怒りの”破壊行動”が真因か? ストロールの電撃欠場に疑念噴出

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2025年F1第9戦スペインGPの欠場が発表されたアストンマーチンのランス・ストロールを巡り、パドックでは“痛みによる棄権”という公式発表とは異なる見方が広がっており、Q2敗退直後の“怒りの破壊行動”が真因ではないかとの疑念が噴出している。

「手首の痛み」で突然の欠場

カタロニア・サーキットで開催されたスペインGPの予選後、アストンマーチンは突如としてストロールの欠場を発表した。その理由については「手と手首の痛みに対する医学的処置」が必要となったためと説明した。これは2023年の自転車事故による手術の後遺症によるものとされる。

声明では、ストロールは「過去6週間」にわたって痛みに悩まされていたとされる。これが事実であれば、マイアミ、エミリア・ロマーニャ、モナコ、スペインの各グランプリでストロールは、痛みを堪えながらすべてのセッションでステアリングを握っていたことになる。

だが、ストロール本人はこれまでのメディア対応で体調について一切言及しておらず、またスペインGPの予選時の無線でも痛みを訴える発言が一切なかったことから、突然の欠場発表に疑念が向けられた。

ガレージでの“破壊行動”疑惑

BBCやESPNなど複数メディアの報道によれば、ストロールはQ2敗退直後にアストンマーチンのガレージ内で激しく怒りを爆発させ、機材を破壊した上に、チームメンバーに罵声を浴びせたとされる。

チーム広報は「ランスは動揺していた」とのみコメントし、詳細については明らかにしていないため、真相は不明だ。

ストロールがQ2敗退に終わった一方、チームメイトのフェルナンド・アロンソは彼に0.5秒差をつけ、Q3に進出した。

さらにこの騒動の中で、ストロールがQ2敗退後にFIAが義務付ける体重測定を行わず、そのままガレージへ直行していたことが判明した。欠場の発表はその後に行われており、このタイミングの不自然さが、さらなる疑念を呼ぶ一因となった。

スチュワードはストロールを召喚したが、アストンマーチンは「医療上の理由により出席できない」と通達。これを受けて聴聞は延期されたものの、最終的には決勝当日に審議が行われ、スチュワードはドライバー本人からの聞き取りなしに判断を下すことを余儀なくされた。

スチュワードは、計量違反について「失格を含む重大な処分に該当する」と指摘しつつも、すでに欠場が確定していたことから追加処分は科さなかった。一方で、状況の報告が遅れた点について、チームに警告処分を科した。

チーム内部にも混乱? “痛み”の真偽

ESPNの報道によれば、ストロールの欠場が公式に発表されるまで、アストンマーチン内部の多くのメンバーは、彼が“6週間にわたって痛みに苦しんでいた”という事実を知らなかったという。

これは、チーム内での情報共有が不十分だった可能性、あるいは公式発表と実際の事情に齟齬がある可能性を示唆している。

一方で、Q2敗退直後のストロールの行動が欠場の直接的な要因ではないかとの噂について、チーフ・トラックサイド・オフィサーのマイク・クラックは決勝後に「私はピットウォールにいたが、そんな話は聞いていない」と笑いながら否定し、「典型的なパドックのゴシップだ」と一蹴したという。

さらにクラックは、「ドライバーはたとえ痛みがあっても走りたがるものだ。ここ数週間、多少の痛みがあるとは聞いていたが、それがどれほど深刻だったかまでは分からなかった。ただ、この週末を通じて、それが限界に達してしまったのだろう」と述べた。

ストロールは2023年にも骨折を抱えたまま開幕戦に出場し、その闘志を称賛された経緯がある。一方で、感情を制御できず問題行動を起こした前歴もある。

2023年のカタールGPでは、4戦連続で予選Q1敗退を喫した直後、ステアリングを投げ捨ててマシンを降り、ガレージ裏に戻る際にパフォーマンスコーチのヘンリー・ハウを突き飛ばすかのような問題行動を取った

さらに、その後のインタビューでは放送禁止用語を交えた不遜な態度を見せ、一連の行動に対してFIAから警告処分を受けている。

次戦カナダGP、復帰なるか

地元である次戦カナダGP(6月15日開催)へのストロールの出場は「プランA」とされており、復帰を前提とした準備が進められている。だが、手術の具体的内容や時期、さらにはリハビリの計画など、詳細は一切明らかにされていない。

仮にストロールが次戦カナダGPを欠場することになれば、リザーブドライバーのフェリペ・ドルゴヴィッチがF1デビューを果たす可能性が高いと見られている。また、同じくリザーブを務めるストフェル・バンドーンの起用も選択肢の一つとなる。

両名ともに、同じ週末に開催されるル・マン24時間レースへの参戦が予定されているが、ブラジルのメディアによれば、ドルゴヴィッチはF1出走の機会が得られる場合、ル・マン参戦をキャンセルする意向を示しているという。

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