メディアデーのためにシルバーストン・サーキット入りした角田裕毅(レッドブル)、2025年7月3日(木) F1イギリスGP
Courtesy Of Red Bull Content Pool

角田裕毅、ホーナーとマルコからの「これまで以上のサポート」を実感─苦戦続く中でもレッドブル首脳陣から寄せられる信頼

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シルバーストン・サーキットに立つ角田裕毅の表情は、先週末と比べて幾らか穏やかだった。前戦オーストリアGPでは最下位に終わり、レッドブル昇格後6回目の無得点という厳しい現実に直面した。それでも彼の口から出たのは、チーム首脳陣への感謝の言葉だった。

「特に最近は、クリスチャン(チーム代表のホーナー)やヘルムート(アドバイザーのマルコ)から、これまで以上にサポートされていると実感しています」

2025年F1第12戦イギリスGPを前に、角田は確信を込めてそう語った。

ドライバープレスカンファレンスに出席する角田裕毅(レッドブル)、2025年7月3日(木) F1イギリスGP(シルバーストン・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

ドライバープレスカンファレンスに出席する角田裕毅(レッドブル)、2025年7月3日(木) F1イギリスGP(シルバーストン・サーキット)

最下位の翌週、首脳陣からの意外な提案

オーストリアGPは角田にとって悪夢のような週末だった。予選でQ1敗退を喫し、決勝ではフランコ・コラピント(アルピーヌ)との接触により10秒ペナルティ。唯一の2周遅れ、最下位の16位という結果に終わった。

だが、レース後にチーム首脳陣から届いたのは、思いがけない提案だった。

「気分転換のために、フィジオと一緒にイギリス南部に行ったのですが、それは彼らからの提案でした。おかげで、自分のリズムを整える上で、大きな助けになりました」

角田が「全面的なサポートを得ているのは間違いない」と確信する背景には、こうした細やかな配慮がある。この出来事は、チームからの信頼を改めて実感する機会となった。

「率直な人」マルコからの変わらぬ支援

レッドブルにおける”セカンドドライバー問題”は、ダニエル・リカルドのルノー移籍以来、繰り返し取り沙汰されてきた。チームは時に、シーズン途中でドライバーを交代させる非情な決断を下してきたが、マルコは以前から角田のシート継続を明言している。

「『2戦後に交代させる』なんて言われるより、ずっといいですよね」角田は冗談まじりにそう語りながらも、次のように続ける。

「オーストリアでの僕のレースに彼(マルコ)が満足していなかったことは明らかですが、それでも変わらず、僕の才能とスピードを信じてサポートしてくれているので、何としても結果で証明しなければと思っています」

スプリントに向けてガレージ内でヘルムート・マルコと話す角田裕毅(レッドブル・レーシング)、2025年5月3日(土) F1マイアミGP(マイアミ・インターナショナル・オートドローム)Courtesy Of Red Bull Content Pool

スプリントに向けてガレージ内でヘルムート・マルコと話す角田裕毅(レッドブル・レーシング)、2025年5月3日(土) F1マイアミGP(マイアミ・インターナショナル・オートドローム)

マルコについては「率直な人」と評し、「悪いレースをすれば、何が良くて何が悪かったかをはっきり指摘してくれる」と語る。

その厳しさは時にプレッシャーにもなるが、「自分でも引き出せなかったパフォーマンスを導き出してくれる存在」であるとして、ジュニア時代から続く支援に感謝を示した。

角田が受けている信頼は、言葉の端々からもうかがえる。

「これまで試したことのない幾つかの取り組みを行う予定なのですが、それを彼らが許可してくれるというのは、通常ではあまりないことだと思います」

狼狽えぬメンタリティ

リアム・ローソンに代わって第3戦日本GPからレッドブルに昇格した角田だが、これまでの9戦で獲得したポイントは7点にとどまる。この現実を、角田は冷静に受け止めている。

オーストリアでの接触についても、「問題は僕自身にありました。あの状況では無理に仕掛けず、1周待つべきでした」と自らの責任を認めた。

マクラーレンのザク・ブラウンCEOが「フェルスタッペンがいなければ、レッドブルはレーシング・ブルズより下位になるだろう」と発言したことについても、角田は特に意に介すこともなく、淡々と受け止めた。

「今現在の僕のパフォーマンスを考えれば、確かにそうかもしれません」

「フェルスタッペン専用マシン」という見方

F1界ではしばしば、レッドブルのマシンは「フェルスタッペン専用車」と評される。

角田は、「これまでのところ、このクルマにすぐに適応できたドライバーは見たことがありません」と語り、適応にはより多くの時間が必要だと強調した。

一方で、フェルスタッペンと完全に同じパッケージが与えられれば、少なくともショートランに関しては「チームが期待するレベルに到達できる自信があります」と断言。

「今はまだ”理解を積み重ねていく段階”だと思っていますが、そのアプローチが間違っているとは思っていません。ただ、少し時間がかかるというだけです」と手応えを口にした。

決勝前にパドックで談笑するマックス・フェルスタッペンと角田裕毅(ともにレッドブル・レーシング)、2025年5月4日(日) F1マイアミGP(マイアミ・インターナショナル・オートドローム)Courtesy Of Red Bull Content Pool

決勝前にパドックで談笑するマックス・フェルスタッペンと角田裕毅(ともにレッドブル・レーシング)、2025年5月4日(日) F1マイアミGP(マイアミ・インターナショナル・オートドローム)

新たなスタイルへの挑戦

角田は新しいアプローチに挑戦する意欲を見せている。最大の課題はロングランであるとし、「これまで考えもしなかった幾つかのことを試してみようと思っています。なので、今週末が本当に楽しみです」と語った。

それは「自分のF1キャリアの中でこれまで試したことのなかった幾つかのドライビングスタイル」だという。

一方、ショートランに関しては「自分が求める自信のレベルに、まもなく到達できることを期待しています」と前向きな手応えを語った。

結果で応える覚悟

現在の角田にとって必要なのは、早急な結果の追求ではなく、チームと一体となって積み重ねていくプロセスであり、それを可能にしているのが、ホーナーとマルコという2人の首脳から寄せられる確かな信頼と支援だ。

首脳陣の信頼とサポートに応えるためにも、結果で自身の存在意義を証明したいという角田。その思いが、今の角田の原動力の一つになっていることは間違いなさそうだ。

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