
説明がつかない―マルコの批判で浮かぶ角田裕毅の課題、”既視感ある大差”でスペイン予選最下位
2025年F1第9戦スペインGPの予選Q1。カタロニア・サーキットに振られたチェッカーフラッグは、角田裕毅(レッドブル)に残酷な現実を突きつけた。結果は20番手、最下位。チームメイトのマックス・フェルスタッペンが3番手につける中での屈辱的な結果だった。
圧倒的も”既視感”のある差
この結果を単なる「不調」と片づけることはできない。Q1におけるフェルスタッペンとのタイム差は0.587秒。71秒台のコースにおいて、これは何かが根本的に誤っていることを示唆している。
興味深いのは、この差が決して前例のないものではないという点だ。過去2年間のスペインGPのデータを紐解くと、セルジオ・ペレスもフェルスタッペンに対して似たような差をつけられている。
2024年、ペレスは予選Q3進出を果たして8番手を記録したが、2番手フェルスタッペンとの差は0.658秒。2023年はQ2敗退ながら、ポールポジションを獲得したフェルスタッペンとのQ2での差は0.574秒だった。
だが、ここに今季の厳しい現実がある。各車の性能差が縮まった結果、従来であればQ2進出圏内で収まっていたような差が、いまや最下位転落に直結してしまう。これは競争の激化を象徴する構図と言えるだろう。
Courtesy Of Red Bull Content Pool
グリッドで走行準備をするセルジオ・ペレス(レッドブル・レーシング)、2024年6月23日(日) F1スペインGP決勝前(カタロニア・サーキット)
スペック違いだけでは説明できない現実
印象をより悪化させたのは、技術的トラブルで2回目のアタックができなかったフランコ・コラピント(アルピーヌ)にも敗れたという事実だ。
各セクターを分析してみると、角田は特定のコーナーでタイムを失っているというより、コース全体で差を広げられている。とりわけ高速コーナーでの遅れが顕著で、ターン3、9、そして10・11の複合セクションでのタイムロスが際立った。
確かに角田は旧スペックのフロアを使用しており、フェルスタッペンとは異なる仕様のRB21を走らせている。だが、スペックの違いだけで0.6秒もの差を説明するのは難しい。
今回ばかりは手厳しいマルコ
これまで角田を一定程度擁護してきたヘルムート・マルコの評価も、今回ばかりは厳しかった。独専門メディア『Motorsport-Magazin』によると、マルコはフェルスタッペンとの大差に言及し、「3番手と最下位では、説明がつかない」と批判した。
「弁護の余地があるとすれば、彼は(フェルスタッペンと)同じフロアを使っていないし、ほかにもいくつか細かな違いがある」と、一応の配慮は示しつつも、「(最新型のフロアは)彼自身が壊してしまったし、スペアパーツの確保は容易ではない」と指摘し、責任の一端は角田にあると明言した。
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カタロニア・サーキットでレッドブル・レーシングRB21をドライブする角田裕毅、2025年5月31日(土) F1スペインGP最終フリー走行
”適応力”というキーワード
マルコによれば、要因の一つは“適応力”にあるという。これまでの経緯を見ても、角田はプラクティスではフェルスタッペンとの差を一定程度に抑えているものの、予選では差が広がる傾向がある。
マルコは、セットアップの変更後、角田がそれに応じて自身のドライビングスタイルを適応させるのに時間を要すると指摘。そのうえで「マックスにはそういった問題はない」と述べ、さらに核心を突いた。「どうも予選になると、彼はパフォーマンスを引き上げきれない。一方でマックスは、そこできっちり引き上げてくるんだ」
この適応力の差は、限られた時間内で勝負が決まる予選において、決定的な差を生む可能性がある。ただ一方で、同じチームで、同じ“DNA”を持つマシンを10シーズンにわたって経験し、これを熟知してきたフェルスタッペンに分があるのは確かだ。
実際、角田自身もスペインGPの週末に先立ち、セットアップ変更時や、コンマ数秒・数ミリ秒を争う予選では、クルマを「自然に理解できていること」が求められると語っており、結局のところ、そうした状況下ではクルマに関する「経験がものを言う」とも認めていた。
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インタビューに応じる角田裕毅(レッドブル・レーシング)、2025年5月29日(木) F1スペインGP(カタロニア・サーキット)
今後への影響と課題
アイザック・ハジャーとの交代論が浮上するなかで迎えた今回のスペインGP予選での惨敗は、角田にとって重要なターニングポイントとなるかもしれない。特に、マルコからの厳しい言葉は、チーム内での立場に影響を及ぼすことも考えられる。
とはいえ、チーム代表のクリスチャン・ホーナーが述べたように、「時間はまだ十分にある」。サマーブレイクを一つの節目と捉えたとしても、スペインGP決勝を含め、角田には自身の力を証明する機会が6戦残されている。
今回の結果は確かに「衝撃的」だった。だが、それが「壊滅的」なものとなるかどうかは、角田自身の今後の適応力と巻き返し次第だ。
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最終フリー走行前のステージで角田裕毅(レッドブル・レーシング)を応援するファン、2025年5月31日(土) F1スペインGP(カタロニア・サーキット)
2025年F1スペインGP予選では、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)がポールポジションを獲得。2番手にランド・ノリスが続き、マクラーレンが最前列を独占した。3番手にはマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が続いた。
決勝レースは日本時間6月1日(日)22時にフォーメーションラップが開始され、1周4,657mのカタロニア・サーキットを66周する事でチャンピオンシップを争う。レースの模様はDAZNとフジテレビNEXTで生配信・生中継される。