劇的展開と驚愕の結末、今季初雨でフェルスタッペンが2勝目 / F1ドイツGP《決勝》結果とダイジェスト
ホッケンハイムリンクでの今季初ウェットレースは、過去10年来最高レベルにエキサイティングな展開を経て、劇的な結末と共に幕を下ろした。2019シーズンF1世界選手権 第11戦ドイツGP決勝レースが7月28日に行われ、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンが後続を7.3秒引き離し、キャリア通算7回目、今季2度目の優勝を飾った。ドライバー・オブ・ザ・デイとファステストラップをも手する完全勝利だった。
2位はフェラーリのセバスチャン・ベッテル。エンジントラブルのために予選ノータイム最下位となり、最後尾からスタートした母国の英雄が大逆転レースを演じた。3位表彰台はトロロッソ・ホンダのダニール・クビアト。前日に第一子が生まれ父親となったばかりのロシア人ドライバーが、ファエンツァのチームに2006年以来、チーム創設2度目の表彰台を献上した。
3つのポディウムの内の2つをホンダエンジン勢が占拠。3名のドライバーは皆、レッドブルジュニアの出身だった。
ワークス参戦200戦目の節目を迎えた母国レースのメルセデスAMGは、ポールシッターのルイス・ハミルトンがポイント圏外の11位フィニッシュ。バルテリ・ボッタスは一時2番手を走行していたものの、最終盤に濡れた路面の餌食となり、リタイヤに終わった。
タイトルスポンサーを務めたホームレースでノーポイントかと思われたが、レース終了後にアルファロメオ勢に車両規定違反が発覚。7位のキミ・ライコネンと8位のアントニオ・ジョビナッツィに30秒加算ペナルティが科せられ、ハミルトンが繰り上がり10位となり、辛うじてポイントを獲得した。
前戦イギリスGPから2週間後に行われた第11戦の舞台は、今年限りで見納めとなる可能性があるホッケンハイムリンク。規約では、レースで最低2種類のコンパウンドを使用する義務を科しているが、日曜の現地は雨に見舞われ、今シーズン初のウェットレース宣言が出されたため免除となった。
今シーズン初めて雨用タイヤを履くといった事情もあり、チャンピオンシップポイントを争う決勝のフォーメーションラップは、セーフティーカー先導でスタートした。気温は21.2℃、路面は25.9℃、湿度は88.3%のウェットコンディション。レース周回数は67周だが、フォーメーションラップが3周に渡った結果、64周での争いとなった。
コンディションはウェットとドライの間を行き来し、チェッカーまで刻々と変化し、完走は僅かに13台。状況を的確に読み取った者が報われ、見誤った者はその代償を支払った。フィニッシュしたマシンの大部分は、5回以上のピット作業を行った。
注目のオープニングラップでは、偶数列のレッドブル・ホンダ勢がスタートで失敗し後退。2番グリッドのフェルスタッペンはボッタスに先行を許し3番手に、4番グリッドのガスリーは8番手にまでポジションを下げた。その一方で、大ベテランのキミ・ライコネン(アルファロメオ)が3番手に、雨のレースに定評のあるニコ・ヒュルケンベルグ(ルノー)が5番手にポジションアップ。最後尾スタートのベッテルは6つ順位を上げた。
路面状況は想像以上に悪く、上空高くにまで水しぶきが上がる状況が続いた。2周目にはセルジオ・ペレス(レーシングポイント)が単独スピンを喫しクラッシュ。リタイヤ第一号となった。
黄旗の提示と同時にセーフティーカーが導入され、このタイミングで各車一斉にピットイン。ケビン・マグヌッセン(ハース)、ランス・ストロール(レーシングポイント)、ランド・ノリス(マクラーレン)、そしてウィリアムズのジョージ・ラッセルとロバート・クビサを除く全車が、浅溝のインターミディエイトに履き替えた。
リスタート後は徐々に水しぶきも収まり、路面状況が改善。フルウェットを履き続けていたステイアウト組は、アンダーグリーンでのピットインを強いられグリッド後方へと転落していった。ガスリーはターン1でコースオフ。一気に最後尾にまで後退した。
ピットレーン上では、ロマン・グロージャン(ハース)とシャルル・ルクレール(フェラーリ)がニアミス。スチュワードはこのインシデントに対して、フェラーリチームに対する罰金裁定を下した。
2台目のリタイヤは15周目。12番手を走行していたダニエル・リカルド(ルノー)がエンジンブロー。白煙を巻き上げながらコース上に大量のオイルを撒き散らし、レースコントロールはバーチャル・セーフティカー(VSC)の導入を決定した。
これを機に、ルクレールとヒュルケンベルグがピットイン。摩耗したタイヤでの走行を嫌い、新品インターミディエイトに履き替えコースに戻った。この時すでにレーシングラインの一部は乾き切っていたものの、今後数十分に渡って雨が予想されていたため、晴れ用のスリックタイヤに履き替えるわけにもいかず、各車我慢比べのレース展開となった。
そんな中、23周目にマグヌッセンがギャンブルに出た。摩耗したインターに耐え切れず、晴れ用のソフトタイヤにチェンジ。ベッテルもこれに続いてソフトコンパウンドに履き替えた。結果、この判断が功を奏し、両者はポジションを上げた。3番手を走行していたフェルスタッペンは逆転の可能性にかけ、残り全てを走り切ることを想定した上でミディアムにチェンジ。各車ここで続々とピットへとなだれ込んだ。
3台目のリタイヤは28周目。リカルドと同じルノー製エンジンを使うノリスがパワーロスを訴えた。再びVSCが導入され、この僅かのタイミングでルクレールとハミルトン、サインツ、アルボンがピットイン。大きなアドバンテージを得た。
VSCの解除直後、優勝争いの可能性が見え始めていたルクレールが最終コーナーでクラッシュ。ルクレールはそれまでに2度、同じ場所でコースオフを喫していた。更に、トップを走行していたハミルトンが同じく最終コーナーでバランスを崩し、壁に接触した。
ルクレールはグラベルにハマり戦線離脱。ハミルトンは接触の影響でフロントウイングが破損したものの、辛うじて緊急ビットイン。だが、タイヤの用意が整っているわけもなく、大きくタイムを失い5番手にまで後退した。更に、指定された手順でピットへと進入しなかったため、5秒のタイムペナルティが科された。
ルクレールのマシン回収のために2度目のセーフティーカーが出動。雨脚が強まっていたため、スリック勢はインターへの履き替えを強いられた。フェルスタッペンがラップリーダー、2番手はヒュルケンベルグ、3番手にボックス、そして4番手には16番手スタートのアルボンが並び、レースは34周目にリスタートを迎えた。
アクシデント祭りは終わらない。37周目には、ルクレールと全く同じ場所で母国ヒュルケンベルグがクラッシュ。キャリア初の表彰台獲得は、またもお預けとなった。このアクシデントの直前には、ライコネンが同じ場所で同じように挙動を乱しポジションを失っていた。
路面が再び乾きつつあったため、ストロール、クビアト、そしてマグヌッセンの3台がいち早くソフトタイヤにチェンジ。その翌周に、レース終了まで降雨の恐れなしとの報を受けた各車が一斉にピットへとなだれ込み、晴れ用のソフトタイヤに変更した。この1周の差が、クビアトの3位表彰台を演出する事となった。
素早い判断が功を奏し、ストロールが一時的にラップリーダーに。クビアトは3番手、マグヌッセンは5番手と、大きくポジションを上げた。交換に出遅れたハミルトンは12番手に後退。迅速に対処したフェルスタッペンはあっという間にストロールを交わしトップの座を奪還した。
51周目、クビアトが直線区間でDRSを使ってストロールをオーバーテイク。2番手に浮上したことで、ホンダ1-2フィニッシュの可能性が見えてきた。53周目にはハミルトンが再びコースオフ。ターン1のイン側縁石に乗り上げスピンを喫し、さらにトップとの差を拡大させることとなった。タイヤにフラットスポットを負ったため緊急ピットイン。15番手最下位まで転落した。
ハミルトンの仇討ちを託されたボッタスであったが、3番手を走行していた57周目にまさかのクラッシュ。チームメイトと同じように、ターン1のクリッピングポイントでマシンを滑らせ、そのままウォールに激突した。マシン回収の為に3度目のセーフティーカーが導入された。
隊列が整理された60周目、残り5周の超スプリントレースが開始された。ガスリーはアルボンとの接近戦でフロントウィングを脱落。タイヤをパンクさせてしまい、そのままコース外へ。あと2周というところでリタイヤを喫した。クビアトはベッテルの前に為す術もなく3番手に後退。フェルスタッペンは変わらず圧倒的なペースを刻み、今季2度目のトップチェッカーを受けた。
2019年F1第11戦ドイツGP決勝リザルト
Pos | No | Driver | Team | Laps | Time | PTS |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 33 | フェルスタッペン | レッドブル | 64 | 1:44:31.275 | 26 |
2 | 5 | ベッテル | フェラーリ | 64 | +7.333s | 18 |
3 | 26 | クビアト | トロロッソ | 64 | +8.305s | 15 |
4 | 18 | ストロール | レーシングポイント | 64 | +8.966s | 12 |
5 | 55 | サインツ | マクラーレン | 64 | +9.583s | 10 |
6 | 23 | アルボン | トロロッソ | 64 | +10.052s | 8 |
7 | 8 | グロージャン | ハース | 64 | +16.838s | 6 |
8 | 20 | マグヌッセン | ハース | 64 | +18.765s | 4 |
9 | 44 | ハミルトン | メルセデス | 64 | +19.667s | 2 |
10 | 88 | クビサ | ウィリアムズ | 64 | +24.987s | 1 |
11 | 63 | ラッセル | ウィリアムズ | 64 | +26.404s | 0 |
12 | 7 | ライコネン | アルファロメオ | 64 | +42.214s | 0 |
13 | 99 | ジョビナッツィ | アルファロメオ | 64 | +43.849s | 0 |
14 | 10 | ガスリー | レッドブル | 61 | DNF | 0 |
NC | 77 | ボッタス | メルセデス | 56 | DNF | 0 |
NC | 27 | ヒュルケンベルグ | ルノー | 39 | DNF | 0 |
NC | 16 | ルクレール | フェラーリ | 27 | DNF | 0 |
NC | 4 | ノリス | マクラーレン | 25 | DNF | 0 |
NC | 3 | リカルド | ルノー | 13 | DNF | 0 |
NC | 11 | ペレス | レーシングポイント | 1 | DNF | 0 |
コンディション
天気 | 雨 |
---|---|
気温 | 21.2℃ |
路面温度 | 25.9℃ |
周回数 | 64 |
セッション概要
グランプリ名 | F1ドイツGP |
---|---|
レース種別 | 決勝 |
レース開始日時 |
サーキット
名称 | ホッケンハイムリンク |
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設立 | 1932年 |
全長 | 4574m |
コーナー数 | 17 |
周回方向 | 時計回り |