレールが記録した1分43秒009。一方の”コース・レコード”は同年にメルセデスのバルテリ・ボッタスが予選Q3でマークした1分40秒495となっている。
タイム | ドライバー | チーム | 年 | |
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ラップレコード | 1:43.009 | シャルル・ルクレール | フェラーリ | 2019年 |
コースレコード | 1:40.495 | バルテリ・ボッタス | メルセデス | 2019年 |
F1アゼルバイジャンGP歴代ウィナーとポールシッター
※2016年は「ヨーロッパGP」の名のもとに開催された。
開催年 | ドライバー | チーム | タイム | |
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2024 | 優勝 | オスカー・ピアストリ | マクラーレン | 1:32:58.007 |
ポール | シャルル・ルクレール | フェラーリ | 1:41.365 | |
2023 | 優勝 | セルジオ・ペレス | レッドブル・ホンダRBPT | 1:32:42.436 |
ポール | シャルル・ルクレール | フェラーリ | 1:40.203 | |
2022 | 優勝 | マックス・フェルスタッペン | レッドブル・RBPT | 1:34:05.941 |
ポール | シャルル・ルクレール | フェラーリ | 1:41.359 | |
2021 | 優勝 | セルジオ・ペレス | レッドブル・ホンダ | 2:13:36.410 |
ポール | シャルル・ルクレール | フェラーリ | 1:41.218 | |
2019 | 優勝 | バルテリ・ボッタス | メルセデス | 1:31:52.942 |
ポール | バルテリ・ボッタス | メルセデス | 1:40.495 | |
2018 | 優勝 | ルイス・ハミルトン | メルセデス | 1:43:44.291 |
ポール | セバスチャン・ベッテル | フェラーリ | 1:41.498 | |
2017 | 優勝 | ダニエル・リカルド | レッドブル・タグホイヤー | 2:03:55.573 |
ポール | ルイス・ハミルトン | メルセデス | 1:40.593 | |
2016 | 優勝 | ニコ・ロズベルグ | メルセデス | 1:32:52.366 |
ポール | ニコ・ロズベルグ | メルセデス | 1:42.758 |
サーキットの場所と画像
スタートラインは海抜-24.7m、標高が最も硬い所でも2.1mしかなく、コースの殆どが海よりも低いのが特徴。
© Pirelli & C. S.p.A. / エンジン全開区間が始まるターン16
© Pirelli & C. S.p.A. / 脇にお城がそびえ立つターン10
© Pirelli & C. S.p.A. / ターン8からターン9にかけての区間はグランプリ開催に合わせて一時的にアスファルトで舗装される