また接触!ハミルトン3連勝で王座戦同点、フェルスタッペンにはレース後10秒罰則 / F1サウジアラビアGP《決勝》結果とダイジェスト
2021シーズンFIA-F1世界選手権 第21戦サウジアラビアGP決勝レースが12月5日に行われ、メルセデスのルイス・ハミルトンがポール・トゥ・ウインを飾った。2度の赤旗と4度のバーチャル・セーフティーカー(VSC)が導入され、5台がリタイヤを喫する激動のレースだった。
2位はマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)。何度かラップリーダーに躍り出るも、最終的にはハミルトンとのインシデントで5秒ペナルティが科され、11.825秒落ちでフィニッシュした。
ハミルトンは優勝に加えてファステストラップを刻み、満額の26点を獲得。これによりドライバーズ選手権争いは、ハミルトンがフェルスタッペンと同点の369.5ポイントに並び、最終アブダビGPで最終決着をつける形となった。優勝回数で勝っているため、ランキングとしてはフェルスタッペンが首位を維持した。
一筋縄ではいかないレースだった。
レース終盤、コース外に出る事でアドバンテージを得て首位を維持したとして、ポジションを戻すよう指示され減速したラップリーダーのフェルスタッペンにハミルトンが激突。一件に関してレース後に審議が行われ、前述の5秒とは別に、フェルスタッペンに10秒ペナルティと2点のペナルティポイントが科された。リザルトに影響はなかった。
違反の根拠とされたのはFIA国際スポーティング・コード第2条dで、これには「衝突を引き起こす事、重大なミスの繰り返し、クルマをコントロールできていないように見える行為はスチュワードに報告され、関係するドライバーの除外を含む罰則が科せられる事がある」と記されている。
この件についてモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは「受け入れられない」として、ハミルトンにペナルティが科されなかった事に憤りを示し、レッドブル・ホンダ陣営は緊迫した雰囲気に包まれた。
3位表彰台にはバルテリ・ボッタスが滑り込み、メルセデスがポディウムの2つを手にした。エステバン・オコン(アルピーヌ)は18周目からファイナルラップまで3番手を死守していたが、残り数百mという所でボッタスに交わされ表彰台を逃した。
表彰台に上がった3名の表情には酷い疲労感が表れていた。フェルスタッペンは2位トロフィーを受け取った後、シャンパンシャワーには参加せず、すぐに舞台裏に去っていった。
セルジオ・ペレスはシャルル・ルクレール(フェラーリ)との接触によってクラッシュを喫し、セバスチャン・ベッテル(アストンマーチン)、ニキータ・マゼピンとミック・シューマッハのハース勢、そしてジョージ・ラッセル(ウィリアムズ)と並びリタイヤを喫した。
アルファタウリ・ホンダ勢はピエール・ガスリーが6位入賞を飾った一方、角田裕毅はオープニングラップで4ポジションダウンと厳しい出だしを強いられ、更にはベッテルとの接触でクルマにダメージを負い転落。5秒ペナルティが科され、最終14位でヘルメットを脱いだ。角田裕毅はレース後、ベッテルに謝罪した。
フェラーリとマクラーレンはメルセデス以外で唯一、ダブルポイントを獲得したチームとなった。ルクレールとカルロス・サインツは7-8位でフィニッシュ。ダニエル・リカルドは5位、ランド・ノリスは10位に滑り込んだ。
残る一枠、9位はアルファロメオのアントニオ・ジョビナッツィがもぎ取った。
レース概要
第21戦の舞台はF1初開催のジェッダ市街地コース。全面が壁に囲まれており、僅かなミスが致命的な結果に繋がりうる”情け容赦ない”超高速コースだ。DRSゾーンは全部で3か所に設定された。
公式タイヤサプライヤーのピレリは中間レンジのC2からC4までのコンパウンドを投入。レースでは最低2種類のコンパウンドを使用する義務があり、ミディアムとハードがメインタイヤとなった。
決勝は日本時間5日(日)26時30分にブラックアウトを迎え、1周6,175mのコースを50周する事で争われた。2度の中断やセーフティーカーの影響で、レースは2時間6分15秒118に及んだ。
レース前には1週間前に亡くなったフランク・ウィリアムズ卿を偲んで黙祷とFW07によるトリビュートランが行われた。
予選Q3のクラッシュの影響でギアボックス交換が懸念されたフェルスタッペンだが、チームは交換は不要と判断。サスペンションと空力パーツのみを変えてコースに送り出した。
レッドブルの最高技術責任者を務めるエイドリアン・ニューウェイは「できる限りのチェックを行った。もちろん分解する事はできないため徹底的にはやれていないが、見た感じでは全てが問題なかった」と述べ、フェルスタッペンのギアボックスが50周に持ち堪えられるとの考えを示した。
フェルスタッペンはグリッドに向かう前のレコノサンスラップを使い、複数周に渡ってギアボックスをテストした。
現地ジェッダは晴れ、チャンピオンシップポイントを争う決勝のフォーメーションラップは気温29℃、路面32.6℃、湿度75.6%のドライコンディションで開始された。
オープニングラップは大きな混乱なく、全20台がターン1を駆け抜けた。アルファタウリ・ホンダ勢はガスリーが2ポジションダウンの8番手、オコンと接触した角田裕毅が4ポジションダウンの12番手に後退した。一件は記録されたが審議されることはなかった。逆にフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)は3つポジションを上げて10番手に浮上した。
フェルスタッペンは8周目に入るとペースを上げ、2番手ボッタスとの差を一気に1.5秒以内にまで縮めたが、その直後の10周目にシューマッハがターン22でスピンを喫してバリアに激突。金曜の夜に発生したルクレールのクラッシュによく似た事故で、レースコントロールはセーフティーカー導入を決定。このタイミングで9台がピットストップに動いた。
メルセデス勢はダブルストップを敢行すべくボッタスがペースダウン。ラップリーダーのハミルトンとの車間を開けて2台でハードタイヤに履き替えた。
一方のレッドブル・ホンダ勢はペレスを交換させる一方、メルセデスに対するリバース・ストラテジーを採ってフェルスタッペンをステイアウトさせた。これが後の幸運に繋がる。
FIAレースディレクターを務めるマイケル・マシはその後、大規模なバリアの修復が必要と判断。14周目に赤旗を出し、レースは17分間に渡って一時中断された。赤旗中は自由にタイヤを交換する事ができる。ハミルトン含めてメルセデス陣営はフラストレーションを掃き出した。フェルスタッペンがトップに躍り出た。
リカルド(5番手)、ペレス(8番手)、サインツ(9番手)、ベッテル(13番手)はリスクを取ってミディアムを選択。他はノンストップを視野にハードタイヤを履いた。
リスタート。ハミルトンが好スタートを切ってターン1で前に出ると、出遅れたフェルスタッペンは行き場を失い、コース外に出てターン2で再びトップに。この間にオコンがフェルスタッペンの後方2番手に浮上した。
後方ではペレスの左リアとルクレールのフロント右翼端板が接触してクラッシュ。更に後方では、マゼピンが減速した前走ラッセルに突っ込み、レースは再び赤旗中断となった。
リスタート時のポジションについてマシは「ターン1-2での一件を踏まえ、2番グリッドからスタートする機会を与えようと思う」とレッドブル側に通告。チームマネージャーのジョナサン・ウィートリーはこれに「内部で議論するつもりだ。我々としては押し出された側だと感じている」と返した。
その後マシは「オコンのポールポジションを前提にP2を受け入れるか」と問いかけ「あなた方(フェルスタッペン)はルイスの後ろに戻る事になる。これが私からのオファーだ」と続けた。
この一連の奇妙なやり取りの後、オコン、ハミルトン、フェルスタッペン、リカルドの順に、17周目に2度目リスタートを迎える事となった。蹴り出し重視か、フェルスタッペンとボッタス、そして角田裕毅はミディアムに履き替えた。
16台がグリットについた。フェルスタッペンはターン1で果敢にイン側に飛び込みハミルトンをオーバーテイク。その後、オコンを交わしてトップに立った。ハミルトンはその周の終わりのホームストレートでオコンをパスして追撃体制を築き、ファステストラップを連発しながらじわじわとラップリーダーとの差を縮めていき、22周目に1秒圏内を捉えた。
23周目のターン22で角田裕毅とベッテルの接触事故が発生。デブリ回収のためにVSCが導入された。 ベッテルはステイアウトし、角田裕毅はピットに入ってフロントウイングを交換。最後尾16番手に転落した。この間にアロンソが単独のハーフスピンを喫して15番手に後退。その後、起死回生を狙ってソフトに履き替えるなどしたが、13位でレースを終えた。
ベッテルとの一件は審議の対象となり、角田裕毅に5秒ペナルティが科された。その後ベッテルはキミ・ライコネン(アルファロメオ)とサイド・バイ・サイドで接触。ライコネンは27周目にピットインしてミディアムに履き替えフロントウイングを交換した。完走15台中最下位でフィニッシュした。ベッテルは44周目にクルマを降りてリタイヤした。
その後、デブリ回収のために3度に渡ってバーチャルセーフティカーが導入された。
トップ争いは比較的低速のセクター1でフェルスタッペンが引き離し、ホームストレートを含むセクター3でハミルトンがギャップを縮めるという展開が延々と続いていったが、37周目に山場を迎える。
ハミルトンはターン1でアウト側からフェルスタッペンに並びかけた。両者コース外に飛び出しフェルスタッペンがトップをキープ。その直後、レースコントロールからの指示に従ってポジションを戻すべく最終コーナーで減速したフェルスタッペンのリアにハミルトンが衝突する衝撃のインシデントが発生した。
その後、フェルスタッペンは暫く首位をキープしたが、再びハミルトンにポジションを譲るべく減速。一旦先行させた後に再び抜き返したがトップを維持する事はできず、43周目に2番手に後退した。
スチュワードはターン1の一件に関してフェルスタッペンに5秒ペナルティを科す裁定を下したが、リアに衝突した件に関してはレース後に審議を行うと発表した。
2021年F1第21戦サウジアラビアGP決勝リザルト
Pos | No | Driver | Team | Laps | Time | PTS |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 44 | ハミルトン | メルセデス | 50 | 2:06:15.118 | 26 |
2 | 33 | フェルスタッペン | レッドブル | 50 | +11.825s | 18 |
3 | 77 | ボッタス | メルセデス | 50 | +27.531s | 15 |
4 | 31 | オコン | アルピーヌ | 50 | +27.633s | 12 |
5 | 3 | リカルド | マクラーレン | 50 | +40.121s | 10 |
6 | 10 | ガスリー | アルファタウリ | 50 | +41.613s | 8 |
7 | 16 | ルクレール | フェラーリ | 50 | +44.475s | 6 |
8 | 55 | サインツ | フェラーリ | 50 | +46.606s | 4 |
9 | 99 | ジョビナッツィ | アルファロメオ | 50 | +58.505s | 2 |
10 | 4 | ノリス | マクラーレン | 50 | +61.358s | 1 |
11 | 18 | ストロール | アストンマーチン | 50 | +77.212s | 0 |
12 | 6 | ラティフィ | ウィリアムズ | 50 | +83.249s | 0 |
13 | 14 | アロンソ | アルピーヌ | 49 | +1 lap | 0 |
14 | 22 | 角田裕毅 | アルファタウリ | 49 | +1 lap | 0 |
15 | 7 | ライコネン | アルファロメオ | 49 | +1 lap | 0 |
NC | 5 | ベッテル | アストンマーチン | 44 | DNF | 0 |
NC | 11 | ペレス | レッドブル | 14 | DNF | 0 |
NC | 9 | マゼピン | ハース | 14 | DNF | 0 |
NC | 63 | ラッセル | ウィリアムズ | 14 | DNF | 0 |
NC | 47 | シューマッハ | ハース | 8 | DNF | 0 |
コンディション
天気 | 晴れ |
---|---|
気温 | 29℃ |
路面温度 | 32.6℃ |
周回数 | 50 |
セッション概要
グランプリ名 | F1サウジアラビアGP |
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レース種別 | 決勝 |
レース開始日時 |
サーキット
名称 | ジェッダ市街地コース |
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設立 | 2021年 |
全長 | 6175m |
コーナー数 | 27 |
周回方向 | 反時計回り |