F1オーストリアGPを制してチームメンバーと抱き合って歓喜するレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン
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ホンダF1、復帰後初勝利によって2021年以降のF1残留に一歩前進か?

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マクラーレンとのジョイント体制で以て2015年にF1へと復帰したホンダは、目標とするチャンピオンシップ制覇に向けて今季より強豪レッドブル・レーシングと提携した。だが、その契約は現行レギュレーションが満了を迎える2020年末までとなっており、2021年以降もF1に留まるかどうかは不透明な状況となっている。

本業へのメリットなくてして参戦継続の意義はない。新規約においても、熱及び運動エネルギーを回生する現行のハイブリッドエンジンが継続される見通しだが、自動車産業界は電気自動車に代表されるゼロエミッション車への移行を加速させており、本田技研工業の役員会並びに株主がF1への参戦継続をどう評価するかは未知数。現状では、1年半後に再び撤退する可能性は捨てきれない。

だが、F1オーストリアGPでもたらされたホンダにとっての13年ぶり勝利が、残留を後押しする可能性がある。復帰後初優勝の舞台となったレッドブル・リンクには、「困難な道を選びNo.1を目指すのがホンダのDNA」と語る本田技研工業の倉石誠司副社長らトップマネジメントが来訪。詰めかけた観衆はサーキットの至る所で勝利に歓喜し、執拗に繰り返されるホンダコールがこだました。

劇的勝利から2週間後の第10戦イギリスGP。FIA主催の金曜公式記者会見に出席したホンダF1の田辺豊治テクニカル・ディレクターは、今回の勝利が経営陣の意思決定に影響を及ぼすかとの質問に対して次のように答えた。

「私はホンダF1のテクニカルディレクターという立場にあり、契約の問題にはあまり関与していません。ですが、この度の勝利を受けて、ホンダ内部からは非常に良い反応を感じています」

ホンダF1の現場統括責任者を務める田辺豊治テクニカル・ディレクター、F1イギリスGPのFIAプレスカンファレンスにて
© Getty Images / Red Bull Content Pool、シルバーストンでの会見に出席した田辺豊治テクニカル・ディレクター

「今回の勝利は、HRD-Sakura(栃木県の開発拠点)の全てのメンバーと、このプロジェクトに携わったいる全ての人たちのおかげでもたらされました。誰もがこの結果に非常に満足し、そして喜んでくれています」

「その一方で私は、誰もがこれまで以上に高いモチベーションに溢れていると感じています。我々はパフォーマンス改善のために今後も必死に作業に取り組み続ける覚悟です」

F1復帰後5年目にして初めて掴んだ栄冠は、あまりにも大きな一歩であるものの、F1プロジェクト継続の説得材料に足るものかどうかは分からない。田辺TDは、表彰台争いの常連になるためには、まだ時間がかかると説明する。

「我々はオーストリアで素晴らしいレースをしましたが、トップランナーと我々との間には依然として差があります。更なるパフォーマンスを追求するため、我々はレッドブル・レーシングと連携し、開発作業を前に進めています」

レッドブル・レーシングのクリスチャン・ホーナー代表は、今回の勝利はただの1勝という以上に大きな意味を持つものだと考えている。

「今回のレースには、あまり現場に赴く事ないディートリッヒ・マテシッツ(レッドブル総帥)のほか、ホンダの上級役員も何名かが訪れていた。それだけに、マックスの逆転勝利は驚異的だったとしか言えない」

「ホンダにとってはV6ハイブリッド時代の初勝利だった。復帰直後は困難なシーズンが続いたものの、あらゆる懸命な努力と献身的な姿勢が実を結んだと言える。チームを代表して田辺さんがトロフィーを受け取ったシーンは本当に感動的だった。我々にとってもホンダにとっても最高の一日だった」

次世代の新しいレギュレーションは、2019年10月末に最終決定を迎える。新たな時代の覇者となるためには、ルール確定と同時に開発をスタートようでは遅すぎる。決断までに残された時間は多くない。

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