角田裕毅(レッドブル・レーシング)、2025年7月6日(日) F1イギリスGP決勝前のドライバーズパレードにて
Courtesy Of Red Bull Content Pool

角田裕毅の苦戦にホーナーが見た“90年代の記憶”─苦境打開に向け新たな取り組み

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角田裕毅が現在直面している問題について、レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は、かつて1990年代にミハエル・シューマッハと共にフェラーリで戦ったエディ・アーバインの状況と重ね合わせている。

シューマッハとアーバインの4年間が示すもの

1996年から1999年までの4年間、アーバインは、後の7度のF1ワールドチャンピオン、シューマッハとコンビを組んだ。当時のフェラーリは、フロントの応答性が非常に高く、ステア操作に対して素早くマシンが反応する特性を備えていた。

これはシューマッハの強みを活かす一方、アーバインにとっては試練だった。結果は歴然としていた。シューマッハが19勝を挙げた一方で、アーバインはわずか4勝にとどまった。才能を疑う余地のないドライバーでありながら、その力を発揮し切ることはできなかった。

現在の角田も、同様の状況に置かれている可能性がある。レッドブル昇格後の10戦を終えて獲得したポイントはわずか7ポイント。これは、ドライバーとしての彼の能力を示す数字というよりは、むしろRB21がマックス・フェルスタッペンの要求に応える形で開発され続けてきたがゆえの“構造的な帰結”なのかもしれない。

決勝前のグリッドでエディ・アーバインと言葉を交わすクリスチャン・ホーナー(レッドブル代表)、2025年5月4日(日) F1マイアミGP(マイアミ・インターナショナル・オートドローム)Courtesy Of Red Bull Content Pool

決勝前のグリッドでエディ・アーバインと言葉を交わすクリスチャン・ホーナー(レッドブル代表)、2025年5月4日(日) F1マイアミGP(マイアミ・インターナショナル・オートドローム)

7年にわたり続くセカンドドライバー問題

2018年末のダニエル・リカルド離脱以降、レッドブルはフェルスタッペンに迫る速さを発揮できるセカンドドライバーを見いだせずにいる。ピエール・ガスリー、アレックス・アルボンと試行錯誤を重ね、セルジオ・ペレスも2024年末でチームを去ることになった。

後任に選ばれたリアム・ローソンはわずか2戦でレーシング・ブルズへ戻され、代わって角田が昇格。ホーナー、ヘルムート・マルコ双方から2025年シーズン末までのシートが保証されているものの、現状では彼らの期待に応えられるような成績を残せていない。

角田のための新たなアプローチ

角田が6戦連続でQ3進出を逃したイギリスGP予選を終えて、ホーナーはこう語った。

「ちょうど、エディ・アーバインと話をしたんだが、(角田の現状は)90年代にフェラーリで彼がミハエル・シューマッハとの間で経験したことにかなり似ているようだ」

「彼(シューマッハ)のような卓越したドライバーは、極めて鋭いフロントアクスルを持つ極端な設計のマシンを操ることができるが、そうしたクルマを扱えるドライバーはほとんどいない」

「だからこそ我々は、少しでも状況を落ち着かせるために、ユーキに対して異なるアプローチを模索しているんだ」

だが現時点では、こうしたアプローチも目立った効果を上げておらず、角田はシルバーストンでのレースを2戦連続となる最下位で終えた。アーバインとシューマッハの教訓をいかに現代に活かすか――角田とレッドブルの試行錯誤は、今なお続いている。

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