ジョージ・ラッセル(メルセデス)とマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、2025年F1スペインGP
Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

論争勃発「意図的な報復」接触めぐるラッセルとフェルスタッペンの見解―まるでマリオカート? 失格が妥当との声も

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2025年F1第9戦スペインGPで発生したマックス・フェルスタッペン(レッドブル)とジョージ・ラッセル(メルセデス)の接触事件が、議論を巻き起こしており、一部には、単なるレーシングアクシデントを超えた深刻な問題として受け止められている。

運命を分けたターン5での接触

事の発端は、レッドブルの無線オーダーだった。ターン1でエスケープゾーンに飛び出しながらもラッセルの前でコースに復帰したフェルスタッペンに対し、チームはポジションを返すよう伝達。ただ結果的にではあるが、この判断は後に誤りと判明した。スチュワードがレース後、一件を不問としたためだ。

問題の瞬間は直後のターン5で訪れた。フェルスタッペンはラッセルに道を譲ったかに見えたが、その直後に「急加速」。ラッセルの側面に激突した。

スチュワードは異例とも言うべき早さで審議を終え、10秒ペナルティと3点のペナルティポイントを科した。結果、4位でフィニッシュしたラッセルに対し、5位フィニッシュのフェルスタッペンは10位まで順位を落とした。

ラッセルの厳しい告発「F1で見たことがない行為」

レース後、ラッセルは「正直、あれはかなり意図的に感じたよ。シムレースやiRacingでは何度も見たことがあるけど、F1ではああいうのは見たことがない。ある意味、新鮮だった」と表明した。

さらに踏み込んで、フェルスタッペン個人への批判を展開した。

「マックスが世界最高のドライバーの一人であることは確かだけど、あの手の動きは本当に不要だし、彼自身の評価を下げてしまうと思う。F1ドライバーを夢見る子どもたちにとっても残念なことだと思う」

失格処分が妥当だったかという質問には、より深刻な懸念を示した。

「ちゃんと映像を見返す必要があるけど、もし本当に意図的だったなら、絶対にそうすべきだ。そんなの許されない。僕らは命懸けで走ってるんだ。今のマシンが安全とはいえ、それを当たり前と思うべきじゃない。ただ、それを判断するのはスチュワードの仕事だ」

レースに向けて準備するジョージ・ラッセル(メルセデス)は、2025年6月1日(日) F1スペインGP決勝(カタロニア・サーキット)Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

レースに向けて準備するジョージ・ラッセル(メルセデス)は、2025年6月1日(日) F1スペインGP決勝(カタロニア・サーキット)

第三者も「意図的な報復」と断罪

この見解は他の関係者も共有している。より厳しい批判を展開したのは、英衛星テレビ『Sky Sports』で解説を務めるニコ・ロズベルグだ。

2016年のF1ワールドチャンピオンは、「どう見ても、あれはかなり意図的な報復(ターン1での一件に対する)に見えた。全く容認できない行為だし、ブラックフラッグ(失格)にすべきだった」と主張した。

ロズベルグの現在の同僚、同じく元F1ドライバーのアンソニー・デビッドソンも「あれは意図的だったと思う。そういうシーンは見たくない。あの瞬間までのフェルスタッペンには非はなかったと思うけど、あそこだけは完全にやりすぎだ」と指摘した。

なお、2位でフィニッシュしたランド・ノリス(マクラーレン)は、クールダウンルームでリプレイ映像を見ながら皮肉混じりに笑った。

「僕も前にやったことがある…マリオカートでね」

フェルスタッペンの反撃「ティッシュを用意しとく」

一方のフェルスタッペンは、ラッセルの発言について問われ、「(そんなに泣き言を言うなら)次はティッシュを用意しとくよ」と返し、ラッセルは被害者意識に満ちていて大げさだと暗に辛辣な反応を見せた。

さらに、意図的な接触だったかという核心的な質問には、「それって重要?」と一蹴。批判を意に介さない姿勢を鮮明にし、「レース全体について話をしたいんだけど」と続け、レース戦略について分析を加えた。

3ストップ戦略については「デグラデーションの大きさを考えれば正しかった」と説明。終盤のハードタイヤ選択については、他のタイヤを使い切ったため選択肢はなかったとしつつも、「適切なタイヤでなかったことは確か」とし、これがグリップ不足によるレース終盤の苦戦の原因だったと振り返った。

ダミーグリッド上でクルマに乗り込むマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、2025年6月1日(日) F1スペインGP決勝(カタロニア・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

ダミーグリッド上でクルマに乗り込むマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、2025年6月1日(日) F1スペインGP決勝(カタロニア・サーキット)

出場停止まで「あと1点」の危険水域

今回の3点加算により、フェルスタッペンの累積ペナルティポイントは11点に達した。直近12ヶ月間の累積点が12点に達すると1レースの出場停止となるため、次戦以降でさらに1点が加算されれば、現役王者がレースを欠場する異例の事態となり得る。

果たして真相は「意図的な報復」なのか、それとも「単なるミス」なのか。答えは当事者のみが知っている。


2025年F1第9戦スペインGPでは、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)がポール・トゥ・ウインを飾り、今季5勝目を挙げた。チームメイトのランド・ノリスが2位、シャルル・ルクレール(フェラーリ)は3位でフィニッシュし、バルセロナで自身初の表彰台に上がった。

ジル・ビルヌーブ・サーキットを舞台とする次戦カナダGPは、6月13日のフリー走行1で幕を開ける。

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