5位入賞を経てパルクフェルメを歩くニコ・ヒュルケンベルグ(キック・ザウバー)、2025年6月1日(日) F1スペインGP決勝(カタロニア・サーキット)
Courtesy Of Sauber Motorsport AG

予選Q1敗退がまさかの「ゴールデンチケット」に―ヒュルケンベルグが驚きの5位入賞

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2025年F1第9戦スペインGPを終えて、ニコ・ヒュルケンベルグ(ザウバー)は、前日の予選でQ1敗退を喫したことが、今季最高位となる5位入賞への「ゴールデンチケットだった」と振り返った。

この日の結果は、“ザウバー”にとって2015年オーストラリアGPでのフェリペ・ナッセ以来となるベストリザルトであり、“アルファロメオ”名義だった時代を含めても、2022年エミリア・ロマーニャGPのバルテリ・ボッタス以来、約3年ぶりの快挙となった。

ヒュルケンベルグは予選Q1敗退により15番グリッドからのスタートを強いられたが、この一見不運な展開が、結果的にはレース戦略において大きな優位性をもたらした。

逆転劇の裏にあった車体改良と1周目の混乱

「今日はすべてがうまく噛み合った」とヒュルケンベルグは笑顔を見せた。今回の好結果は、複数の要因が重なったものだった。

スタート直後にはリアム・ローソン(レーシング・ブルズ)、フェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)、アレックス・アルボン(ウィリアムズ)が交錯。この混乱に乗じて、1周目に5つポジションを上げられたことも大きかった。

「スタートが良くて、1周目は本当に最高だった。ポジションをいくつも上げられて、それがレース全体の基盤になった」

もう一つは、サウバーが今週末に投入したアップデートだ。これが功を奏し、ヒュルケンベルグは終始安定したペースを維持することができた。

「マシンの出来が良かったんだ。リズムもバランスも完璧で、一体感があった。今回投入したアップデートが着実に効果を発揮してくれた。本当に楽しかったし、チームにとっても素晴らしい結果になったよ」

パルクフェルメで健闘を称え合う5位のニコ・ヒュルケンベルグと12位のガブリエル・ボルトレート(ともにザウバー)、2025年6月1日(日) F1スペインGP決勝(カタルーニャ・サーキット)Courtesy Of Sauber Motorsport AG

パルクフェルメで健闘を称え合う5位のニコ・ヒュルケンベルグと12位のガブリエル・ボルトレート(ともにザウバー)、2025年6月1日(日) F1スペインGP決勝(カタルーニャ・サーキット)

最後の一押しとなったSC、新品タイヤの威力

レース終盤、ヒュルケンベルグは8番手を走行していたが、残り12周でセーフティーカーが導入され、展開は大きく動いた。

「セーフティーカーが出る前は8番手で、このまま終わるだろうと思ってた。でもセーフティーカーがレースをかき混ぜてくれたんだ」

最後の勝負を分けたのは、タイヤの選択肢だった。ヒュルケンベルグはQ1敗退に終わったことで新品タイヤを5セット保持してレースに臨んだが、残り2周で彼に抜かれたルイス・ハミルトン(メルセデス)は、2セットしか持っていなかった。

「ルイスは確か中古のソフトだったと思う。こっちは早々に予選が終わったおかげで、新品を履けた。タイヤの履歴の差がどれほど大きいか、よく分かったと思う。たった1周の違いでも、タイヤの性能と寿命には大きな影響が出るからね」

「振り返ってみれば、昨日Q1で敗退したことで、すべてのスティントで新品タイヤを使えたことがゴールデンチケットになった。皮肉な話だけど、それが今日の結果につながったんだ」

喜びの一方で冷静な評価も

好結果に喜びを隠せないヒュルケンベルグだが、チームの現状に対しては冷静な評価を下している。

「楽しいレースだったけど、まだトップチームと本気で戦えるレベルには達していないと思う。でも、中団グループの中では確かな前進を感じられた。そこが今回の大きな収穫だよ」

今回の5位入賞は、サウバーにとって今季2度目のポイント獲得であり、車体性能の確かなステップアップを示す重要な一戦となった。

予選での“敗退”が最高の結果へとつながるという皮肉な展開は、F1がいかに予測不能なスポーツであるかを改めて印象づけた。

レース後のガレージで5位入賞の喜びを分かち合うニコ・ヒュルケンベルグ(ザウバー)とジョナサン・ウィートリー(チーム代表)、2025年6月1日(日) F1スペインGP決勝(カタルーニャ・サーキット)Courtesy Of Sauber Motorsport AG

レース後のガレージで5位入賞の喜びを分かち合うニコ・ヒュルケンベルグ(ザウバー)とジョナサン・ウィートリー(チーム代表)、2025年6月1日(日) F1スペインGP決勝(カタルーニャ・サーキット)


2025年F1第9戦スペインGPでは、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)がポール・トゥ・ウインを飾り、今季5勝目を挙げた。チームメイトのランド・ノリスが2位、シャルル・ルクレール(フェラーリ)は3位でフィニッシュし、バルセロナで自身初の表彰台に上がった。

ジル・ビルヌーブ・サーキットを舞台とする次戦カナダGPは、6月13日のフリー走行1で幕を開ける。

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