あの”急加速”の裏に何が─ラッセルとフェルスタッペンの衝突原因を示唆するマルコ

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レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコが、2025年F1第9戦スペインGPでマックス・フェルスタッペンが関与した2度の接触についてコメントした。

フェラーリのシャルル・ルクレールとの接触については詳しい言及を避けた一方、メルセデスのジョージ・ラッセルとの衝突については「フラストレーション」が引き金だと示唆した。

SC後のタイヤ選択が転機に

フェルスタッペンはレース終盤まで表彰台圏内を堅持していたが、61周目に導入されたセーフティカー(SC)によって状況は一変した。各ドライバーが一斉にソフトタイヤへ交換する中、フェルスタッペンもピットイン。だがレッドブルが装着したのは、まさかの新品ハードタイヤだった。

レース前、ピレリのモータースポーツ部門を率いるマリオ・イゾラは、ハードタイヤについて「滑りやすく、オーバーヒートしやすい上にグリップもミディアム以下」と評価しており、各チームもその認識を共有していた。

使い古しのソフトか、新品のハードかという厳しい選択を迫られた末の決断だったが、結果的にフェルスタッペンは十分な熱入れができず、最終コーナーで激しいオーバーステアに見舞われた。リスタート直後のメインストレートではルクレールに並びかけられ、軽い接触が発生した。

マルコ「リスクが裏目に出た」

墺専門メディア『Speedweek』によるとマルコは、レースでの巻き返しを狙って「リスク」を承知の上で3ストップ戦略を採ったことが、予期せぬSCの導入によって結果的にフェルスタッペンを窮地に追い込むことになったとの見解を示した。

「チャンスを掴むためにはリスクを取る必要があった。それが3ストップ戦略だった。だが、終盤にセーフティカーが入ってしまった」とマルコは説明する。

「その時点で我々に残されていたのはハードタイヤだけだった。当時の状況を振り返れば、それが適したタイヤでなかったことは明らかだ。あのタイヤは特にウォームアップが非常に難しい」

さらに、「マックスがコントロールラインに向けてスライドしたのは誰もが見ていた通りだ。だが、こういうものなのだ。リスクを取れば、それが裏目に出ることもある」

「不適切なタイヤを装着したことによるグリップ不足で、ほとんどコントールを失いかけていたのは明らかだった。そしてルクレールとの一件が起きた」

スチュワードはこの件を「レーシングインシデント」として処理し、処分を科すことはなかったが、マルコは「詳細には触れたくない」とコメントを控えた。

ラッセルとの接触、背景に「フラストレーション」

本大会において最も衝撃的なシーンの引き金となった出来事は、その直後に訪れた。ルクレールに抜かれた直後のターン1で、フェルスタッペンは後方から仕掛けてきたラッセルと接触。エスケープに逃れてラッセルの前でコースに復帰した。

レース後にスチュワードは一件を不問としたが、レッドブルはペナルティを懸念し、フェルスタッペンにポジション返上を指示。フェルスタッペンはターン5に向けて減速し、ラッセルに前を譲るも、その直後に「急加速」してラッセルの側面に衝突した。

この行為により、フェルスタッペンには10秒のタイム加算と3点のペナルティポイントが科され、5位でチェッカーを受けながらも最終順位は10位に後退。累積ペナルティは11点となり、出場停止まであと1点に迫った。

リスタート後のフェルスタッペンの走りについてマルコは、「不運にもSCが導入され、あのタイヤを装着せざるを得なかったことで、レースを通して長く上位を走っていたマックスには、ある種のフラストレーションが溜まり、それがドライビングにも表れていた」と語った。


2025年F1第9戦スペインGPでは、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)がポール・トゥ・ウインを飾り、今季5勝目を挙げた。チームメイトのランド・ノリスが2位、シャルル・ルクレール(フェラーリ)は3位でフィニッシュし、バルセロナで自身初の表彰台に上がった。

ジル・ビルヌーブ・サーキットを舞台とする次戦カナダGPは、6月13日のフリー走行1で幕を開ける。

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