
これがレースだ―ルクレールが語るフェルスタッペンとの接触劇、”控えめな期待”が導いた表彰台
シャルル・レクレールにとって、2025年F1第9戦スペインGPでの表彰台獲得は嬉しい誤算だった。前戦モナコGPでランド・ノリスにポールと勝利を奪われたルクレールは、今週末のバルセロナではモナコほどの強さを発揮できないと予測していた。
この控えめな期待が、レクレールの予選戦略に大きな影響を与えた。あえて予選を犠牲にし、決勝でのパフォーマンスを最大化するという大胆な判断を下したのだ。
この決断により、Q3でのアタックチャンスは1回に限られ、グリッドは7番手にとどまった。だがそのおかげで、ソフトタイヤを1セット温存することができた。
「それが報われるかは分からなかったけど、結果的にはうまくいったね」とレクレールは振り返る。
Courtesy Of Ferrari S.p.A.
3位フィニッシュを経てパルクフェルメに姿を見せたシャルル・ルクレール(フェラーリ)、2025年6月1日(日) F1スペインGP決勝(カタロニア・サーキット)
SCがもたらした千載一遇の機会
レース終盤、セーフティーカーの導入がレクレールに予想外のチャンスをもたらした。フィールド全体のギャップがリセットされ、ルクレールは3番手を走行していたマックス・フェルスタッペンのすぐ背後につける展開となった。
そして、この時点でのタイヤの状況が勝負を分ける決定的要素となった。
「エンジニアから、マックスが最後のスティントで新品のハードタイヤに履き替えたって聞いたとき、“まあ他に選択肢はなかったんだろうな”と思ったよ」とルクレールは語る。
「でも、おかげですごく楽観的になった。ハードタイヤが如何に厄介かは分かっていたからね。だからこそ、“ここはリスタートを完璧に決めなきゃ”、“もしかしたらチャンスがあるかもしれない”って思ったんだ」
最終コーナーでの決定的瞬間
フェルスタッペンは、グリップの立ち上がりに時間がかかる新品ハードタイヤに苦戦していた。3ストップ戦略を採用した結果、手持ちのタイヤを使い切ってしまい、他に選択肢がなかった。一方でルクレールはソフトタイヤを履いていた。
リスタートに向けて最終コーナーを立ち上がる際、コースアウト寸前までマシンが乱れる酷いオーバーステアに見舞われたフェルスタッペンは、辛うじてコース上にマシンを留めたものの、このミスがルクレールに絶好のオーバーテイク機会を与えた。
レクレールはこの隙を逃さず、フェルスタッペンと並走する態勢に持ち込んだ。そして遂に表彰台圏内へ浮上。だが、この攻防の最中に両車は接触した。
マックスとの接触「これがレース」
フェルスタッペンは無線で「突っ込んできやがった!あれはペナルティだろ!」と激しく抗議したが、レクレールは今回の接触について何も問題はなかったと主張する。
「特に問題があったとは思ってない。マックスは最終コーナーでミスをして、僕がサイド・バイ・サイドに並んだ。彼は僕をダーティーサイド(非レーシングライン側)に押しやろうとしたけど、それは僕でも同じようにやると思うし、ごく普通のことだよ」
「その後、僕の方がスピードで勝っていたから、(前のクルマの)スリップストリームを少し取りにいこうとしただけ。ラインを少しだけ変えた後に、もう一度動いた。マックスはそれに反応しなかった。それが接触につながったんだ」
「でも結局のところ、それがレースってものだし、僕は特に問題があったとは思っていないよ」
レクレールは最終的に3番手を守り抜き、2戦連続の表彰台を獲得した。一方、フェルスタッペンはその後、ジョージ・ラッセルとの接触により10秒のタイムペナルティを科され、表彰台圏内から一転、10位にまで順位を落とすことになった。
「セーフティカーは僕らにとってプラスだった」とレクレールは総括する。
「基本的に、マックスにはハードタイヤしか残っていなかった。それが彼にとって不利な状況を生んだし、僕らはそこをうまく突けたと思う」
2025年F1第9戦スペインGPでは、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)がポール・トゥ・ウインを飾り、今季5勝目を挙げた。チームメイトのランド・ノリスが2位、シャルル・ルクレール(フェラーリ)は3位でフィニッシュし、バルセロナで自身初の表彰台に上がった。
ジル・ビルヌーブ・サーキットを舞台とする次戦カナダGPは、6月13日のフリー走行1で幕を開ける。