
にじむ無力感―角田裕毅「全く改善しなかった」”迷走”終わらず13位完走…一方で次戦カナダに向け光明も
2025年F1第9戦スペインGPで角田裕毅(レッドブル)は、予選最下位からの巻き返しを狙ったものの、13位でのレース完走に終わった。週末を通じて行った様々なセットアップ変更は功を奏せず、本人をして「全く改善しなかった」と率直に振り返る厳しい週末となった。
予選最下位からピットレーンスタートへ
予選で最下位に沈んだ角田は、起死回生を狙ってパルクフェルメ下でサスペンションのセットアップを変更。さらにリアウイング仕様も変更し、ピットレーンからのスタートを選択した。これは、グリッド順位よりも車体のパフォーマンス向上を優先する、まさに背水の陣の判断だった。
「挽回のために何か違うアプローチを試す必要があることは分かっていました」と角田は説明したが、車体の改善という面での成果について問われると、首を横に振りながら「あまり変わらなかったです」と肩を落とした。
フェルスタッペンと同じ3ストップ戦略も、SCに泣く
決勝ではチームメイトのマックス・フェルスタッペンと同じ3ストップ戦略を採用。アレックス・アルボン(ウィリアムズ)やエステバン・オコン(ハース)をオーバーテイクするシーンも見せ、一時はポイント圏内への期待も寄せられた。
だが、最終ピットストップから11周後にセーフティーカーが導入されると、タイヤ上のアドバンテージが消失。「セーフティーカーのタイミングが良くなかったですね。あれがなければ、ポイントを狙える可能性もあったと思いますが、まあ仕方ないです」と、運命を受け入れるように語った。
チーム代表のクリスチャン・ホーナーも同様の見解を示し、「SCはユーキにとって痛手だった。彼のそれまでのペースやタイヤの優位性を考えると、あのままの展開ならポイント圏内、少なくともそのすぐ近くまでは行けたはずだ」と、惜しい結果だったことを認めた。
Courtesy Of Red Bull Content Pool
ピットストップを行う角田裕毅(レッドブル・レーシングRB21)、2025年6月1日(日) F1スペインGP決勝(カタロニア・サーキット)
「全く改善しなかった」 深刻なパフォーマンス不足
今回最も深刻だったのは、マシンの根本的なパフォーマンス不足だった。技術的な迷走はチェッカーフラッグが振られてなお、終わっていない。
角田は「クルマはFP1の時点から大きくは変わらず、ペースはそこそこでしたが、自分やチームが求めているような速さがありませんでした」と現状を分析。
「当然、改善に向けて取り組みましたが、全く良くなりませんでした」という言葉からは、技術陣とともに様々な対策を講じながらも、期待した効果を得られなかった無力感が感じられた。
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ハースVF-25フェラーリを駆るエステバン・オコンの前を走行する角田裕毅(レッドブル・レーシングRB21)、2025年6月1日(日) F1スペインGP決勝(カタロニア・サーキット)
カナダGPに向けて「改善できそうな方法がある」
それでも角田は前向きな姿勢を崩さない。プレスリリースを通して次戦カナダGPに向け、「改善できそうな方法」があると主張し、「望んでいるような状況」にないと現実を受け入れつつも、「チーム一丸となって努力を続け、週末を通して安定したパフォーマンスを発揮できるよう目指していきます」と決意を新たにした。
ホーナーも「厳しい週末だった。結果も彼が望んでいたものではなかったが、次のモントリオールに向けてチームと共に、セットアップの改善に精力を注ぐつもりだ」と、チーム一丸での立て直しを約束した。
迷走からの脱却を図り、本来のパフォーマンスを取り戻せるか。角田にとって、次戦カナダGPは正念場の一つとなりそうだ。おそらくは、フェルスタッペンと同じ、あるいは似たスペックのマシンが与えられる見通しであり、その状況を活かせるかどうかが注目される。
Courtesy Of Red Bull Content Pool
決勝を前にピットレーンを歩く角田裕毅(レッドブル・レーシング)、2025年6月1日(日) F1スペインGP(カタロニア・サーキット)
2025年F1第9戦スペインGPでは、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)がポール・トゥ・ウインを飾り、今季5勝目を挙げた。チームメイトのランド・ノリスが2位、シャルル・ルクレール(フェラーリ)は3位でフィニッシュし、バルセロナで自身初の表彰台に上がった。
ジル・ビルヌーブ・サーキットを舞台とする次戦カナダGPは、6月13日のフリー走行1で幕を開ける。