
フェルスタッペン、F1レース出場停止の危機―”裏目の返上判断”が招いたラッセルへの衝突
2025年6月1日に開催されたF1第9戦スペインGPの終盤、メルセデスのジョージ・ラッセルとの接触により、レッドブルのマックス・フェルスタッペンがレース出場停止まであと1ポイントという危機的状況に追い込まれた。
順位返上後に「急加速」
フェルスタッペンはレース終盤の64周目、セーフティーカー(SC)明けのターン1でエスケープゾーンに逃れてラッセルの前をキープした後、チームからポジションを返上するよう指示され、ターン5に向けてラッセルに前を譲った。だが、その直後に追い抜きを仕掛けたようで、ラッセルの側面に接触した。
ヴィタントニオ・リウッツィを含む4名のスチュワードは、ラッセルに道を譲ったあとにフェルスタッペンが「急加速」したと指摘。この行為がラッセルとの衝突に繋がったのは「疑いない」と結論付けた。
その結果、フェルスタッペンには10秒のタイムペナルティが科され、5位フィニッシュながらも10位へと順位を落とした。さらに3点のペナルティポイントが科されたことで、累積ポイントが11点に達した。
迫る出場停止処分、タイトル争いに影響も
FIAの規定では、直近12か月間で累積ペナルティポイントが12点に達した場合、自動的に1戦の出場停止処分が科される。この制度の下で実際に処分を受けた初のドライバーは、昨年のケビン・マグヌッセン(当時ハース)だった。
累積11点に達したことでフェルスタッペンは、昨年のオーストリアGPでランド・ノリスと接触した際に科された2点の有効期限が切れる6月30日まで、いかなる違反も許されない。
この先に控えるカナダGPおよびオーストリアGPでさらに1点でも加算されれば、フェルスタッペンは自動的に1戦の出場停止処分を受けることになる。これはドライバーズチャンピオン争いに大きな影響を及ぼしかねない。
ドライバーズランキングでは、マクラーレンのオスカー・ピアストリが186ポイントで首位に立ち、ランド・ノリスが176ポイントで2位につけている。一方、フェルスタッペンは137ポイントで3位に位置しており、今後の展開次第では、タイトル争いからの脱落も現実味を帯びてくる。
さらに、フェルスタッペンは10月27日までは少なくとも9ポイントを保持し続けることになるため、シーズン終盤にかけても慎重なレース運びが求められる。
日付 | グランプリ | 違反行為 | ポイント |
---|---|---|---|
2024年6月30日 | オーストリア | ノリスとの衝突 | 2 |
2024年10月27日 | メキシコ | ノリスをコース外に追い出した | 2 |
2024年11月2日 | ブラジル | VSC下で指定タイムを超過 | 1 |
2024年12月1日 | カタール | 不必要な低速走行でラッセルを妨害 | 1 |
2024年12月8日 | アブダビ | ピアストリとの衝突 | 2 |
2025年6月1日 | スペイン | ラッセルとの衝突 | 3 |
不要だった順位返上、判断が結果的に裏目に
皮肉なことにスチュワードは、フェルスタッペンがターン1でエスケープゾーンに逃れてポジションを維持した行為について、不問とする判断を下した。これは、接触の原因がラッセルのコントロールミスおよび追突によるものであり、フェルスタッペンが故意にコース外へ出たわけではないと認定されたためだ。
つまり、レッドブルが自主的にポジション返上の指示を出さなければ、10秒のタイムペナルティや3点のペナルティポイントが科されなかった可能性もあるという点で、結果的にチームの判断が裏目に出たと言える。
とはいえ、この不問の判断はレース後に下されたものであり、インシデントが発生した当時にレッドブルがポジション返上を命じた判断そのものは、あながち誤りとは言えない。SC導入により全車が接近していた状況では、仮に5秒ペナルティを受けた場合の損失は決して軽視できなかった。
なお、同じく終盤のセーフティカー明けに発生したシャルル・ルクレール(フェラーリ)とのメインストレート上での接触に関しては、「どちらか一方、あるいは主に責任があるとは言えない」として、こちらも不問との決定が下された。