祝賀会でレッドブル・エナジードリンクを掛けられる優勝者マックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、2025年9月7日(日) F1イタリアGP決勝(モンツァ・サーキット)

フェルスタッペンの史上最速勝利、その裏にあった”質問力”と「Full push, No risk」の真意

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F1史上最速レース記録を塗り替えて2025年F1第16戦イタリアGPを制したマックス・フェルスタッペンは、勝因としてマシンとの一体感の飛躍的向上を挙げ、その背景にはローラン・メキーズ代表の”質問力”があると語った。

「これまでのレースでは、まるでクルマに乗せられているような感覚があった。バランスを欠いていて、自分で操っている実感がなかったんだ。今日は違った。ようやくバランスが整い、タイヤも普通に機能してくれた」と改善の手応えを明かした。

その上で「僕らはこれまでセットアップに翻弄され、極端な変更を繰り返してきた。つまり、何をすべきか理解しきれていなかったんだ。でもローランは技術的な経験があって、エンジニアに常識的で適切な質問を投げかけてくれる。それがうまく機能しているんだと思う」と語り、改善の要因はクリスチャン・ホーナーに代わってチーム代表に就任したメキーズにあると説明した。

フェルスタッペンは今回、全長5,793メートルのモンツァ・サーキットを1時間13分24秒325で53周し、F1史上最速となる平均速度250.706km/hを記録。マクラーレン勢を寄せ付けず、メキーズにレッドブルでの初勝利をプレゼントした。

表彰台に立つ優勝者マックス・フェルスタッペン(レッドブル)と2位ランド・ノリス(マクラーレン)および3位オスカー・ピアストリ(マクラーレン)を称えるティフォシ、2025年9月7日(日) F1イタリアGP決勝(モンツァ・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

表彰台に立つ優勝者マックス・フェルスタッペン(レッドブル)と2位ランド・ノリス(マクラーレン)および3位オスカー・ピアストリ(マクラーレン)を称えるティフォシ、2025年9月7日(日) F1イタリアGP決勝(モンツァ・サーキット)

モンツァでの圧勝劇は絶対王者復活の兆しか?

ザントフォールトで兆しを見せた改善は、モンツァでさらに一歩進んだ。今季はマクラーレンが両選手権で独走状態を築いているが、この日のフェルスタッペンはレッドブルが支配的な競争力を誇示した2023年を彷彿とさせる強さを発揮。早くも22周目には後続ランド・ノリスに対して6.1秒差を築き、手が付けられない状態に持ち込んだ。

メキーズの手腕が現場での取り組みに反映され、そこに「マックス・マジック」が加わったことで、レッドブルはモンツァで圧倒的なパフォーマンスを披露した。この一戦は復活の狼煙と捉えることもできるだろう。

ただしフェルスタッペンは慎重だ。「まだサーキット依存なところはある。ここはローダウンフォースだからね。僕らのクルマはローからミディアムダウンフォースだと少し競争力が上がる傾向にある。だから急にどこでも戦えるってわけじゃない」と分析した。

それでも「どうすればもっとクルマの競争力を高められるか理解が深まってきたのはポジティブだ。サーキットによって得意不得意はあるだろうけど、それを今後のレースにもつなげていきたい。もちろんトライするよ。一歩ずつ、レースごとにやっていく」と前向きに語った。

最終的にはマクラーレン勢に19.207秒という大差をつけてトップチェッカーを受けたが、このギャップについては、マクラーレンがセーフティーカーを見越してステイアウトを選んだため、実力以上に広がったと冷静に分析した。

モンツァ・サーキットのターン1でランド・ノリス(マクラーレン)と首位を争うマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、2025年9月7日(日) F1イタリアGP決勝Courtesy Of Red Bull Content Pool

モンツァ・サーキットのターン1でランド・ノリス(マクラーレン)と首位を争うマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、2025年9月7日(日) F1イタリアGP決勝

「フルプッシュ、ノーリスク」の真意

さらに、終盤に担当レースエンジニアのジャンピエロ・ランビアーゼ(GP)から「無理をせず確実に完走しろ」と指示された際に無線で放った「Full push, no risk(フルプッシュ、ノーリスク)」の真意についても言及した。

当時のフェルスタッペンは、後続に19秒近い差を築いていたため、このフレーズはファンとパドックを困惑させた。

「正直に言うと、ちょっとした冗談だったんだ。僕らがシムレースで組んでいるチーム・レッドラインのエンジニアが、すごく心配性でさ。僕のレース中に『ノーリスク、フルプッシュ』ってよく言うんだ。だから僕もそう言っただけなんだよ」とフェルスタッペンは笑顔を見せた。

「実際、すべてコントロールできていたし、クルマの感触も良かったし、タイヤの状態も問題なかった。GPは当然、僕にリスクを負わせたくないからそう言うんだけどね。実際、僕もそういう走りをしたよ」

優勝トロフィーを手に表彰台に立つマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、2025年9月7日(日) F1イタリアGP決勝(モンツァ・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

優勝トロフィーを手に表彰台に立つマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、2025年9月7日(日) F1イタリアGP決勝(モンツァ・サーキット)


2025年F1第16戦イタリアGPでは、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)がキャリア通算66勝目をポール・トゥ・ウインで飾った。2位はランド・ノリス、3位はオスカー・ピアストリと、マクラーレンがダブル表彰台に上がった。

バクー市街地コースを舞台とする次戦アゼルバイジャンGPは、9月19日のフリー走行1で幕を開け、9月21日に決勝レースが行われる。

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