F1オーストリアGPでトップチェッカーを受けるレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン
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レッドブル・ホンダ、王座奪還に向け着々「2020年の目標は開幕戦からのチャンピオンシップ争い」

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レッドブル・レーシングは、2010年から2013年までの4年連続でセバスチャン・ベッテルと共にダブルタイトルを獲得。「強豪」に数えられるトップチームへと上り詰めたが、2014年に始まったV6ハイブリッド時代ではエンジンのパワー不足が大きな足かせとなり、ライバルに先行して長い年月をかけて開発を進めていたメルセデスが優勢を築いている。

そこでレッドブルは、ルノーとの関係を解消して今季よりホンダとパワーユニット契約を締結。新たな旅路のスタートラインに立った。今季型マシンRB15は、ホンダエンジンの搭載を前提としてゼロから設計されたシャシーではないものの、結成9戦目のオーストリアGPで見事初優勝を上げ順調に推移。クリスチャン・ホーナー代表は、チームがタイトル戦に復帰するための準備が整っていると確信している。

「再び世界チャンピオンを獲得できない理由など存在しない」とクリスチャン・ホーナー。「全ての要素が整ってきたように感じている。我々には世界最高のドライバーと素晴らしいデザインチーム、そして我々のアキレス腱であったトップマニュファクチャラーとのギャップを埋め始めている新しいエンジンパートナーがいる」

「2019年は進化のシーズンになるだろうが、我々の目標は2020年シーズンの開幕戦からチャンピオンシップ争いをする事だ」

要のフェルスタッペン、移籍?それとも残留

レッドブル・ホンダが来年タイトルを獲得するための必須条件の一つは、マックス・フェルスタッペンの残留だ。21歳のオランダ人ドライバーは2020年末までの契約を結んでいるものの、契約書にはその年限りで契約を解除できるパフォーマンス条項があると噂されている。

その条項の一つは、前半戦で少なくとも1回の勝利を上げられない場合、他チームとの移籍交渉権が与えられるというものだが、フェルスタッペンはチームの母国GPでメルセデスの今季全戦連勝記録に終止符を打ち、誕生から9戦目を迎えたレッドブル・ホンダに初勝利を捧げた。

2019年F1オーストリアGPの表彰台に上がりシャンパンファイトに興じるレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンとホンダF1の現場統括責任者を務める田辺豊治テクニカル・ディレクター
© Getty Images / Red Bull Content Pool、オーストリアGPの表彰台に上がりシャンパンファイトに興じるフェルスタッペンとホンダF1の田辺豊治テクニカル・ディレクター

この勝利によって残留の可能性が高まったかに思われたが、ホーナー代表はイギリスGPを前にオーストリアでの勝利は「何も変化をもたらさない」と述べ、その条項の存在を暗に否定した。

ホーナー代表はある種のパフォーマンス条項が存在することを事実上認めたが、それはトップチームでの一般的な習慣だと主張。その上で、依然としてフェルスタッペンが今季限りでチームを離れる可能性がある事を示唆しつつも「契約でのみドライバーを縛るのは適切ではない」として残留に自信を示した。

「トップドライバーであれば、誰もが契約にパフォーマンス条項を設けているだろう。おそらくフェラーリとメルセデスのドライバー達も同じだと思う」とホーナー代表。「我々に関して言えば、オーストリアでの勝利によって何かが変わったわけではない」

「契約書の存在だけでドライバーをつなぎ留めているような関係は正しいものとは言えない。マックスは、我々が進めているプロジェクトやチームが持つ技術、そしてホンダの進歩と発展を心から信じており、一枚の紙切れの存在とは無関係に、その可能性を大いに買ってくれている」

史上最年少王者獲得の猶予は後2年

高い評価とは裏腹に、フェルスタッペンはF1での5シーズン目にして未だ6勝に留まっており、それはセバスチャン・ベッテルやルイス・ハミルトンの同時期の成績と比べると明らかに見劣りしている。フェルスタッペンはF1史上最年少チャンピオン獲得を目標に掲げているが今季達成は絶望的であり、事実上、残されたチャンスは来年2020年と2021年の2回のみと考えられる。

現在の最年少チャンピオン記録は、2010年当時にレッドブルに所属していたセバスチャン・ベッテルの23歳134日。フェルスタッペンは今年の9月30日に22歳の誕生日を迎える。

「マックスは我々にとって大きな財産だ。我々はチャンピオンシップに挑戦できるだけのマシンを彼に用意しなければならない」とホーナー代表。「2019年シーズンは新たなエンジンパートナーとタッグを組んだ年であり移行期間だが、それでも現時点でのパフォーマンスは、チーム内部の予測値を上回っている」

「過去9戦で優勝1回を含めて何度か表彰台に上がったし、本来であればモナコGPでは2位を獲得出来ていたはずだった。マックスはそのドライビングによって期待以上の結果をもたらしてくれた。彼は今や成熟の粋に達しており、プレッシャーへの対処は非常に印象的だ」

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