グリッド上で並ぶマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)とジャンピエロ・ランビアーゼ(レッドブル・レーシング レース責任者)、2025年8月31日(日) F1オランダGP決勝(ザントフォールト・サーキット)

”冗談”のはずが現実味?フェルスタッペンが直面した「あってはならない事態」―外部からは迷走レッドブルへの痛烈皮肉も

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マックス・フェルスタッペン(レッドブル)は2025年F1第15戦オランダGPで2位表彰台に上がったが、その内容は決して満足できるものではなかった。姉妹チームであるレーシング・ブルズのアイザック・ハジャーと大差ないレースペースに終始したことを受け、「本来あってはならない」と危機感を露わにした。

レッドブルにあるまじきペース

フェルスタッペンとハジャーはレースを通じて接戦を演じ、マクラーレン勢の後方で3番手と4番手を走行。ランド・ノリスのリタイアにより、そろって表彰台に上がった。

独専門メディア『Motorsport-Total』によるとフェルスタッペンは、「もちろん表彰台に上がれたことには満足してるけど、スピードという面では良くなかった」と振り返り、「予選で3番手だったからレースで3位に入れただけで、ペース自体は全然だめだった」と課題を指摘した。

実際、ソフトタイヤを履いてなお、ハードタイヤを選択したウィナーのオスカー・ピアストリに全く太刀打ちできなかった。

レッドブルのアドバイザーを務めるヘルムート・マルコも「彼らがプッシュした時の差は1周あたり1秒だった。予想以上だった」と失望を隠さず、フェルスタッペンは「マクラーレンは別次元だった。自分と比較することすらできない」と肩を落とした。

さらに、「レースを通して姉妹チームと純粋なペースで大差なかった。それは本来あってはならないことだ」と危機感を露わにした。

パルクフェルメで3位アイザック・ハジャー(レーシング・ブルズ)を称える2位マックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、2025年8月31日(日) F1オランダGP決勝(ザントフォールト・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

パルクフェルメで3位アイザック・ハジャー(レーシング・ブルズ)を称える2位マックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、2025年8月31日(日) F1オランダGP決勝(ザントフォールト・サーキット)

「そんなの僕らだけ」根本的な性能不足

今季のRB21はセットアップの作動領域が極端に狭く、一貫性を欠く原因となっている。ザントフォールトではハードタイヤの性能を全く引き出せず、フェルスタッペンはソフトとミディアムを選ばざるを得なかった。

「メカニカルグリップが全くなく、レースでは使えなかった。そんなの僕らだけだった。何かが根本的に間違っているってことだ」と切り捨て、「高速コーナーでは相当ペースを抑えなきゃならなかった。ターン7や8をみんなが速く抜けていくのに、僕にはグリップがなかった」と振り返った。

「とにかく、クルマに速さがない。当然、褒められた話じゃない。予選1発だけなら速さがあるけど、今シーズンは決勝でクルマがまったく良くないんだ」とも付け加え、根本的な性能不足を指摘した。

姉妹チームの躍進とアロンソの”皮肉”

一方で、レーシング・ブルズは今季すでに60ポイントを獲得し、アストンマーチンを脅かす勢いを見せている。これは2021年にピエール・ガスリーが牽引したシーズン以来の好調ぶりだ。

とりわけハジャーはフェルスタッペンに1.962秒差で3位に入り、フランス人ドライバー史上最年少で表彰台を獲得。評価をさらに高めた。レッドブルのローラン・メキーズ代表は「ハジャーはレッドブルを追い抜くことも許されている」と語り、公平な戦いでの結果であることを強調した。

アイザック・ハジャー(レーシング・ブルズ)をリードして2位チェッカーフラッグを受けるマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、2025年8月31日(日) F1オランダGP決勝(ザントフォールト・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

アイザック・ハジャー(レーシング・ブルズ)をリードして2位チェッカーフラッグを受けるマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、2025年8月31日(日) F1オランダGP決勝(ザントフォールト・サーキット)

レーシング・ブルズのマシンの方がレッドブルより速いのでは?との見方は何もファンだけのものではない。

フェルナンド・アロンソはスペインのスポーツ紙『AS』に対し、「レーシング・ブルズのマシンは常にロケットのようだ。もしフェルスタッペンがあのクルマに乗っていたら、タイトルを争っているはずだ」と皮肉を述べた。さらに、角田裕毅がVCARB 02からRB21へ乗り換えた途端に成績が急落した点にも触れ、「シーズン序盤は常にトップ6に入っていたのに、ツノダは突然Q1落ちするようになった」と指摘した。

フェルスタッペンの“ブルズ移籍”はシーズン序盤から皮肉交じりの冗談として語られてきた。レーシング・ブルズのピーター・バイエルCEOは「他のみんなと同じように、我々も冗談として楽しんでいるだけだ。起こり得ない」と移籍の可能性を一蹴。アラン・パーメイン代表も「フェルスタッペンがFP1で乗る?あり得ない」と否定した。

とはいえ、ハジャーがフェルスタッペンに肉薄した事実は、両チームの立ち位置を改めて浮き彫りにした。王者レッドブルが姉妹チームと互角に戦う異例の状況は、今季のレッドブルが直面する最大の問題、つまりマシンの根本的な性能不足を象徴するものと言えるだろう。

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