2018年仕様のホンダ製F1パワーユニットRA618H
Courtesy Of Honda

激化するF1エンジン開発競争、年間上限制限への違反なく2019年を戦い抜いたのは2台のみ

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2019年シーズンのF1世界選手権で、テクニカルレギュレーションで規定されたエンジン基数内でシーズンを戦いきり、一度たりとも降格ペナルティを受けなかったのは、全20台中、ワークスメルセデスのルイス・ハミルトンと、ハースのロマン・グロージャンの2台のみであった。

とは言え、21戦全てのレースで完走したハミルトンとは異なり、グロージャンは開幕2連戦を含む全7戦でリタイヤ。ハミルトンがシーズンを通して決勝で1262ラップを走行したのに対し、グロージャンは1043ラップ(ハミルトンの約5分の4、2レース相当分)に留まっているため、唯一消化しきったのはメルセデス製F1パワーユニット「M10 EQ Power+」のみ、と言えそうだ。

1.6リッターV6ハイブリッド・ターボ導入6年目の今年は、ICE=内燃エンジン、TC(ターボチャージャー)MGU-Hが年間3基、ES(バッテリー)、CE(コントロール・エレクトロニクス)MGU-Kが年間2基までに制限され、これを越える交換を実施した場合はグリッド降格ペナルティが科せられるルールとなっていた。

今季と同じく全21戦で構成され、同じ基数制限で開催された2018年シーズンは、メルセデス、フェラーリ、ウィリアムズ、フォース・インディア、ハースの各2台及び、ザウバーのシャルル・ルクレールの計11台が降格なしにシーズンを乗り切っていた。対して今季は僅か2台。異様とも言える程に激減した。

パワーユニット交換の必要が生じるのは、信頼性に関するトラブルや故障以外にも、クラッシュや事故などによる損傷といった理由もある。だが、今季投入されたパワーユニットコンポーネントの劇的な増加は、PU開発競争の激化と無縁ではないだろう。

猛烈な開発曲線を描くフェラーリと、ハイブリッド時代の王座を死守せんとするメルセデス。リスクを取ったアップデートの投入、信頼性を犠牲にしてでも高出力モードを多用しなければならない機会の増加等など、無違反が実質的に1台に留まったのは、バックヤードでの激しい攻防戦の表出と言えそうだ。

2019年F1:パワーユニット投入状況

Team Driver ICE TC MGU-H MGU-K ES CE
Mercedes ルイス・ハミルトン 3 3 3 2 2 2
Mercedes バルテリ・ボッタス 5 5 5 3 2 2
Ferrari セバスチャン・ベッテル 3 3 3 2 2 3
Ferrari シャルル・ルクレール 4 3 3 2 2 2
RBR Honda マックス・フェルスタッペン 5 4 4 3 3 3
RBR Honda アレックス・アルボン 5 5 5 4 3 3
Renault ダニエル・リカルド 5 4 4 4 3 4
Renault ニコ・ヒュルケンベルグ 6 4 4 3 2 3
Haas Ferrari ロマン・グロージャン 3 3 3 2 2 2
Haas Ferrari ケビン・マグヌッセン 3 3 3 2 2 3
McLaren Renault カルロス・サインツ 6 5 5 5 5 4
McLaren Renault ランド・ノリス 4 4 4 4 4 4
Racing Point Mercedes セルジオ・ペレス 5 5 5 4 2 2
Racing Point Mercedes ランス・ストロール 4 4 4 2 1 1
Alfa Romeo Ferrari キミ・ライコネン 4 3 3 2 2 3
Alfa Romeo Ferrari アントニオ・ジョビナッツィ 4 4 4 2 2 4
Toro Rosso Honda ダニール・クビアト 7 7 7 6 3 3
Toro Rosso Honda ピエール・ガスリー 7 5 5 5 3 3
Williams Mercedes ジョージ・ラッセル 3 3 3 2 3 3
Williams Mercedes ロバート・クビサ 4 4 4 2 2 2